底辺を強かに生きる人間達・東映東京「ネオンくらげ・新宿花電車」山内えみこ/地井武男・山口和彦監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み二日目、昨日の晴天と心地良い暖かさは何処へやら…梅雨入りの到来を思わせるどんよりとした天気です。

 

 

 

さて本日は「東映作品や東映関係者との間柄が非常に深い、津軽が生んだフォークシンガー」三上寛の作品感を映像化し、三上さんの楽曲も随所に効果的に使用された作品です。

 

 

 

「ネオンくらげ・新宿花電車」(「ネオンくらげシリーズ」第二弾)昭和48年12月18日公開・金子武郎/山口和彦の共同脚本・山口和彦監督・東映東京制作・成人指定作品。

 

 

未VHS/DVD化作品で有料動画配信も行われてはいませんが、平成22年以降に東京都内の名画座での公開及び東映chでの放映が行われています。

 

 

前作品「ネオンくらげ」で、企画段階では「脱ぐ事には抵抗が有る」と言ってはいたものの、後に「ただ裸を出していればいいという作品ではない事が脚本を読み解りましたので思い切って脱ぎましょう!」と決断し「劇場公開作品初出演・初主演作とは思えない踏ん切りの良さと芝居の切れ」を強烈に焼き付けた山内えみこ(この後「山内えみ子」「山内絵美子」「山内恵美子」等々、芸名表記を数度変更されてはいますが同一の女優です)が当作品でも主演に起用となりましたが、監督は「前作品で精魂尽き果ててしまった」内藤誠監督(但し、内藤監督は山内さんに気を遣い、自宅で食事を振る舞い「内藤監督の子供が山内さんに懐いた位」の関係を築いたのだそうですが…)から山口和彦監督に代わっています。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

「林檎農家の手伝いばかりで嫌!東京に出て行けば何とかなる!」と津軽・五所川原を飛び出し、新宿に降り立った山内さんでしたが、親切を装い近付いたチンピラ集団に輪姦されてしまい…

 

 

 

 

 

 

 

数か月後、山内さんは「キャッチバー(店主は葵三津子)の女給」として、同時に「葵さんと離れそうで離れる事の出来ない大学出のインテリだが、足が不自由である事を理由に全ての物事から逃避し、虚勢を張り続けるバーテン」地井武男と組んで「売春婦」として毎日を過ごす迄に転落していました。

 

 

「地井さんの口車に乗せられているのかな?」とも感じられましたが、それ以上に山内さんは強か…オートレースの八百長に絡んだ騒動で選手生命を断たれた青年(沢田情児。日活ロマンポルノを中心に活躍されています。日活制作の「実写版・嗚呼!!花の応援団シリーズ」全作品で「応援団長・木村役を演じられた方」と言えば顔を思い出される方々が多いかと思います)との出逢いにより地井さんはあっさり捨てられ、更に沢田さんが「津軽の小泊村(現在は「平成の大合併」で旧・中里町と「飛び地合併」を行い中泊町に移行)の生まれである事」「金に困っていた父親を助ける為に八百長に加担したが、それを知られた途端に勘当された事」を知り、山内さん自身の生い立ちや心情等々と同様の物が有った為なのか「愛情」が芽生え「将来の結婚」を約束した上で「快楽と実益を兼ねた新たな商売=自室で本番白黒ショーを行う事」を決断し、二人は一挙に50万円以上の現金を手にする事になるのです。

 

 

何せ「ツケを貯めていた旧知の店主達(ラーメン屋の相馬剛三等々)」迄もが「過去の事を帳消しにして観劇に訪れた位の大盛況」なのですから…

 

 

しかし、山内さんの妊娠が解ると沢田さんは尻込みをし始め、些細な事から喧嘩別れとなった上、その直後地井さんが沢田さんを闇討ちし「お前は山内さんと別れて田舎へ帰れ!」と強要、同時に山内さんを騙し「沢田さんから手切れ金を要求された」と、手元の大凡50万円の現金を持ち去ってしまうのです。

 

 

闇討ちを受けた後に「田舎には戻らず」新宿を徘徊していた沢田さん…そんな時、新宿駅に到着した警察車両から山内さんの元仲間のキャッチガール(森みつる)が警察官達に両腕を掴まれコインロッカーに連れていかれる所を発見し追って行くと、森さんが「嬰児の死体遺棄で身柄を拘束され、その実況見分に立ち会う為に連行されていた事」を知ります。

 

 

山内さんもその事件を新聞で知った時、沢田さんが帰宅し「堕胎する」と言い放った山内さんに平手打ちを食らわしながら「子供を産む事」を薦め、再度将来を誓い合ったものの、ここで前述の「地井さんによる手切れ金の要求」が虚偽であった事が解るのです。

 

 

地井さんは「これ迄顎の様に葵さんに使われ続けて来た鬱憤を晴らす為」「身体障害者と自らを見下して来た世間と周囲を見返す為」(と俺は判断しました)に自らの店舗を購入する資金の一部に「山内さん・沢田さんの金」を流用していたのです。

 

 

沢田さんは地井さんに「金を返せ!」と迫ったものの、小競り合いとなった結果、地井さんの杖が沢田さんの腹部を直撃してしまい「片や絶命・片や殺人犯として絶望」と云う顛末!

 

 

 

 

 

その後、山内さんは「妊婦ヌード」を売り物に新宿で殿方達に声を掛け続けながら「あんた(=沢田さん)とあたしの子供が動いているよ」と独り言を放つ姿を映し出して物語は終わりを迎えます。

 

 

 

新宿を舞台に、底辺を生きる人間像を「なりふり構わず強かに、時には弱き者に情をかけながら前向きに突き進み幸せの直前迄漕ぎ着けた山内さん」「山内さんとの出逢いにより、一時脱落しかけたものの改心し此方も幸せの一歩直前迄漕ぎ着けた沢田さん」「弱さを克服出来ず、情をかけて貰う事に溺れ過ぎ自浄能力を失ってしまった結果が身柄拘束となってしまった森さん」「全ての物事を自らの身体障害に責任転嫁し、虚勢と虚栄以外の何物でもなかった見栄が一生を棒に振る結果となってしまった地井さん」「山内さんの美貌と強かさ・森さんの弱さ・地井さんの頭脳明瞭さを上手く利用し、御山の大将と云う言葉が嵌る狡賢さを見せる葵さん…しかし葵さんが最も諸刃で誰かを頼り続けていなければ生きて行かれない一面を抱えている」と云う「五人の方向性からかなり奥深く迄描き切り、しかも約70分の枠内で収めた凝縮感と山口監督の見事な手腕」は、勿論随所で効果的に使われていた三上さんの楽曲による功績も大きいものの、このまま日の目を見られぬまま放って置いては勿体ない上に映像財産の損失になってしまい兼ねない特筆もの!

 

 

前作品「ネオンくらげ」と共に、数多く制作された「様々な形態の東映色気映画作品群」の中でも明らかに傑作に入ります。

 

 

 

 

 

 

考えてみると、楽曲を提供された三上さんは劇中の沢田さんと同じく小泊村の生まれ、山内さんは津軽海峡を挟んで小泊村の向かいに面する北海道・函館の生まれ、そして沢田さんは宮城県の生まれ…

 

 

三上さんにとっては「自らの故郷を沢田さんの出身地に設定してくれた東映側の配慮」には心から感謝されたでしょうし(この「作品関係者に対する東映側の細やかな配慮」については「トラック野郎シリーズ」に協力された千葉県の椎名急送の椎名社長も或る書籍で「東映側がこう云う配慮をしてくれた事が気持ち良く制作に協力出来た理由」とお話をされていました)先述した「脚本を読み、ただ裸を出せばいいという作品ではない事が解ったので思い切って脱ぎましょう!」と決断された山内さん(沢田さんとのデートの場面では「乳首が透けて見える洋服」を纏い、海岸で戯れたり新宿の街を寄り添い歩いたりと「俺の息子の膨張度合いが頂点寸前に達してしまいそうになった姿!」を存分に見せてくれています)そして沢田さんは「上京時に抱いていた素の感情と故郷への想いを芝居に生かしながら完成に漕ぎ着けたのではないのかなぁ」とも考えてしまいました。

 

 

地井さんの「早漏」を「まるで蛙の小便じゃないの!」「またどうせショートでしょ!」と小馬鹿にする山内さんもまたいい!

 

 

そしてこれは「名優達が御逝去される度に感じ、何度か当方でも書いている事」なのですが比較的近年の善良な役柄の軌跡ばかりを取り上げ、若かりし頃に演じられた悪・灰汁・やんちゃ・大馬鹿・破天荒等々の、娯楽そのものの芝居を全くと言っても過言ではない程取り上げない報道機関等々の姿勢」には苛立ちを覚えます。

 

 

地井さんもその例に洩れず…

 

 

「暴れさせたり悪や灰汁を出させれば相当な力量を発揮されていた地井さんの無軌道振り」が俺は「善人芝居」以上に好きですし、地井さんの軌跡を知って頂く上でも是非皆様に「この時代の地井さんの芝居の魅力」をより感じて貰いたいと願っています。

 

 

 

尚、平成30年4月に発売された徳間書店・刊「東映実録バイオレンス浪漫アルバム」内に於いて「杉作J太郎先生・三上さんの対談」が掲載されており「ネオンくらげシリーズ」に関する記載は有りませんが「東映との深い関係や様々な面白可笑しい秘話が満載」ですので、もし機会が有りましたなら皆様にも是非読んで頂きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

昨日は「ネオンくらげシリーズ」二作品を久方振りに鑑賞し「そう云えば内藤監督の著書が無かったなぁ」となり、Amazonを経由して購入する事にしました。

 

 

 

 

 

 

そしてもう一人「好きな監督の一人」である関本監督の書籍も、以前相互読者さんの「ももじろう二号」さんから薦めて頂いていましたので今回購入する事にしました。

 

 

 

 

 

 

 

最後に、平成30年6月3日(日)の「スカパー!毎月第一日曜日の無料放送の日」に於いて、東映chは同日の10:00~11:00・14:30~18:20・18:30~27:30迄が無料放映となります。

 

 

更に平成30年6月4日(月)04:00~06:00迄も無料放映となります。

 

 

情報番組・動画作品・特撮作品・テレビドラマ作品・劇場公開作品等々を組み合わせた内容となっていますが「俺が皆様にお薦めしたい作品」は下記の通りです。

 

 

19:00「大激闘・マッドポリス80」第一話(昭和55年4月8日NNN系列にて放映・第一話は永原秀一脚本・関本郁夫監督・渡瀬恒彦主演・他は梅宮辰夫・志賀勝。片桐竜次・土屋嘉男・中尾彬・河津清三郎・仲谷昇・島田正吾等々が出演・東映東京テレビプロダクション制作)

 

 

 

 

 

 

20:00「多羅尾伴内・鬼面村の惨劇」(「小林旭版・多羅尾伴内シリーズ」第二弾・昭和53年8月12日公開・比佐芳武原作・掛札昌裕脚本・本日紹介した「ネオンくらげ・新宿花電車」の山口和彦監督・小林旭主演・東映東京制作。旭兄ぃの老婆姿も登場!恐らく片岡千恵蔵版も含めた「多羅尾伴内シリーズ」の軌跡の中でも「唯一の女装」かと思います)

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

21:30「博奕打ち・総長賭博」(「博奕打ちシリーズ」第四弾・昭和43年1月14日公開・笠原和夫脚本・山下耕作監督・鶴田のおやっさん主演・東映京都制作。言わずと知れた「東映仁侠映画作品群の最高峰」に位置する一作品!当方で何十回と紹介させて貰っている「未だに右に出る役者が居ない、鶴田のおやっさんの我慢芝居」を是非この機会に!東映仁侠映画は社会人・日本男児の教科書そのものであり、混沌とした現代社会だからこそ絶対に見せなければならない過去の日本の映像作品群の一つ」です!)

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

●東映公式・YouTube予告動画

 

 

 

 

 

 

 

23:30「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲」(「ビー・バップ・ハイスクールシリーズ」第四弾・昭和62年12月12日公開・那須真知子脚本・那須博之監督・仲村トオル/清水宏次朗主演・東映東京制作。「乳吸い」を巡る騒動から「健全化した仲村さん?恋に目覚めた清水さん?」の姿がまた楽しい傑作!「菊リン」こと石井博泰の追悼の点からも見逃せません!)

 

 

 

 

 

 

 

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●東映公式・YouTubeプレビュー動画

 

 

 

 

 

 

 

※東映ch・平成30年5月28日(月)~6月3日(日)の週刊番組表は此方から

 

 

※スカパー!東映ch番組表・平成30年6月3日(日)分は此方から(10:00~11:00・14:30~18:20・18:30~24:00放映分迄)/平成30年6月4日(月)分は此方から(24:00~27:30・04:00~06:00放映分迄)