愛が全て…極致で度胸が据わるのは男より女!東映京都「姐御」黒木瞳/松方弘樹/ビートたけし | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

休み二日目、昨日は急遽前職場の同僚との一席となり、数か月ぶりの外食へ…しかし、新型コロナウイルス禍の影響は緊急事態宣言が解除されてもまだまだと云う雰囲気で、週末としては人出は疎らでしたし、予約席の札を置いて三密回避が為されていました。

 

 

さて本日は、昭和60年代末「極道の妻(おんな)たちシリーズ」が飛ぶ鳥落とす勢いであった東映が黒木瞳を主演に迎え「男の名代・霊代として女を捨てて組織を仕切る女極道の姿」ではなく「汚れを知らぬ一人の女性が極道野郎に惚れ、その純愛心だけが生きる奏となった経緯を描いた」と表現するのが適切に感じる作品です。因みにこの年に限り「極道の妻(おんな)たちシリーズ」の新作は制作されていません。

 

 

 

「姐御」昭和63年11月9日公開・藤映像コーポレーション企画(元・東映の俊藤浩滋統括の設立した法人です)・中島貞夫脚本・鷹森立一監督・東映京都制作。

 

 

VHS/DVD化作品で、GooglePlay/U-NEXT/TSUTAYA TV/DMM.com/Amazonビデオ(JUNKFILM by TOEI対象作品)/YouTubeムービー内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

●東映公式・YouTube予告篇動画

 

 

 

 

 

 

舞台は大阪…九州・熊本の一家の親分の女房であったものの抗争に巻き込まれ夫子共に奪われてからは私怨を含めて過去を全て捨てて道頓堀で小料理屋を営む香山美子の世話を受けていた黒木瞳は香山さんの猛反対を押し切り、河合絃司が率いる組織の幹部である松方弘樹の女房に収まっていました。

 

 

しかし、石橋蓮司が率いる組織との抗争に於ける刃傷沙汰の手打ちを(この刃傷沙汰を引き起こしたのが石橋さんの組織の客分であるビートたけし)石橋さんが反故にし松方さんを葬った時から(この際河合さんも葬られ、次期組長候補の寺田農は重傷を負います。後に寺田さんは組織を継承します)黒木さんは松方さんへの愛情を貫く様に復讐の炎を燃やし始め、松方さんの四十九日法要当日に石橋さんを日本刀で襲撃したものの、石橋さんの女房の白都真理の「あたしの腹の中には子供が!」の一言で心に迷いが生じ、殺人未遂事件の実行犯として四年半の実刑判決を受け服役したのですが…実は白都さんの一言は命乞いの為の嘘、一方の黒木さんは逮捕時の取り調べ中に松方さんとの子供を宿している事が判明し、服役中に出産及び育児を行ったものの、法令の規定により一年後に愛娘を香山さんに預けます。

 

 

そして満期出所後、黒木さんは松方さんの右腕であった名高達郎と香山さんの助けを得て更生の道を歩く事になるかと思いきや、復讐の炎は消えぬまま。しかもバブル経済絶頂期の勢いに乗り地上げを主な稼業としていた石橋さんの毒牙が香山さんの小料理屋にも近付き始め…同時に黒木さんには「愛娘を目の前にしながらも母親と名乗り出る事の出来ない葛藤」も芽生え始めます。

 

 

 

 

 

 

俊藤統括の企画でありながらも「脚本・中島監督/演出・鷹森監督」と云う顔合わせと作品の仕上がりは「東映仁侠映画も手掛けてはいるものの、片や仁侠映画が余り好きではない中島監督、片や東映東京制作の青春歌謡映画/夜の歌謡シリーズ等々の愛情物を多く演出して来た鷹森監督双方の「らしさ」が上手く噛み合った作品」と言えそう。

 

 

劇中白都さんが放つ台詞でもあるのですが「いざとなれば度胸が据わるのは男より女と云う主旋律は鷹森監督の味」「客分ながらも石橋・白都夫妻に対する不平不満をキャバレーの女給にぶちまけ、敵対組織の人間でありながらも松方さん・名高さんの姿勢を買い、最終的に黒木さんの手助けをする事となるたけしさんの姿と、過去を忘れ普通に生きる事を黒木さんに懇願する香山さんの姿勢は中島監督の味」かと(因みに香山さんは懇願をを無視した黒木さんを一度は見捨てるものの、妊娠の事実を弁護士の品川隆二から知らされ考えを改める事となります。そして最後の最後の黒木さん・香山さんの遣り取りをより奥深くする効果をも発揮しています)。

 

 

そして上記のDVDの表紙に書かれている惹句「つらぬくのが、愛」の通り「極道の妻(おんな)たちシリーズとの明らかな差別化を明示し、女を捨て極道社会に身を投じた姐御を描くのではなく、一人の極道を愛した黒木さんの復讐心を主線として幾つかの副線を肉付けした内容」(先述の内容の他に「朝鮮人である苦悩が極道稼業へと足を向けさせた名高さんの軌跡と、それを良く思わぬ母親・正司歌江との確執」「石橋さんの狙撃に意欲を燃えながらも失敗し服役した石橋保とその情婦である高部知子の恋愛模様」等々)。

 

 

 

 

出演者の中では、この当時まだ芸人としての認識が一般的であったたけしさんの硬質の芝居が特筆ものです!松方さんがレギュラー出演していた「元気が出るテレビ」の関係で出演に至った事は容易に想像出来ますが、娯楽映像作品を心底愛し観続けていた姿勢が芝居で活きた様にも思えると同時に、この後「北野武」名義で監督業に進出し成功したのも頷ける様な姿です。

 

 

そして「スレンダー体系で乳首は黒いが、松方さんと対となる鯉の刺青が美貌を引き立てる黒木さん」「日焼けした肌と下着着用部の白い肌の融合が更に淫靡さを引き立てる白都さん」「昼日向から保さんとの交尾に明け暮れ大きな乳房を揺らす高部さん」の裸体と「年齢相応の美貌と着熟しで裸体を披露した三人とは違う美しさを見せる香山さん」も見物ですが…「居酒屋の客としてのみ数十秒出演した荒井注!」「志賀勝・間寛平の刑事コンビが東映剣会の殺陣師でもある福本清三先生を「県警対組織暴力」内の「菅原文太・山城新伍の刑事コンビが川谷拓三を木っ端微塵に痛め付けた場面」の再来の様にぼこぼこにする姿!」がより強く印象に残ります。

 

 

松方さん・石橋さんの安定感は抜群!生前、松方さんは春日太一との対談で「もう、石橋の蓮ちゃん位のバイプレーヤーはもう居ない」とお話をされていましたが、本当にその通りだと思います。