脚本はソクブン監督の単独執筆!東映京都「緋牡丹博徒・二代目襲名」純子姐御・健さん。 | 東映バカの部屋

東映バカの部屋

東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。


休み最終日、どんよりとした曇り空で肌寒いですが、雨は降っていない秋田市内です。



多くの方々がご存知かとは思いますが、我らがソクブン監督は「共同執筆」が大部分を占めるものの「脚本家」としての側面も持っていました。


「脚本及び脚色のみに関わった作品」
は生涯で合計29作品。


「単独執筆」は「悪女軍団」「団鬼六・OL縄奴隷」(双方共に昭和56年製作の日活ロマンポルノ。俺は未見です)と「緋牡丹博徒」(シリーズ第一弾・山下将軍監督)と本日紹介させて頂くこの作品です。



「緋牡丹博徒・二代目襲名」(「緋牡丹博徒シリーズ」第四弾)昭和44年4月10日公開。ソクブン監督脚本・小沢天皇監督・東映京都製作。


VHS/DVD化作品でDMM.com/GYAOストア/bonobo/YouTube内で有料動画配信が行われています。







※KINENOTEの作品案内は此方から



この作品のみ「ちょび髭の熊」こと若山先生は未出演で、アラカンと「おたか」こと虹子姐御が「熊虎親分」の代わりを受け持っています。



当作品は今月の東映ch「映画俳優・高倉健」の枠内で放映の一作品として本日以降5/29(日)21:00~23:00に放映されます。(字幕付きHD放映)



※東映chの作品案内・放映時間案内は此方から



因みに「健さんとソクブン監督の接点」は「演出作品」では全く存在しませんが「脚本作品」では当作品と「日本侠客伝・白刃の盃」「昭和残侠伝・血染の唐獅子」「緋牡丹博徒」「緋牡丹博徒・花札勝負」の合計五作品で接点を持っています。


只、健さん/ソクブン監督双方の書籍等々で「お互いの想い出を語る」等々の文章は現時点で見付けられずにいますので「深い関わり」は無かったと判断しても良さそうです。


「健さんの東映全盛期のソクブン監督の立ち位置」「東映東京の主翼の一人となったソクブン監督…しかし健さんは東映を去った後だった」等々を考えると「仕方がない」となりますが「ソクブン監督が健さんをどう演出したのかなぁ…是非見てみたかった」と云う想いは非常に強いです。



●東映公式・YouTube予告動画







併映作品は「妖艶毒婦伝・人斬りお勝」(「妖艶毒婦伝シリーズ」第二弾。高田宏冶脚本・中川信夫監督・宮園の純子姐御主演・東映東京製作。未VHS/DVD化作品ですがDMM.com内で有料動画配信が行われています。KINENOTEの作品案内は此方から



「妖艶毒婦伝シリーズ」は全三作品が東映chで放映された際に観ましたが…
「藤の純子姐御」の「静の凄味・高質な華麗さと気品」とは一味違う「宮園の純子姐御」の「躍動感・上品な淫靡さ」を全面に押し出したかなりの娯楽傑作です!


「ダブル純子」の主演作品を組み合わせた番組展開
とは…東映は「観客の心を歓喜させる粋な番組組合せ」をさせたら、当時は明らかに断トツで一番だったと感じさせてくれます。



「博徒修行の為の全国行脚」を終え、故郷の熊本に戻った純子姐御…「矢野一家」の再興の為に鉄道工事を請け負い(鉄道省側の責任者は中山昭二)「食扶持が奪われる川忍足達(元締は石山の健さん)や敵対組織(頭は敏さん)の妨害」を乗り越え、無事完成。


そして、アラカンや虹子姉御を後見人として「二代目・矢野一家」の襲名披露が盛大に開かれるのですが…






当作について、演出を担当した小沢天皇は自著内で「経歴程度の説明」しかしていませんが、ソクブン監督は自著「下品こそ、この世の花」の中で…


「私が脚本を担当した「緋牡丹博徒・二代目襲名」は帰って来た故郷で鉄道工事をお竜が完遂させる物語であるが、鉄道という近代にお竜がどう関わるかという点でかなり苦しんだ。石炭を運ぶ汽車を通す為に、何故アウトローで終生生きる運命のお竜が命を賭けようとしたのか」


純子姐御は「便利になる一方で食扶持を奪われる川忍足の後の生活」もきちんと考えてはいたものの「真意を中々汲み取って貰えない最中に起きた悲劇」を突破口にして一挙に「敵対組織以外の全て」を味方に付ける「荒業」を遣って退けますが…


これも「一度は捨てながらも時折現れる女心と、血の出る様な苦労を経て叩き込ませた侠客道が見事に融合したからこそ成し得たもの」
であると言ってもいいです。


ソクブン監督が「苦労した」と言うだけの「価値」が有ります。


「一見、結びつかない様な現実を無理無く、一切捻る事も無く水の流れの様にスルッと物語にしてしまう手腕」
「文学青年だったが、常にアンテナを高く何本も立て、世の中の細かな状況に迄精通していた上に作中に精力的に取り入れ、可能な限り観客の目線に寄り添う姿勢を貫いた」ソクブン監督だからこそ成し得た事。



今、熊本県内が震災復興の真っ只中に有りますが「今何を考え、想いながら民衆(熊本・大分両県民の方々等々)の為に尽すか?」と云う「答えの一部」をソクブン監督は当作で「鉄道工事」を通してきちんと主張されていますから、現地は勿論の事「国民全員が当作でその真意の一欠けらでもいいから見付けて、日常に生かして行く必要が有る」とも考えます。


当作は「舞台が熊本」でもありますし…



若山先生が出演されていない分は
「笑い」を長門裕之「好色」をエンタツさん等々「ストイック」をアラカン・健さん・虹子姐御等々で役割分担し「シリーズ他作品と一切遜色無い雰囲気」を保っています。


「一度抱いてみたかったぜ!」「悪党らしい捨て台詞」を言い放った後に純子姐御に葬られた敏さんは…確か当作だった様な気がしますが…記憶違いの際は御容赦下さい。



監督業と兼任されてた時期は先述の通り「共同執筆」が大部分を占めていたものの「体力面が追い付かない」と監督業から脚本業に移行してからは「脚本業一本」で連続時代劇を中心に精力的に書き続けたソクブン監督…


「暴れん坊将軍」に一時レギュラー出演していた生稲晃子が演じた「十手持ち」もソクブン監督が生み出したもの。



長年、東映京都に在籍した松平乗道統括は「とにかく楽しかった。小さなアイデアを膨らませる発想の豊かさ。吐夢監督や泰監督に学び、時代劇や任侠映画を熟知していたソクブン監督の脚本は間違い無い。ギリギリ迄粘られて東京の自宅迄原稿を取りに行った事も有りますが、それだけの価値が有りました」と「映画秘宝・平成26年8月号」内「ありがとう 鈴木則文」の中で回想されています。



ソクブン監督ご本人は「一部で無思想無節操の職人監督の典型との評が有るが、それが何よりの褒め言葉」と生前語られています。


映画賞や「キネマ旬報ベストテン」等々とは生涯一切無縁でも有りましたが、寧ろそれを矜持としていた姿勢も「先ずはお客様が喜んでくれて何ぼ」の姿勢を貫き抜いた「証明」であり、観客目線よりも自身の箔に固執し、求められている物ではなく遣りたい物を製作し観客に押し付ける輩が多い「現在の日本の映像業界」そして「押し付けと箔に固執し続けて来た古くからの芸術家気取りの製作陣と、その姿勢を過大評価・無条件評価して来た(勿論「その手の作風が好きだから」と素直にそれ等の作品を評価された方も少ないながら居るかとは思います)綺麗事と世間受けだけを考える腐れ映画評論家や偽善しか考えていない識者陣」此方から「押し付けて遣りたくなる」立派な姿勢です。



丁度現在「カンヌ映画祭」で盛り上がりを見せている時期…だからこそ敢えて言います。


「賞争いでの評価より我々一般鑑賞者の直感をもっと見るべき読むべき!(参考程度に見聞きしたり情報を得る上で使う分にはいいですが…)賞争いに入らなかった無数の作品群の中にこそ真の傑作有り!観客の琴線に触れる楽しさや感動等々を捻らず、端的に描いた作品にこそが娯楽映画の王道!」


これは製作国に関係無く、世界中の作品に言える事だとも思います。



他の出演者は…大前均・広瀬義宜・高宮敬二・時美沙・和樹俊哉・方正さん・木谷邦臣・有川正治・阿波地大輔・丘路千・楠本健二・佐藤昂也等々です。