星の檻、僕の檻。
つい数時間前までの雨も止み、雲が蔓延っていた空には真冬の星空が広がっていた。
偶然煙草を吸いに外に出た僕は、星が仕掛けた罠に落ちる。そして星空という広大な檻に独りきり閉じ込められて仕舞ったの。
雨上がりの空はとても澄んでいた。その下で唯唯呆けた様に星に見とれる僕。どれほど手をの伸ばそうが一生届かない存在に恋をして仕舞ったようだ。雨が空気中の埃を流して呼吸をする度に純粋に近い冬そのものが肺の中に流れ込んでくる感覚。幾ら指先の感覚が無くなろうとも、風邪気味な風呂上がりの身体を冷気が蝕もうとも、空から視線が離せなかった。
星に恋をした。それは一目惚れ。一夜一夜に僕は恋をする。
壊せない檻は、逆に快感に近いの。一生届かない距離でも構わない、唯唯見ているだけで構わない、瞬きをする毎に一瞬一瞬のその星空が自分の中で衰える事無く酷く美しかったんだ。
新しい日の星が僕を魅了し、僕の眼の奥に消えない様その姿を刻み付けて行った。
新しい年、これから僕は何を得て何を失うのだろう。昨年は失う物と得る物が同じ位だった。依存、嫌悪、別れ、出逢い、卒業、入学、恋人、浮気、新しい命を疑った際の喜び、憂い、快楽、不快、生きている事の絶望、生きている事の喜び、その他諸々。
彼と出逢った事は、とても大きく影響したと想う。その手に恋い焦がれて指先を絡め合う様に蜜の様な時間を過ごしたかと想えば、その手を自分から離して違う手に指を絡めた事も有った。何事も無く蜜月を過ごしていたかと想えば、彼に全てが露見し彼が事故った時には何度も何度も涙を流した。大事なその存在に慣れすぎて繋いだ指の力がふと解けかけた時も有れば、酷く依存した時も有った。
彼以外にも、依存した。時折誰も傍に居なければ良いと自ら距離を作った時も有った。
さぁ、僕は今年は何を作り出すのだろう。一秒先を切り開くのは僕、けれど僕が切り開く道は予め神様によって切り取り線が打ってあるんだ(それは決して僕には見えない様に薄く、小さく。けれどもその薄い切り取り線は僕が触れればいとも簡単に予め入れられた点線通りに切れてしまう。それを「神のみぞ知る。」と表現するのかも知れないね)。鋏?カッターナイフ?包丁?道具は特に問わない、けれども線は手で切り取ろうとすると意外に難しい。
まずは、
想いを吐露することから一頁目を始めてみようと想う。この予定は誰にも邪魔できない。
マナー、マナー、応えて。
新しい年がひたひたと近付いてくる。
ほら、僕たちはまたひとつ大人になってゆく。死と背中合わせの距離が近付いて行く。
ひたひた、ひたひた、
あたらしいぼくに。
あたらしいきみに。
あたらしいぼくたちは。
