内容より面白いのは撮影秘話!東映東京/サンミュージック「野菊の墓」松田聖子。澤井信一郎監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

本日は前職の最も世話になり、共に仕事を変えてからも人間関係が続いている先輩の家財整理の手伝いの為、過去の記事を複製の上自動更新としています。そして「東映作品」でも「当方のブログらしからぬ作品」を…東映東京制作「不良番長シリーズ」を手掛けた吉田達統括が企画を行い、東映東京制作「トラック野郎シリーズ」の助監督/脚本執筆を担当された澤井信一郎監督の初演出作品です。

 

 

以前当方の記事で、南野陽子主演の東映東京制作作品を紹介した際にも書きましたが「旬のアイドルを主演に迎えた作品でも、アウトロー路線や妖艶路線等々を手掛けた方々が携わる方だからこそ及第点以上の作品が出来る=花を丁寧に摘む様な演出・撮影等々が出来るのは「助平だからこそ、自分の中のお姫様は汚れさせたくはない」と云う「不良番長シリーズ」の神坂弘こと梅宮辰夫「トラック野郎シリーズ」の星桃次郎こと菅原文太の心情で臨んでいたのでは?」と、再度思った程。

 

 

尚、当記事は「ウィキペディア」及び「俺の手元に在る複数の書籍」より多くを引用し書きます。

 

 

 

「野菊の墓」昭和56年8月8日公開・伊藤左千夫原作・宮内婦貴子脚本・澤井信一郎監督・東映東京/サンミュージックプロダクションの共同制作。

 

 

VHS/DVD化作品で、GooglePlay/DMM.com/TSUTAYA TV/ビデオマーケット/Amazonビデオ/YouTubeムービー内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

余談ですが、俺の様な悪童は当時「野糞の墓」「民さん、貴女は野糞の様に綺麗な人だ」と揶揄したものです。後に「吉田統括企画・澤井監督作品」と知り「不良番長・トラック野郎の「東映二大大馬鹿シリーズ作品」に携わった方の作品なら当時の東映ファンも同様の事を言っていたかもしれないし、もしそうなっていたとしても理解出来るし東映作品らしくて似合うなぁ!」とも感じます。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

●東映公式・YouTube予告篇動画

 

 

 

 

 

 

多くの方々がご存じの通り「野菊の墓」を原作とした映像作品は昭和30年の木下恵介監督・松竹制作「野菊の如き君なりき」を皮切りに多くの映像制作会社が競う様に、劇場公開作品・テレビドラマ作品双方の合計で十作品以上制作されています。

 

 

民子役も劇場公開版の安田道代(現・大楠道代)テレビドラマ版の山口百恵・竹井みどり等々多彩な顔触れ…東映に於いてはこの「松田聖子版」が初映像化作品ではありません。当作制作・公開から遡る事大凡8年前に当たる昭和48年にANN系列放映のオムニバステレビドラマ「女・その愛のシリーズ」第六話「野菊の墓」が岡崎友紀主演で一話完結形式(約45分)で制作されており、7.8年前に東映chで放映されています。

 

 

俺が観た「野菊の墓」の映像化作品は「松田聖子版」「岡崎友紀版」のみ。この二作品を比較…いや「岡崎友紀版はかなり端折っているものの要所のみを上手く繋げている上に、子役経験豊富で弱冠二十歳前後の時点で「アドリブの名手」と言われていた岡崎さんの実力を、昭和56年当時の聖子さんの実力と比較するのは無意味」と云うもの。「松田聖子版は初主演作品として考えれば感情表現等々はかなり健闘しており、実力不足を補って余りある脚本の出来の良さと長年助監督として鍛錬を重ねて来た澤井監督の経験値が生きている。加えて周囲を固める名優陣の助力により、単なるアイドル主演作品として片付けられない出来となっている」。

 

 

樹木希林は「澤井監督のたっての希望で出演を要請」丹波哲郎は「聖子さんの初主演作品だから」ではなく「親しい澤井監督の初演出映画だから」「ご祝儀代わりのノーギャラ出演を申し出た」との事…他にも湯原昌幸・愛川欽也・相馬剛三・団巌・高月忠・奈辺悟・沢田浩二・沢竜二等々「トラック野郎シリーズに複数回出演された俳優陣が顔を揃えた」のももしかしたら「澤井監督の初演出を祝って」又は「人柄を慕って」出演を快諾したか申し出たのかなぁとも感じます。更に島田正吾・村井国夫・常田富士夫・加藤治子・赤座美代子・叶和貴子等々も出演。

 

 

 

そして、当作品の同時上映作品は「トラック野郎シリーズ」の盟友である鈴木則文監督・真田広之主演・東映京都制作「吼えろ鉄拳」。

 

 

 

 

 

 

「吼えろ鉄拳」は昭和55年に制作・公開された「ソクブン監督・真田さん主演」の「忍者武芸帖・百地三太夫」が興行不振であった為に、当時の岡田茂・東映代表取締役社長(後に東映名誉会長)が「真田さんでもう一度遣ってくれないか?失敗は俺にも責任が在るから。真田さんのは絶対に客が来るから」とソクブン監督に要請。ソクブン監督は真田さんの師匠格の千葉真一が「アクション映画を作りたい」と云う執念を抱いていた事を知っていた上に「前作品で真田さんを終わらせたくなない」との愛情と責任感が在った為に快諾し、トントン拍子で企画が通っています。

 

 

何せ東映は昭和46年に岡田名誉会長が社長に就任後は、昭和61年迄重役を一人も置かぬワンマン体制で、企画会議でも「岡田名誉会長好みの企画でなければ通らない時期」ですから「野菊の墓」は制作決定迄紆余曲折を経た模様!

 

 

吉田統括は東陽一監督が「もう頬づえはつかない」を低予算でヒットさせた手腕に感心し「女性が男性を映画に連れて行く上に、主導権は女性である事」を察知し「ヤクザ映画は男性が女性を連れて来る」が身上であった岡田名誉会長に「今は女性が男性を映画に連れて来る」と発言をした所「そんな事は解っている!」と、会議の席上で大凡30分間の説教を食らう羽目に!

 

 

しかも後日「統括はアイディア勝負だから、何時でも社長室に来い!」と普段から言っていた岡田名誉会長に、吉田統括は好きだった木下監督版「野菊の如き君なりき」のリメイク版を提案し「女性が泣ける「野菊の墓」を制作したい!」と言ったら「松竹に持って行け!」と却下され、検討すらされず(岡田名誉会長の「松竹に持って行け!」は他作品の企画会議でも発言した事が在る模様ですから「常套句」だったのかもしれません)。

 

 

しかし何が起こるか解らない!企画承諾の大凡三週間前に吉田統括はサンミュージックの重役と会うと「既に東宝・松竹から企画が持ち込まれている」と言われ目の前が真っ暗になったものの「で、東映さんではどの様な企画を?」との質問に対し「野菊の墓」と答えたらサンミュージック側の企画案第一位が野菊の墓」「きちんとした文芸作品に聖子さんを主演させると云う基本線」が一致!

 

 

そして「意見が一致し聖子さんを抑えても、聖子さんの価値すら解ってくれず企画を頑として通さない岡田名誉会長の説得」には難儀したものの(岡田名誉会長は「裸になれる女優や淫靡な女優・悪党や馬鹿になれる女優は人並み以上に知っていても、清純な女性タレントは全く無知だったのではないかと思わせますもんねぇ…ご贔屓は由美かおるで「トラック野郎・天下御免」制作時にゴリ押ししたとも言われています)当時の東映営業部長に助け舟を出して貰い了承!

 

 

企画会議終了間際に岡田名誉会長が「ドス(=匕首)もチャカ(=拳銃)も出ない作品を俺も了承する時代になったか…」と発言をしたら、場内大爆笑!

 

 

 

余談ですが、東映作品は「15時以降の観客数が多い傾向」が在った模様で、館主達が「若年層向け作品」「東映まんが祭り」等々を「午前中一回限りの上映、又は一般映画への早期切り替えを要求した背景」はこれが最大の理由の様に思います。「野菊の墓」も興行収入は東宝「連合艦隊」松竹「男はつらいよ・浪花の恋の寅次郎」に比べれば少ないものの約八億円で損益分岐点をそれなりに超えた模様ですが「15時以降の集客が極端に悪かった」と…