中内火星さんの句集 | ここはいいところ

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「ここはいいところ」の「ここ」は私が行った場所であり、人生の一場面でもあります。
人生という旅のなかで、自分がよかったと思ったところやことを記録し、人に伝わればいいなと思います。
1か月に2~3回は新しいブログを書きたいと思います。

 中内火星さんの句集『SURRÉALISMU』(文學の森2024年)がすごいです。これでもかこれでもかと奇想を繰り出します。30句選んで紹介しようと思いましたが、越えてしまいました。

 

  いかなるものにも属さない詩がある

  幸福論というカレーのレシピ

  太股の半分は春からのもの

  浅川マキの体液という仮想空間

  この高さあれば死ねるね花吹雪

  花吹雪途方もないほどの孤独

  風呂敷をひろげると昭和が寝ていた

  一夏かけて神田の石拾う

  思った以上に寒林だった新宿

  青江三奈が生きてた頃の文化の日

  修道女のような汗をかいている

  人生の主要なところが痒い

  現代俳句協会はチューインガム

  ラフレシア股にはさんだ熱帯夜

  ときどきは中国産の汗をかく

  菫ほどの高さで考える人になる

  方針はないけど石鹸玉である

  四百九十九体までが羅漢像

  男の扱いに慣れている冷蔵庫

  言語化したときに滝は凍りつく

  記号と数字を混ぜてドアに貼る

  アンネナプキンやウーマンリブ

  八月につまづき昭和に戻る

  八月をキャンセルしたい日本人

  さくらんぼあたしらみんなちょろいから

  祭から黄泉まで立ちっぱなしなんだよ

  チャットGPTが汗をかいている

  花いばら修道院の骨密度

  神と口論する後期高齢者

  青大将いまだかつて神に会わぬ

  みほとけの放尿明るい色が好き

  凍蝶や人類は床を掃いている

 

 とくに「浅川マキ」と「みほとけ」が好きです。