三島由紀夫、剥製に!松竹「黒蜥蜴」丸山明宏/木村功・深作欣二監督。そして併映作品は… | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目に入りましたが現在の俺にとっては19時頃の感覚…この時期に快適に過ごせる事は家計の面でも大助かりですし、一年を通してこの様であればどんなにいいだろうかとも考えてしまいます。

 

 

 

さて、本日紹介する作品は数多くの映像作品及び舞台で幾度も制作されている作品かつ、丸山明宏(現・美輪明宏)一番の当たり役・代表作と言えるものです。劇場公開作品では京マチ子、テレビドラマ作品では小川真由美等々も演じてはいますし(舞台版及び平成以降に制作されたテレビドラマ版は未見の為解りません)其方も名演ですが「男性だからこそ醸し出せる女性以上の女らしさ・情念を見せ付けた」とでも言えばいいのでしょうか、やはり丸山さんには敵わない!俺はVHS時代にレンタルで鑑賞したきりで場面場面の断片的な記憶だけは残っていましたが大筋は…しかし、今月の衛星劇場「没後50年特別企画 三島由紀夫特集」での放映が決まり、昨日録画しておいた物を夜勤明けに鑑賞しましたが、やはり面白い!

 

 

「黒蜥蜴」(昭和43年版)昭和43年8月14日公開・江戸川乱歩原作・三島由紀夫原作脚色・深作欣二/成沢昌茂の共同脚本(成澤昌茂表記及び成沢先生の単独執筆と掲載されている媒体も存在します)・深作欣二監督・松竹制作。

 

 

先述の通りVHS化はされていますが未DVD化で有料動画配信も行われていません。尚、衛星劇場に於いて本日以降、11/24(火)10:30・11/30(月)09:55・12/12(土)20:45・12/22(火)10:30の四回放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 


※衛星劇場の令和2年11月分の作品案内・放映日時案内は此方から/令和2年12月分の作品案内・放映日時案内は此方から

 

 

当作品の併映は、サクさんと同じく当時東映で辣腕を振るっていた佐藤肇監督が手掛け、主演の高英男の額はどう見ても女性のアレにしか見えなかった傑作「吸血鬼ゴケミドロ」!

 

 

 

 

 

ほのぼのとした人情劇や爽やかな青春映画が主体であった当時の松竹上映館も、この時ばかりは東映ファンで埋め尽くされたのでしょうかねぇ…しかし松竹は時折自社制作作品・外部プロダクション制作作品双方に於いて「自社のカラーでは到底考え付かない様な面白い作品」​​​​​​​を提供する事が在り、侮れない存在です。

 

 

余談ですが、丸山さんと高さんが双方の作品の撮影中に楽屋で逢った時に「何、女演ってんだい!」「な~に、そっちこそ、オバケ演っちゃって~!」と言い合ったそうですよ(ウィキペディア「高英男」より)。でもお二方共に芸術的な感性の唄声を聴かせながらも大衆娯楽としての映像作品の神髄をよく理解されておられますし、丸山さんはバラエティ番組に多数出演、高さんは一時期「笑点」演芸コーナーの準レギュラー格でしたから「観客・視聴者と同一の目線で活躍されている事が、本業であるシャンソン音楽普及がすんなりと大衆に受け入れられた一番の理由である」とも思います。

 

 

「黒蜥蜴」と称する人物から「一人娘である松岡きっこを誘拐する」と云う脅迫文を送り付けられた宝石商の宇佐美淳也は名探偵である木村功扮する明智小五郎に松岡さんの身辺警護と事件解決を依頼します。そして木村さんの発案により誘拐犯を誘き出す罠を仕掛け大阪へ…そこで三人に近付いて来たのは有閑夫人と称する丸山さん及び好青年として紹介される川津祐介。しかしこの丸山さんこそが黒蜥蜴であり川津さんは忠誠的な手下!そして丸山さんは松岡さんをまんまと誘拐し高笑いをしたもののそれはほんの一瞬で、木村さんの手下がしっかりと追跡を行っていた為に事無きを得ます。

 

 

そして数日後、事件の衝撃から部屋を出ようとしない松岡さんに「第二の手」が伸び…元・警察官である警備主任の西村晃や佐藤京一が率いる武道の猛者達の目をすり抜け、再び誘拐されるのです。何故なら「娘の機嫌直しに…」と宇佐美さんが特注した西陣織の表皮を纏ったソファーを運搬納入した家具屋店員・家政婦の小林トシ子・そして猛者を率いていた筈の佐藤さんが丸山さんの忠誠的な手下であったから!その事に気付いた西村さんは惨殺され、自らの不在時に事が起きただけに留まらず新たな要求を宇佐美さんに突き付けて来た黒蜥蜴の行為も絡み、木村さんは崖っぷちに立たされましたが…

 

 

 

 

 

 

物語の面白さは折り紙付きですから、後は時代背景等々に合わせてどれだけ肉付けをして行くかなのでしょうが…ウィキペディア「黒蜥蜴」によれば「三島先生は当作品のサクさん・丸山さんコンビで独自の映画作品を作ろうと意欲を燃やし、幻想的な物語の原案を書き、それを元に松竹が脚本を作ったものの「膨らませ方が自分のイメージと違う」と申し出、映画化は立ち消えに…三島先生の原案は、麻薬の取引の話等々が在り時代を先取りし過ぎて実現が難しかったのではないかと見られている」とも書かれていました。立ち消えになった後の脚本で制作されたのが恐らく当作品なのでしょうが(サクさん・成沢先生の執筆と云う事はその様に判断が可能ですので)其方の物語も是非観てみたかったなぁ!

 

 

その三島先生ですが「黒蜥蜴の私設美術館に飾られている人間の剥製」として出演!しかも「死に至った経緯の場面」では「匕首を振り回し決闘し刺殺される姿!そして剥製の状態で丸山先生に接吻される場面迄披露をされた、原作戯曲担当者の心からの観客サービス」と感じる素晴らしい姿勢!しかもきちんと役者になっているのですから(台詞を発していないのも三島先生にとっては良かったのかもしれませんが)大したものです!

 

 

しかし丸山さんと三島先生の「野郎同士の接吻場面」は、俺の記憶に在るのは当作品と東映京都制作「暴動島根刑務所」での囚人同士(役者名は不明)と東映京都制作「日本の仁義」での千葉真一・林隆三の三作品のみ…俺もそうですが同性愛者以外であれば普通に考えたら「身の毛もよだつ行為で絶対にしたくは無い物」それでも「物語が面白くなり観客の皆様が喜んで下さるなら四の五の言わずに遣る!」と云う姿勢を映像に焼き付けたこれ等の方々には頭が下がりますし感謝あるのみです。

 

 

 

 

 

 

そして「明智小五郎」と云えば多くの役者が演じて来たとは云え、俺の中で真っ先に浮かんで来るのは松竹制作のテレビドラマ版で主演を務めた天知茂…しかし木村さんが演じた「抑揚・喜怒哀楽等々を表面に出さない冷静沈着な雰囲気の明智小五郎」もこれはこれで「らしさ」が存分に出ており「丸山さんと犯人像を語り合う前半部・お互いに挑戦状を叩き付ける中間部・一人の人間として心の奥底を吐き出す結末」の三場面に於いてはその雰囲気が最大限発揮されていたとも感じます。更に言うなら、当作品の制作姿勢や完成度が後に二時間テレビドラマの代表格の一つである松竹制作「江戸川乱歩の美女シリーズ」として昇華し、加えて松竹以外からの制作陣が加わった事で面白さが拡幅され、現在に於いてもソフト化・有料動画配信化・定期的な有料波放映実施等々に繋がる程の人気作品になったのではないかと思います。

 

 

あくまでも俺の嗜好ですが、名探偵モノならば金田一京助より明智小五郎の方がずっと好き!物語を相当に拡幅させても破綻し難い基本線の強固さと、娯楽性豊かに仕上げ易い素材である事がその理由です。