99は永遠・一族の存亡を賭けた目的は完遂するか?新東宝「九十九本目の生娘」菅原文太/三原葉子 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

今朝の5時に勤務を終え、今回は暦通りの三連休となり、火曜日20時の始業時迄の休みです。今朝の冷え込みは厳しく、帰宅前に自家用車の霜を落とさなければ視界不良に見舞われてしまう程でした。

 

 

 

さて、先月の記事内で放映情報のみを掲載していましたが、先日遂に初放映され(名画座での公開実績は数年前に在ります)「死ぬ迄に必ず鑑賞したい一本!」との願いが叶いました(俺と同様の心情を持たれていた方は恐らく多いかと思います)。

 

 

 

「九十九本目の生娘」昭和34年9月11日公開・大河内常平原作(原作名「九十九本目の妖刀」)・高久進/藤島二郎の共同脚色・曲谷守平監督・新東宝制作。

 

 

VHS化作品ですが未DVD化で、有料動画配信も行われていませんが、今月と令和2年2月の日本映画専門ch「蔵出し名画座」で本日以降、1/14(火)18:50・1/19(日)06:20・1/30(木)07:00・2/6(木)07:00・2/20(木)07:00・2/28(金)07:00の六回放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 

 

 

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「新東宝ハンサムタワーズ」の菅原文太と、新東宝が誇るグラマー女優の三原葉子の共演を広告媒体の目立つ場所に書かれているのを見ると「お二方に対する新東宝の期待を感じさせる」一方、惹句からは「既に末期的状況に在った新東宝の危機感=何としてもお客様を取り込みたいと云う心情」も伺えます。

 

 

舞台は岩手県の山間部…皆様もご存じの通り文太さんは宮城県出身で「東北男児の誇り」葉子さんは岩手県出身で「盛岡を代表する大女優」ですから東北在住者としては適任と感じさせる配役!但し、映像を観る限り、岩手県内での撮影は行われていないものと推察します(岩手ナンバーの模造登録番号を付けた車両以外の劇用車の登録番号等々から判断しました)。

 

 

 

都落ちした一関の酒場の女給(三原葉子・水上恵子)とハイキングに来ていた若い野郎が、お歯黒をした老婆(五月藤江)を引き連れて警察に突き出そうとしたものの、一瞬の隙を付いて姿を消してしまいます。

 

 

何故五月さんを警察に突き出そうとしたのか…それは、数日前に葉子さん達を不穏な目で見つめる五月さんを目撃していた上に、その夜に葉子さん達が忽然と姿を消してしまった為。当地の警察署に勤務する文太さんはこの事件の捜査に於いて中心的な役割を果たす事となります。

 

 

そしてこの時期、地域に存在する「或る一族が住んでいる集落」では十年に一度の祭りが催される直前であり「集落の掟」に従い古い慣習が受け継がれていましたが、この近隣の神社の宮仕(沼田曜一)は「古い慣習を捨てて、集落の一族と街の者達が仲良く楽しく過ごせる祭りを」と尽力をしていたのです。

 

 

しかし、一族の長(芝田新)そしてほぼ全ての一族の民達は沼田さんの要請を頑なに拒むに留まらず「一族の者以外は山を降りろ!」と脅迫に至る始末…結果「一族の中で唯一、古い慣習に抵抗感を持っていた娘」(松浦浪路)は沼田さんの身を案じ、自ら危害を加え病院に入院させる事で山から降ろします。

 

 

この事と時を同じくして、芝田さんが率いる一族が住む集落では「99は永遠…一族が永遠に滅びぬ事が叶う、九十九本目の妖刀造り」が執り行われ、刀の焼き入れに葉子さん・水上さんの血が使われたのですが「血が汚れている!処女ではない!」となり…

 

 

 

 

 

 

「誰が見ても、葉子さんと水上さんは非処女!」と解りそうなものですが…これがこの先の「或る秘密」「処女を手に入れる為の陽動作戦の一部始終の面白さ」「手に汗を握る終盤の攻防の見応え」等々に繋がって行くのですから抜群の破壊力!

 

 

そして、本篇中では「集落」ではなく「部落」と云う表現が使われています。

 

 

以前も書いた事が有りますが「東北地方は「被差別部落」の存在は確認が出来ているものの、本来の目的はほぼ果たされず、現在に至る迄この類の差別は存在しない。教育機関に於ける同和教育も行われていない」(俺自身「同和教育」の存在を知ったのは社会人になってからです)従って「部落は集落を意味する言葉として日常的に使用されている言葉」…もし原作者・脚本家がこの事を熟知して「部落」と云う言葉を使用したとすれば、洞察力は相当なものと言えます。

 

 

当作品に於ける「一族の部落」は、現代で言う「インド洋・アンダマン諸島の北センチネル島に住むセンチネル族」に代表される「未接触部族」「山窩」の要素を加えたと思って頂ければいいかと思います。

 

 

 

「魂を抜かれると恐れた様な表情を見せている五月さんの捜索用写真」(スマートフォンの待ち受け画面にしたい位の素晴らしさ!)「終盤の攻防で登場するヘリコプター・銃火器に対し、矢による攻撃や落石で抵抗する一族」等々から感じ取る事が出来るのは「思考から生活様式等々の全てに至る迄、古き伝統と文明の衝突を描いている事」そして「一族と村人の融和を願い尽力し続ける沼田さん演じる宮仕」は、中盤以降で活躍を見せる文太さん以上に食い入ってしまう善人芝居…「何時本性を見せて裏切るのか?」と期待をしましたが見事に善人を演じ切っています!

 

 

 

とにかく面白いお薦め作品!文太さんの軌跡を追う上でも外せない作品の一つでもありますから、鑑賞/視聴機会が訪れました際には是非!