成人映画路線に本腰を入れる切っ掛け!東映京都「忍びの卍」ソクブン監督・弘子さん/夏八木さん主演 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。


休み二日目、朝から降雨で肌寒く「録画障害が起きても仕方がない」秋田市内です。



さて…昭和46年以降「東映京都ポルノ戦線」を敷き、その主翼を担っていたソクブン監督…


「現代ポルノ伝・先天性淫婦」「徳川セックス禁止令・色情大名」「エロ将軍と二十一人の愛妾」「恐怖女子高校シリーズ(一部)」「女番長(すけばん)シリーズ(一部)等々の脚本・演出を担当されています。


以前も書いていますが「女番長=すけばん」と東映が呼ぶ様になったのは、ソクブン監督が「街中で聞いた「すけばん」の響きの鮮度は捨て難い」の一言で決まったものです。



「温泉みみず芸者」に至っては「内容を知った全国各地の温泉街から協力を拒否されてしまった為、静岡出身で実家は伊豆の温泉町(しかし、ウィキペディアには「浜松市生まれ」と…)だったソクブン監督の人脈を頼りに撮影に漕ぎ着けた上「シリーズの幕引き」を指示!しかし…玲子姐御と美樹サマを同時にデビューさせた上「ポルノ」という言葉の「鮮度」と「余りに大馬鹿な内容」が評判を呼び大ヒット!一転「シリーズ継続」となり「温泉スッポン芸者」でも演出を任される」という活躍ぶり!(「温泉スッポン芸者」以降「温泉芸者シリーズ」は東映東京が引き継ぎます。東映京都の人気シリーズを当時ヒット作が少なかった東映東京に譲渡し継続する事が数例あった模様です。「博徒シリーズ」もその流れかと…)


併映作品だった為、殆どの作品に於いて「当時の本当の人気」に関しては何とも言えない部分が有るものの、現在では全作品がDVD化されている上に、ここ十数年間に製作された「数多くの作品群には見られない世界感と徹底した観客目線での製作姿勢」が幅広い年齢層・趣味層に受け入れられている「人気作」。



東映が「成人映画路線」に力を入れ始めたのは昭和43年~44年頃…


初めは「網走番外地シリーズ」等々の「普通の作品群」に飽き飽きしていた石井センセイ「奇才」を発揮し「徳川いれずみ師・責め地獄」「異常性愛記録・ハレンチ」そして「芸者シリーズ」第一弾「温泉あんま芸者」等々の名作を演出。


しかし…「岡田茂・東映名誉会長と天尾統括が、石井センセイを起用して成人映画路線に本腰を入れ始める切っ掛け」となったのは、ソクブン監督が手掛けた本日紹介させて頂く作品の「色気不足」だったとも言われています。


実際、ソクブン監督は岡田名誉会長に
「裸が足りん!」と言われたとも…


「真昼間から放送禁止用語の嵐で猥談一本だった!」「異国女給を「そこのポルノの国から来たの!」と呼びかなり嫌われていた!」
と云う「逸話」が有る岡田名誉会長らしいお話です。



「忍びの卍」昭和43年1月27日公開。山田風太郎原作・佐治乾/小野竜之助の共同脚本・ソクブン監督・東映京都製作。


未VHS/DVD化作品で有料動画配信も有りません。東映chでの放映実績もここ四年では一度だけです。



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※KINENOTEの作品案内は此方から



「男の勝負・白虎の鉄」(「男の勝負シリーズ」第四弾。高田宏冶脚本・山下将軍監督・ムッチー主演・東映京都製作・未VHS/DVD化作品ですがDMM.com内で有料動画配信が行われています。因みに俺は未見です。KINENOTEの作品案内は此方から)の併映作品で、ソクブン監督「通算五本目の演出作品」です。



主演は「女郎の現状打破作戦」を描いた傑作「骨までしゃぶる」(泰監督・東映京都製作)でも「中々の相性」を見せた弘子さん(二役)と夏八木さん。



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三代将軍・家光(スガカン)は子宝に恵まれなかった上、或る日抱いた女の下半身が「魚の鱗の様に変化する」と云う「怪奇現象」を目にしてしまい「女性不感症」に陥ります…


この事態を
「忍びの仕業」と読んだスガカンの手下(大木若頭)は「柳生門下の剣客」であった夏八木さんを雇い、事の沈静化を任せます。


弘子さんが率いる「忍びの一族」との数々の戦いを経て、最後はスガカンの不感症も治癒し、子宝に恵まれる…という「結末」。



「年齢相応の美しさと可愛らしさ・色気」を均衡に持ち合わせていた弘子さん
(今は余りにも「年齢不相応の女性観=幾つに見えますか?実は●歳です!と驚かせる感覚」が俺は未だに受け入れられません。「年齢相応の品格・美しさ・可愛らしさ・色気の持つ良さ」は何処へ行ったのか…「今の女優陣より過去の女優陣に遥かに魅力を感じる」のはこれも一因です)に真理明美・真理アンヌ・三島ゆり子・真山知子・桑原幸子・花柳小菊等々が見せる「色気」「服を着ていても存分に感じ取れるもの」であり「表情と声」のみで倅が反応する素晴らしさ!



只…岡田名誉会長の言う通り「裸が少ない」為、視覚面での「色気不足」は否めません。



逆に言えば「裸が無くても十二分の色気と卑猥さを表現したソクブン監督の手腕」はこの当時に於いても「奇才」と言える物であり、数年後に「この実力」を如何なく発揮されたのですから…



「東映成人映画路線」の先陣を切ったのはソクブン監督・「安定化と定着化」に寄与したのは石井センセイや中島将軍・「転換期」で再びソクブン監督登板・「新たな演出陣」として関本監督や志村監督等々が登場…と言ってもいいかと思います。


但し「東映成人映画路線」の前身であり同時並行で製作されていた「夜の青春シリーズ」「夜の歌謡シリーズ」「不良番長シリーズ」「ずべ公番長シリーズ」等々を手掛けられていた東映東京の村山新治監督・鷹森監督・野田監督・内藤監督・山口監督等々、「大奥シリーズ」「くノ一シリーズ」を手掛けた東映京都の中島村長の「実績」と「東映京都ポルノ戦線への足掛かりを作った監督陣である事」も忘れてはなりません。



そして、当作でも
「大馬鹿な笑いの味」が如何なく発揮されているのも「ソクブン監督流の面白さ」!


「女の股座からひょっこり顔を出す潮の健さん」「弘子さんの手下であるヤマリンとエンタツさんの遣り取り」
等々も「笑いのツボ」ですが…



「姿形は弘子さんやゆりちゃん・アンヌさんなのに…発せられる声はヤマリン!」(しかし…さすがに喘ぎ声や善がり声は各女優の声になっています。当然か…)



…こういう場面が数場面有るのです!


「ヤマリンの魂のみが女の身体に入り込み…しかも交尾を決行!」
と云う「気持ちがいいのか気色が悪いのか」よく解らない大馬鹿場面!


俺は「物語の概略や夏八木さんの活躍ぶり」が思い出せなくても(事実、鑑賞から三年程経っている為、大まかにしか記憶が…)「ヤマリンの大馬鹿芝居」が見られただけで大満足!



よく考えてみると…東映は劇場公開作品・特撮を含むテレビドラマ作品で「俳優陣を女装姿にしたりオカマを演じさせる。場合によっては女優か女性声優が声を受け持つ(「徳川いれずみ師・責め地獄」での由利ちゃん・大泉さん等々。あの文太さんも「頬かむり・割烹着・スカート姿」を披露したのですから…ソクブン監督の「トラック野郎・男一匹桃次郎」で…)「女優陣にブス化粧や老け化粧をさせたり汚い衣装を着せて大馬鹿を遣らせる。此方も場合によっては俳優か男性声優が声を受け持つ」と云う事が他社に比べて圧倒的に多い会社。(…というより「他社では思い付いても使わなかった、又は使えなかったのかもしれません。「企業風土や持ち味・専属俳優・女優陣に対する考え方の違い」「外部から起用の際に抱える問題」等々で…)


それ等を遣らせた東映の製作陣も素晴らしいですが「快く
(…でもなかったかもしれませんが)引き受けて芯から大馬鹿を熱演し、観客や視聴者を心から楽しませてくれた役者陣」にも頭が下がりますし、最大級の感謝をしなければなりません。



他の出演者は…新伍ちゃん・明蝶さん・方正さん・中村錦司・堀正夫・志賀ちゃん・阿波地大輔等々です。



最後に…本日古本屋で見つけ買いました…
増え続ける一方である事は承知の上で!


今手にしなければ二度と無いかもしれないとも思ったので…



●「おちおち死んでられまへん 斬られ役ハリウッドへ行く」平成16年4月30日初版発行、福本先生/織田豊二・著、集英社・刊。刊行当時¥1500-+税。


税込¥960-で買いました。



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