研修から4ヶ月が経ち


僕は
晴れて??
社会人となった。


この4ヶ月間は
とくに、料理に関して
勉強した訳でも
準備した訳でもない

若旦那に
「変な知識や
技術と言わない技術なんか持ってくるな」
と言われていたからである。 

父親にも
「向こうで全て学べ!」と
実家の料理屋でも
包丁はおろか、
食材に一切触らせて貰えなかった。


大学も料理とは無縁の
経営学を学んだ、

料理初心者のボンボンは
老舗料亭の門をくぐった。



ただ、



一つだけ
4ヶ月間
この日のために必死に学んだ物がある。


それは、
今となっても
凄く糧になっているし、
他人にはオススメしないが
これで、
修行を乗り切れた!!
と言っても過言ではない学びがある。






そう…




日本国民で知らない人はいない、、、、






国民的アイドル…


「AKB48」だ!!!!




知識はゼロ
技術もゼロ
料理は出来ない!

今までやってきた、
スポーツは
厨房では役にたたない…


そう!

「社長(若旦那)の趣味を
勉強して
仲良くなっちゃおう!!」作戦



つまり、
お節でヘビロテしていた
AKBを必死に勉強した。

正直、
今までアイドルは嫌いだった。


ブリブリしているのが
嫌いという、
ブリブリ=アイドル
みたいな固定観念があったからだと思う。


TSUTAYAで
CDやDVDをいっぱい借りて、、、
アイドル雑誌をひたすら読んで、、、
過去に出た本を買って、歴史に目を通す、、、
ネットではタイムリーな情報を掴む、、、
大学や高校でのアイドル好きと連絡をとった、、、



どうにか、
入社前には
48グループ全員の顔と名前、年齢、特技や趣味…
全て覚えた。


名前や写真、その人のイメージや、出てるメディアを言って貰えれば
大概応えられるぐらいには仕上げられた。


めっちゃ大変だった_| ̄|○


だが、
料理の技術付けるより…
今後、少しでも社長と仲良くなって過ごしやすい修行になればと………


















甘かった…………





そんな、
うまい話は世の中そうそうない……









その現実を目の当たりにしたのは、
入社して二週間してからの


「新入社員歓迎会」


カラオケがあって、

新入社員は歌わないといけないルール
があった。



オシッ!!!
これは、チャンス!!

カラオケは得意ではなかったが…

社長へのアピールには
絶好のチャンスだと思った。



お酒もかなり入ってきて
皆かなり良い雰囲気。

そんな中、
恒例の新入社員カラオケが始まった。


同期が3人いて、
僕は最後に歌うことに…


この時
ちょうどAKB48メンバーだけのドラマ
「マジすか女学園2」
が始まって
これのテーマ曲をチョイスして歌った!




………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………






「ん????」



周りの反応は凄く冷たい…



若旦那は??!!




「あれ??」





とても
冷たい視線。




この感じ…… 
「マジすか女学園」
を知らない!  
曲を知らない! 





オーケー!!!
オーケー!!!



やっぱり
メジャーな曲じゃなきゃ
ノリにくいよね!





お節料理研修でかかっていた曲

「会いたかった」

で決めたるぞ!!




「♪♪♪」

イントロが始まった。


「会いたかったー♪会いたかったー♪会いたかったー♪イエィ!!!」

「会いたかったー♪会いたかったー♪会いたかったー♪イエィ!!!
きみにーー!!!」
若旦那に向かって指差し
フリコピ!!!!

めっちゃ決まった!!!!!


振りと合わせて
若旦那の顔を見る…… 





……………………………………………………………………………………………………







凍り付いてる先輩方…


そして
若旦那のビックリした表情……














いやいやいやいやいやいや
!!!





一番ビックリなのは僕ですからッ!!




なんで?
若旦那AKB好きなんでしょ?!?!



連日
会いたかったー♪
会いたかったー♪
歌ってたじゃないですか?!




不思議そうにしている
僕の表情?態度?を
気付いてかは分からないが…


若旦那が
「うぇーーーーいっ!」


無理やり盛り上げてくれた。





次の日の朝









先輩に怒られた……

「若旦那に向かって何やっとるだ?!」


グチグチと説教を受けた……



良かれと思ってやったのに、

何で今回はノってくれなかったんだ?
そればかり考えて、
説教の内容が全く入らなかった。
 




そして、
若旦那が来た。



俺「昨日はすみませんでした!!」
顔を合わせるやいなや、
ソッコーで謝罪。



若旦那
「え?面白かったよ!こんな事やる奴、初めてだったから(笑)」


初めて……かぁ



さっき先輩も
初めて……みたいなこと言ってたな…



ふと、疑問に思ったことを聞いてみた。
俺「AKBはどなたが好きなんですが?」


若旦那「ん?別に好きじゃないし、わからない!」
「あの曲は、テンポがすき」














(゜Д゜;)
………………………………………









((((;゜Д゜))))



えぇーーーーーーーー!!!!!!




なんですとぉーー




一言言わせてくれ!!!



この4ヶ月間の努力は
なんだったんだーーーー!





言うまでもないが

その日から
あだ名が

「ヲタク」



「アキバ」


になった……
研修期間も2日…3日と過ぎ、、、


26日からは
お店の営業を完全に終了させて、
お節料理の仕込みオンリーとなった。

その日のお昼…


若旦那が突然、
厨房にCDプレイヤーを
持ってきた。


もう片方の手にはCD…



若旦那が
「いやーー
このCD1枚買うのに3000円もかかったよー!!」
と言いながら、
CDをセットする。



「………カチッ」


「♪♪」


心の声「ん?このイントロ聞き覚えが……」



CDプレイヤー
「会いたかったー♪会いたかったー♪会いたかったー♪イエィ!!」

若旦那
「会いたかったー♪会いたかったー♪会いたかったー♪イエィ!!きみにーー」





厨房一同「…………」


俺の心の声「AKB??」
「若旦那はAKBが好きなのか??」




………………………………


次の日も……
「会いたかったー♪会いたかったー」


その次の日も……
「会いたかったー♪会いたかったー♪」



お節最終日まで、
若旦那の「会いたかったー♪」は
厨房に響きわたっていた、、、、。


ここって

代々続く、有名和食料亭だよな?(;゚д゚)??

どーなってんだーーーー!!




そして、
年は明け……



お節料理の研修期間は
無事??!!
終えることができた。
俺「お疲れ様です!
 お先お風呂頂きました!!」


気が滅入っている場合ではない!

お礼や挨拶は基本。
しっかりやらねば!

また、
N先輩が目の前で
ボコられるのを見る羽目になりかねない…


N先輩は
平気で立っていられても、こっちの心が保たない…


そうこうしているうちに、
N先輩も寮に戻ってきた。


僕「今日1日ありがとうございました。
色々とご迷惑おかけしてしまいすみませんでした!」


若旦那に殴られてから
気まずくて
N先輩の顔を見れていない。


だが
いつまでもこうしていられない、
恐る恐る顔を合わせる…






あれ?




昼間の殴られた痕がない??



しかも、
ニコニコ笑っている…


ものすごーーーく
優しいオーラが満載


元々
目が細く、
常にニコッと笑っているような表情なのである。


かなり
拍子抜けで、
緊張の糸が切れてしまった



その瞬間、

「お昼、すみません、大丈夫でしたか?」 

無意識に昼間のことを聞いてしまった…


聞いた後で、すぐ
何で自分から蒸し返してるんだ!?っと
自分を責めた。



だが、
N先輩は何も気にしていない様子で

「あぁ~慣れてるから」
っと


え?
この人そんなしょっちゅう殴られてるの?
と、疑問に思ってしまった。


その雰囲気が伝わったのか、
すかさずN先輩が

「学生時代空手やってたから」
と続けて話していた。


武道系のスポーツをやったことのない僕は、
「殴られなれる」
という意味が理解出来ない。


N先輩はフレドリーに
話を振ってきた。

「お前は何でここに来たの?」


不意の質問だったが、
「実家が料理屋で、父も30年前にここで御世話になってました」

逆に先輩に質問してみた。
「先輩も実家が料理屋さんなんですか?」


N先輩「そうだよ」


僕「専門学校卒業ですか?」

N先輩「高卒だよ」


???「おい!
    中卒だろ!」


誰かが
話にいきなり入ってきた!!



M先輩だ!! 


この人…
N先輩に対して当たりが強いな…
N先輩の先輩か!!
っと思いつつ話を聞いていた。


N先輩「定時制でしたけど、一応高校は高校です!!」


M先輩「ろくに勉強してねぇーくせに!
掛け算言って見ろよ!!」



俺の心の声「…掛け算??」


N先輩「ナメないで下さいよ!僕だって、難しくない掛け算ぐらい出来ますよ!!」


M先輩「難しくない掛け算って何だよ!!?」


俺も素で同じ事を思った


N先輩「7の段とか…9の段ですよ!!」



………………………………………………………………


心の声「えぇーーーーーーーーー?!?!?!?!?」


マジかよこの先輩……


脳みそが小学校で止まってる((((;゜Д゜))))



M先輩「高校の時にバカなことばっか、やってるからそうなるんだよ!!」


心の声「バカなこと?」


N先輩「バカって言わないで下さい!
   若気の至りです!」

続けてN先輩が
「M先輩こそ、バイクで暴れまくって、しょっちゅう家裁世話になってたじゃないですか!」


俺「暴走族???」



M先輩「あれは許容範囲内だ!」


俺「???」


N先輩「僕も許容範囲内で、ケンカしてただけですから!!」


僕「ケンカ???」


M先輩「こいつ、ストリートファイトばっかやってて、勉強してないんだぜー?」
そう、
僕に話しかけるM先輩、、、


なんて反応すれば…



N先輩「でも、ちゃんとルールは守ってましたから!」


俺の心の声「ルールって何だよ! 
ケンカにルールって!!」



N先輩「そのおかげで、殴られ慣れましたけど、ワハハハハっ(笑)」

M先輩「ワハハハハっ(笑)」



なぜだか、
僕だけ笑えない…








後から知ったことだが
このN先輩は

空手全国2位だったらしい…

道理で殴られ慣れてるわけだ。



そしてこの日
衝撃の真実が立て続けに…


N先輩は
まだ今年の4月に入ったばかりの
一年生だそうだ…


ん?
高卒…
修行一年生…


大卒の俺の3つも下やんか!!!
なんやあの貫禄…



そして、M先輩は
その1つ上…

M先輩も年齢2つ下だ…



入社が不安になった
研修1日目の夜は幕を閉じた。