会津のやくざ兄弟と薩摩の学生の軌跡!東映東京「さらば愛しのやくざ」陣内孝則/柳葉敏郎/相楽晴子 | 東映バカの部屋

東映バカの部屋

東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

昨日は休日出勤の上3時間の残業で帰宅したのは夜中の三時…明日13時の勤務開始時迄の休みですが疲労回復程度で終わります。しかも「朝晩は霜が降りる程冷え込み、日中は比較的穏やかな陽気」と云う落差は尚更身体に堪えます。

 

 

 

さて、定期的に東映chでは「平成期のやくざ映画作品」を集中放映、又は単発放映を行う事が在るのです。しかし「昭和期のやくざ映画等々」を好んで観ていた為、主演が菅原文太や松方弘樹・小林旭、そして俺の大好きな歌手かつ「やくざ映画好きで或る組織との関係をすんなりと認め、即座に事態を鎮静化させた事が有る」自称「不良フォークシンガー」(自ら言い放ったのですから本当に大爆笑です)松山千春等々が出演をしていれば食指が直ぐ動いた上に繰り返し鑑賞していましたが「極道の妻(おんな)たちシリーズ」を含めて「一回きりの鑑賞」の方が圧倒的に多い事に気付かされ、いい機会であったと共に、今ならば見方が変わるのではとじっくりと観ました。

 

 

結果、長渕剛主演の「オルゴール」だけは個人的な評価は変わらず「0点以下の駄作」(助演陣及び脇役陣の活躍は評価が出来ますし、局部的な場面では良い所が有るのは認めますが、それ等が長渕さんの「俺が俺が!芝居」により全て食われ潰されている上に「他の東映やくざ映画群等々には存在していない、感動の押し売りとしか言えない後半以降の流れと結末」はどうしても受け入れ難いです。「長渕さんの意向か?制作側の意向か?」は判りませんし「他社との提携作品かつ、テレビドラマ「とんぼ」の延長線上の作品であった関係上已むを得ぬ事」であったのかもしれませんが…同時期の「東映やくざ映画」に於ける歌手の芝居でもジョニー大倉・世良公則・桑名正博・哀川翔、後述する陣内孝則・柳葉敏郎等々と違うのはその点!特に「極道戦争・武闘派」の松山千春は初見時こそ「俺が俺が!芝居」と感じられたものの、繰り返して観て行く内に「自身の芝居をきちんと成立させると同時に均衡をきちんと守り、周囲の芝居では一切出しゃばらず引き立てる側に徹している姿勢」がきちんと伝わって来ました)その他の作品に関しては全て評価が変わりました。

 

 

特に「やくざ役の芝居を観ていると外側から入っている様に感じる」(しかし同時に「昭和40年代と違い、やくざとの交流が不可能で本物の要素を得られない現実を読者に伝える事」で擁護はされていました)と梅宮辰夫に或る書籍で言われた陣内孝則ですが「サングラスを常用する=目を見せない事で少しでも凄味を醸し出そうと努力をしていた姿勢」「本物のやくざの世界を知る事が諸先輩達とは違い出来なかった分「気のいい兄貴分=人間愛に溢れる心優しきボンクラ野郎」に転じ新境地を開いた事」「個性を発しながらも、虚実の世界で諸先輩達が見せたやくざ映画/仁侠映画の本質を可能な限り踏襲しようとした意志」等々の「真摯な姿勢」がひしひしと伝わって来たのは収穫。

 

 

そこで本日は此方の作品を…

 

 

 

「さらば愛しのやくざ」平成2年11月23日公開・安楽隆雄原作・野沢尚脚本・和泉聖治監督・東映東京制作。

 

 

VHS/DVD化作品ですが、有料動画配信は行われていません。

 

 

 

 

 

昭和55年の「ジョン・レノン射殺事件」の当日「薩摩生まれの早稲田大学の学生」柳葉敏郎と(序盤に登場する「開業医だが藪医者である為に入院患者が居らず、病室を格安で賃貸しアパート化させている」田中邦衛の話によると)「会津生まれ。戊辰戦争の際に結成された白虎隊士の唯一の生き残りの人物の末裔で、異母兄弟の相楽晴子と共にぼったくりバーを開いている元・ボクサーでやくざ」陣内さんが出逢うのですが(余談…晴子さんは出身が福島・郡山ですから「これ迄演じた役柄でも特に愛着深い一つ」かもしれません、あくまでも憶測ですが)陣内さん兄弟の心情や現状を知り尽くしている邦衛さんは「戊辰戦争の怨み晴らし」とばかりに、薩摩生まれの柳葉さんの怪我の治療の際は乱暴そのもの!

 

 

しかも「ぼったくりに一歩も引かぬ姿勢を見せた柳葉さん」を男として認めた陣内さんは(晴子さんに言わせると「陣内さんが生涯で初めて、しかも唯一認めた男」との事)「大学の講義に入り込んで背中の我慢(刺青)を披露し「刑法の矛盾点」を指摘する!」「ぼったくりをせざるを得なかった事情から酒席に誘うに留まらず、喧嘩の仕方を実地指導!」「訪問の際に来客が有った為に、詫びとして妹の晴子さんの身体を提供!」等々、奇妙かつ雑ではあるものの「心を開き切った三人の清々しい人間関係」が構築されましたが「陣内さんのやくざの素質を認めた時から溺愛されながらも、やくざの世界の現実に嫌気が差し距離を置いていた親分」室田日出男/内藤やす子夫妻が、手形を起因とした騒動に巻き込まれた際には「ここぞ!」とばかりに敵対組織の幹部・内藤剛志を射殺し服役(この際、柳葉さんは「陣内さんの危機」を或る手段で支えました)。実は陣内さんは「日出さんに対する恩義」の他に「晴子さんを15歳の時に強姦・懐妊させた怨み」を込めていたのです。

 

 

そして10年後、陣内さんの出所に合わせて赴任先のオーストラリアから一時帰国をした柳葉さんは晴子さんに結婚を申し入れ、陣内さんもそれを歓迎したものの、晴子さんの一人息子・稲垣吾郎の仕草に只ならぬ物を察知した陣内さんが探りを入れてみると「稲垣さんは陣内さんと共に日出さんを支えていた大竹まこと(下戸のやくざで小悪党そのものですが、絶品です!)の事務所に出入りしていた上に、ポン中毒(覚醒剤中毒)である事」を突き止め…

 

 

 

 

 

 

陣内さん・柳葉さんは元々は歌手である為に「お客様が何を望んでいるのか?」を掴む力量はかなり高いでしょうし(実はこれ迄、柳葉さんに関しては余り高く評価をしていませんでしたが、この作品で見方が変わりました)「歌手との経験値と役者としての経験値」に関しては世良公則と同様「一線を引いて別物と捉えていたのでは?」と感じる程「一兵卒から叩き上げている途中の一生懸命な姿勢」が作中から伝わって来ます。

 

 

晴子さんは「前半戦・セミロングヘア/後半戦・ショートカット」と「二つのヘアスタイル」を見せていますし「アイドル歌手から本格女優への転機」を「女性・母性双方の本能を等身大で演じた当作品」と、同時期にレギュラー出演をしていたテレビドラマ「大岡越前・第11部」で得たと言ってもいいでしょう。「アイドル歌手出身の女優」も「ファン心理をより的確に掴み応える感性が鍛えられている=これを観客・視聴者心理を読む力量に転用している為」なのか、いい女優になった方々は数知れず!現在ホノルルに在住し旅行コーディネーターとして活躍をしている為に女優休業中(引退宣言は出していません)ですが「50代の晴子さんの芝居」も是非観たいもの!

 

 

このお三方が本当に伸び伸びと、感じたままに演じ切っている点が当作品の最大の魅力ですし「この類の基本線を保ちながらもこれ程若々しく清々しい群像劇に振り切ってきちんと物語が成立したやくざ映画」は東映でも唯一無二かもしれません。

 

 

それでいて「片桐竜次演じる刑事に家宅捜索令状を突き付けられた内藤さんが「週刊アサヒ芸能を呼べ!」と言い放つ!」「陣内さんに「漢字の読めなかったお前が中国語を駆使するとは…」と云う意味合いの言葉を浴びせられた内藤さんが「NHKの中国語講座でな!」と言い返す!」等々「従来の東映作品の面白さを踏襲した遣り取り・場面描写」も幾つか見受けられます。

 

 

「ジョン・レノンは五発の弾丸を浴びた」これも物語の中での重要な鍵となっています。