石井輝男が東映京都に殴り込み時代劇初演出!東映京都「御金蔵破り」大川橋蔵/朝丘雪路/片岡千恵蔵 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

色々と遣っていたら昨晩は夕食が0時・入浴が1時・飲酒をしながら録画しておいたNHK・BS1のドキュメント「ヒトラーのスーパーカー」や映画の鑑賞をしていたら就寝したのは4時頃。しかし朝から室内温度が28度を超える暑さで目が覚めました。今、記事を打ち込みながら東映ch「非情のライセンス・第一シリーズ」を流し観をしてますが、以前録画して何度か観ている筈なのに放映されていると音声だけでも聞きたくなる程好き!因みに今は「霊柩車に拳銃を突き付けて犯人を説得する天知茂」が映し出されていますが「霊柩車が登場すれば何かが起きるのが東映!」の伝統はテレビドラマでも踏襲!

 

 

 

さて本日は「石井輝男監督初の東映京都制作作品・東映時代劇作品」ですが、石井先生ご本人によると「東映東京撮影所から東映京都撮影所に移動した岡田茂撮影所長(後の名誉会長)から声が掛かり行った。初の時代劇ではあったが知らなかった分「鬘を付けた現代劇」と考え気楽に遣った」のだそう(しかし丹波哲郎・杉浦直樹・待田京介・安部徹等々「東映東京作品の石井組常連俳優」を引き連れていった様子は「少なからぬ不安を抱いていた事」も裏付けている様な)。この「肩の力を抜きながらも徹底させる所は徹底させる姿勢」は時代劇でも変わらず!そして石井センセイは「歌舞伎から来た様な物が時代劇の元であろうが、江戸の町が夜あんなに明るい訳は無いと思ったし…第一時代劇のエキスパートが何だかんだ言っても本当に時代考証を進めていくとインチキばかりだからこれで行きましょうと俺が話したら相手が黙ってしまった」と…そんな石井センセイに戦々恐々しながらも「時代劇の伝統を無視した新しいものを…」の姿勢で臨んだ手腕は評価され、また当時は「石井センセイが今度は何を遣るのか?」は映画通の楽しみであったそうです。

 

 

この頃交際が発覚した「大川橋蔵・朝丘雪路のロマンスに便乗し配役がこうなった!」との話も在り!何に対しても便乗し観客目線に応えようとする東映(特に岡田名誉会長)の貪欲な姿勢には頭が下がりますし現代も見習って欲しいものです(興行収入又は視聴率に直結しますし、観客/視聴者目線に応えて収益が上がるなら誰一人文句は言わないと思います)。

 

 

 

「御金蔵破り」昭和39年8月13日公開・高岩肇原案・野上龍雄/石井輝男の共同脚本/石井輝男監督・東映京都制作(一部情報では「東映東京制作」となっている物も存在しますが、東映京都制作です)。

 

 

VHS/DVD化作品でU-NEXT内に於いて有料動画配信が行われています。又、今月/令和2年9月の東映ch「傑作時代劇スペシャル」の枠内の一作品として本日以降、8/16(日)21:30~23:30・8/31(月)11:00~13:00・9/8(火)11:00~13:00・9/19(土)18:00~20:00の四回放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 

 

 

 

江戸・伝馬町送りとなった旗本崩れで緋牡丹の刺青を持つ大川橋蔵はここで大盗人の片岡千恵蔵と出逢います。放免後、先の面倒を見ると申し出た同じ旗本仲間で出世頭の杉浦直樹の言葉をきっぱりと断る程旗本に反感を抱いていた橋蔵御大は「千恵蔵御大が長年夢見ていた江戸城の御金蔵破り」に手を貸す事に…しかし難関突破の為には大奥衆の力添えが欠かせず、橋蔵御大は将軍・伏見仙太郎の寵愛を受けながらもお手付き中臈として凋落し、外で役者の坂口祐三郎と密会を重ねる朝丘雪路に目を付け内部協力者として仲間に引き入れます。そして千恵蔵御大はインチキ賭博で船頭の伊沢一郎を嵌めて、御金蔵の運搬を依頼。

 

 

全ては順風満帆化と思われましたが、橋蔵御大・千恵蔵御大と同日に放免された牢名主の右腕かつ、安部徹率いるヤクザ衆の一人である凶悪で人間味が全く無い青木義朗(額に「犬」の一文字を刺青として入れた顔は「キン肉マン」をも思い出させる爆笑もの!)の手下である待田京介の情婦で朝丘さんの実妹の北条きく子がこの計画に感付き安部さんに知らせた為、役人に袖の下を握らせ安部さんの縄張りで賭場を開帳する等々の行為を繰り返した橋蔵御大を伝馬町送りにしながらも思い通りに行かなかった事に不満を抱いていた安部さんは「身の危険から逃れる為に北条さんと共にサッサと江戸を飛び出した待田の京さん」を追わず青木さんに陣頭指揮を命じ、今井健二・潮健児等々を従えて御金蔵を強奪しようと目論み…更にこの行動は千恵蔵御大に常に目を光らせていた目明しの丹波哲郎にも感付かれており「三つ巴の戦い」に突入します。

 

 

 

 

 

 

「先が約束されていた筈の世界に反感を抱き市井に身を潜めた橋蔵御大が、社会の裏街道を歩く盗賊の千恵蔵御大と手を組んで権力への逆襲と旧知の杉浦さんの基盤をも葬ろうとする姿…その為ならば形振り構わぬ行動に出る初心貫徹ぶり」「負け犬・社会的弱者等々による権力への逆襲と同等の観応え」が有りますし「両御大の行動に常時目を光らせながらも「御法か?市井の感情か?」を見極めただけではなく、自らの不平不満をも吹っ飛ばした事に感謝したかの様にも見える丹波の御大の粋な決断」非常に清々しい!

 

 

同時に石井センセイ・野上先生は「従来の東映時代劇路線が劇場公開作品としては成り立たなくなった事情」を察知した上で「市井の視点を最重要視する義賊であっても如何なる理由が在れども「悪銭身に付かず」で物語を締め括る事が「従来の東映時代劇から東映集団抗争時代劇への転換を解り易く観客に伝えられる」と考えた結果」がこの作品であると考えますし(もし従来の形態で纏めるならば「鼠小僧」の様な内容になっていたでしょう)それを岡田名誉会長も目論んでいたとすれば、石井センセイの登用は大正解だったと言えるでしょう。

 

 

先述した「青木さんの額の刺青」の他に「オープニングクレジットで顔に糞尿をかけられる囚人」「千恵蔵御大の台詞に「センス」と云う現代語が含まれている事実」「単純明快ながらも何かの障害に見舞われる事が明らかな千両箱の積出方法」等々は「石井センセイらしいなぁ…」と楽しさを倍増させますし「後の監督作品である「やくざ刑罰史・私刑」「直撃地獄拳・大逆転」の演出の参考にしたのではと思われる場面」も存在しています(私感)。