殊更、自虐的密閉空間へ。
家には3人。けれども独り。
本当は今日は帰って来て欲しく無かった。母親が居た暖色色の空間は今や密閉された空間となっている。
嫌いな訳じゃない、只単に苦手なだけ。僕の気分が低い時は尚更苦手さから物理的距離と心的距離は広がって仕舞う(僕が自ら進んで勝手に広げているだけなのだけれども)。何時もは気にならない僅かな性格上仕方の無い歪みさえも不満に拡張される。あの人は敏感な人だから、些細な僕の変化にさえも気付いて駄目出しをされて仕舞う。そして僕が堕ちるの悪循環が堂々巡りを繰り返すんだ。
僕の為に新しい暖房器具も買ってくれた、ライダースジャケットだって持って来てくれた、今宵も晩御飯を作ってくれた、オレンジジュースだって買ってきてくれた。
なのに、僕は素直に甘える事が未だに出来ない。下手くそな平静を保ち続ける事しか出来ない。只の道化でしかないよね。
虚しい。
今なら、遠くへ逝っても構わない。
サンスベリアは高揚してしまった。
11月。国試まで100日を切った。彼との蜜の様な時間を過ごせるのも数少ない。
応援しなきゃって、僅かでもいいから邪魔にならない程度に支えになりたいって思う反面、今と云う蜜を思い切り過ごそうと欲求が貪欲になって仕舞う。
だからこそ、そんな気持ちが大きすぎて空回りして仕舞うんだ。そして時折(否、此処最近ずっとかも知れない)態度がおかしくなって仕舞う。
離れる瞬間が酷く切ない。離れる寸前はきつく僕より大きな躯を抱きしめるんだ。
携帯を変えた。前のCASIOと約2年半位付き合って、初めてのSHARP。要らないデコメの装飾とか、慣れないボタン配置とか、やたらと用意周到な予測変換の割に関西弁の予測が出ないところとか、CASIOに慣れ切ってる所為で使い辛い。何処か薄っぺらなボタンの感覚の違いで奇妙な文字の羅列が生まれ、クリアで無に帰るを繰り返し、繰り返す。前の携帯と違い、本体そのものが儚い程薄いこれは折って仕舞わないかが不安になる。
今までがずっと、母親そっくりの感性の為に赤ばかりだったのだけれども。初めての黒。来年の今頃はきっと傷だらけの現在は真新しい相方は。その内僕の手に馴染んで来る事を期待しつつ。僕は未だ多少悪戦苦闘しつつコツコツとボタンを押し、画面に文章を生み出して行くのです。
昨日今日(正確に云えば一昨日の夜と昨日の夜。数時間前)は土曜の昼間に来た母親と、彼と、僕とで夕食を食べた。僕とすれば彼と時間を過ごせたのが嬉しいと云うのも有るけれども、母親が彼と僕との3人の時間を進んで過ごしてくれたのが嬉しかった。
母親は、正直彼の事が嫌いなのかと想っていた。(本当は僕が彼と付き合い始めの頃、ある過ちを犯して仕舞った事が有ったから未だに引きずって居たんだと想っていたからなのだけど)けれど、ご飯を一緒にしても嫌な顔一つせず楽しそうに自分の事を話す母親を見ていて嫌いじゃないんだと想った。母親に直接聞いてみたら、僕と彼の間に、妊娠って云う大きな問題を抱えない限り僕と彼の関係を否定はしないって。僕が彼を支えて、彼が僕を支えていてくれているだろうからって。
言えなかった事も多数有るけれども、今の年齢になったからこそ出来る話がいっぱいあった。
母親を唯の『お母さん』では無く、『一人の女性』として、『人生の先輩』として、そして僕を産んで育んでくれた『お母さん』として見る様になった。
そんな二十歳数ヶ月前。
ありがとう、お母さん。
自律神経不活性症によるレギナジウム。
開け放した窓から吹く、季節の変わり目の風に憂鬱が乗っている。寒い、と身体は知らず知らずの内に布団へと逃げ込むけれども風はカーテンを揺らした儘、放置されているんだ。可哀想にその儘なんだ。
不安定で溜息ばかりが続く近頃は、身体の細胞の1つ1つでさえ酷く重くて。この時間になっても低い位置で存在を誇張する月の深い黄色が今の自分の気持ちと重なった。この部屋には、足下に発散されない儘の溜息が蜃気楼の様にゆらゆらと揺れている。
『僕』は5通り存在している想う。
1人目は『女友達の前での僕』。
2人目は『男友達の前での僕』。
3人目は『彼の前での僕』。
4人目は『家族(祖父母、叔父叔母、お姉様を含む)の前での僕』。
5人目は『僕と向き合っているときの僕』。
これ以上『僕』は存在して居るであろうと考える。統一感の感じられない『僕』にうんざりする。本当の僕はどれですか?
答えのない疑問と疑惑が僕の中を掛け巡り、益々頭を迷わせているんです。
確かに、再び自分の中に変化を感じる。特に学校の皆と関わって居る時なんて正に。自分が楽しいと想う事に行動しがちな癖が治らない所為で辺りを全く見ていない。行動した後で後ろを振り返り、残した足跡を1つ1つ確認していく。そして見つけた綻びに憂う。
彼と居る時の自分も変わってしまった。現実快楽主義を今正に酷く後悔している程に、卒業と国家試験が近付く彼の温もりがいずれは遠くなってしまう。だからこそ今の内に捕まえて置かなくちゃ、なんて差し出せない手の代わりに掴むシャツに込める力が自然と強くなる。離れたくない、時間が迫るのが早い、と急く気持ちが先走って離れる刹那重苦しい淋しさがついつい毎回涙腺を緩めてしまうんだ。
焦って、逸る気持ちが僕の態度を重くする所為で益々彼に迷惑を掛けてしまうのに。止まらない涙と現在も緩みっぱなしの涙腺が、淋しさを和らげてくれそうにも無く。只只、毎日が虚しくて悲しい。
うそつきのくちは
またきょせいをはるの。
うそつきなえがおはただただ、
なみだをふやすだけなの。
ゆううつ。