硝子の窓に、色、色。
もしかしたら。
ある想いが過ぎっていた。部屋の温度は心地良い寒さ、ある程度張り詰めた空気。マスク越しに吸い込んでみても何処か水分が増されて、漂う埃が除去された(あくまでもメーカー曰く)空気が僕の肺には送り込まれるのだけれども。
泣きそうになって仕舞った。風邪の所為で鼻声になっていてよかった。昼間に抱いた想いが温かい何かに包まれる感覚がした。けれどもそれは酷く脆く、今にも破けて仕舞いそうな程に薄く感じるのは歪んだ僕の根本の醜さ。可愛く無いよね、そう想いながら強がりを口にしたんだっけ。もし、僕が彼の立場なら気の冷めた返事だけを残してさっさと電話を切って居た。
泣きそうになったのは、風邪の所為。鳴咽を飲み込んだのは、突如はい上がって来た咳を誤魔化そうとした所為。
ある一言に何でこんなに揺らぐんだろう。ある一言に何でこんなに救われるんだろう。何故その言葉を素直に受け止められないんだろう。最初から最後まで強がりを決め込んでいる。
咳が出て来た。
鼻水よりもマシだけれども、まるで今現在の天気でも話題にするかの様な人事の気分。
無理だけは、して欲しくないの。僕はきっと大丈夫。
殊更自己中心的な我が儘だから、無理をする彼の笑顔は見たくないの。大好きな笑顔じゃないと、好きになれないから。
ほら、そんな強がり。
早く元気になればいいな、って想っているだけなのにね。真っ直ぐな言葉は必ずしも何かに脚色されて原色を離れて行く。益々。
トレモロ(アンダンテ、フォルテッシモ)。
面倒臭い、の言葉を耳にした時僕は思わず凍り付いてしまった。直接僕に与えられた言葉では無かったにせよ、僕の中では一番与えてほしく無かった言葉。彼が僕を捨てるであろう時に最もな理由になると想定する言葉。風邪でぼやけていた思考が更に曇りを帯びて、霧の中を徨うみたい。そんな幻だけがやけに鮮明だったのを覚えている。
面倒臭い。
嫌いな台詞なんだ、本当は。つい張っていた気が抜けた所為か所有物を装って仕舞った。取り繕う事さえも儘ならずに調子に乗りすぎた。今更結果に悩まされる。面倒臭い女に成り下がるのだけは嫌なのに。
また、降り出し。
汗ばんだ脚の裏が気持ち悪い。久し振りに覚えた空腹感が気持ち悪い。乾燥した感触の唇が気持ち悪い。
想いを口にすることが出来ないのなら綴らなけりゃ。引き出しの中でかくれんぼしている、あわやワンカートン分頂いた煙草に逃げることも出来ない、今は。
そろそろ動かそう。
自分を、今を。
面倒臭い。
嫌いな台詞なんだ、本当は。つい張っていた気が抜けた所為か所有物を装って仕舞った。取り繕う事さえも儘ならずに調子に乗りすぎた。今更結果に悩まされる。面倒臭い女に成り下がるのだけは嫌なのに。
また、降り出し。
汗ばんだ脚の裏が気持ち悪い。久し振りに覚えた空腹感が気持ち悪い。乾燥した感触の唇が気持ち悪い。
想いを口にすることが出来ないのなら綴らなけりゃ。引き出しの中でかくれんぼしている、あわやワンカートン分頂いた煙草に逃げることも出来ない、今は。
そろそろ動かそう。
自分を、今を。