アポトーシスと酸性プール -3ページ目

憂う夜を食すにあたり。


人込みの喧騒の中の孤独が死ぬ程嫌い。あの中に居ると憂鬱がじわじわと僕の中に染み込んで行く。あの光の中へ溶け込めない暗がりの僕、一番前の席、眠りから醒めた後、改めてあの四角くて狭い箱庭の中で人間関係の混沌さに眩暈がする。
まるで二層に分離しているドレッシングみたいね、幾ら同化させようと振り切ってみても何時しか上層と下層に再び別れて行くの。人の付き合いって所詮そんな物、僕は誰とも交わらない存在で居たい溶け込め想いつつも誰かと交わらないと怖いと想う、中途半端な僕が相変わらず嫌いです。

近頃波の激しい彼と彼女、女に騙されていると想われる彼、独りで居るのが嫌だがらこそ会話に半ば無理矢理入り込もうとする彼女、何事にも我関せずと入り込みつつも第三者で居る彼ら、静かな目で背後から見詰め続ける彼女、甲高い声で時折僕を憂鬱にさせる彼女。

交わらない水と油、その他エトセトラエトセトラで出来ている箱庭の中で僕は酸素を求め、ぱくぱくと口を動かし続けている。



彼の体温の中で眠りたいと想った。あの大きな腕の中で眠りたい、あのやや低めの体温に包まれたい、あのやや低めの体温を僕のやや高い体温で中和したい。僕を見下ろす時の、あの伏し目がちな瞳が好き。長い睫毛がパチリと音を立てんとばかりに瞬きをする度に触れ合い、黒目が僕を捕らえる刹那。あの瞳に映った僕はとても嬉しそうな顔をしてるんだ、とても幸せそうな顔をしてるんだ。
指先を、絡めて。互いの冷たい指先同士が重なり熱を持ち始める。桃色に見える(本当にみえるんだよなあ)彼の色素の薄い髪を撫でて、頬を寄せたいと唯唯想う。


5階の窓の下、写真撮影の為に階下に降りていた彼を捜していた。見付けた瞬間、嬉しくて。色素の薄い髪が酷く愛おしかった。
意識を奪われたかの様に見つめ続けていた僕は、クラスの男の子に邪魔をされて仕舞ったけれども。確かに歩く彼に恋をしていた。



盲目。
ためいき、



歌詞は余りにも小さ過ぎた。

己の小ささを知る。


そんな僕は、
どれ程高いヒールを履いても、貴方には追いつけない。
貴方はとても大きくなってしまった。僕の知らない内に、僕が唯唯七ヶ月を自己満足の月日を、過ごしていた内に。

貴方は、とても大きくて。
時折、小さな子供の振りをするの。

そんな貴方が愛おしい、恋しい。
そんな貴方に置いていかれている僕、影踏み、足踏み。
その場で、ひとり。




もっともっと、
おおきくなりたい。

いつまでもちいさなぼく、
ほしは、とおいんだ。

サイクロトロン、フィルム。

駄目だ。
苛々する。

待ってるのは慣れっこ。けどね、苛々する。もう逢いたくない。今の状態で逢ったら絶対に態度が悪くなるに違わない。

パチンコだったら論外、絶対逢わない。けれども、家庭の事情とか家族との時間であれば仕方ないのに。我慢できる筈なのにどうして苛々して仕舞うんだ。仕方ない、仕方ない、分かってる。彼が欲張りなのも分かってる。直ぐに僕のメールに否定する言葉を返してくれるだろうと思っていた。否定とも取れる返事も返って来た。けれども待つ気は失せてしまった。約束は、また今度で済ませばいい。自分のやるべき事を優先しなくちゃ。


泣くな、お願いだから泣かないで。寝不足の所為で疲れた顔に塗ったファンデーションが落ちちゃうから。彼に逢えるって想って出来る限りの化粧が溶けて仕舞うから。


お願いだから、涙を止めて。
逢えなくなるって完全に解るまで泣かないで。ちゃんと化粧は落とすつもりなんだから。中途半端な顔で逢いたくないから。


お願い。



何もかも、アレの所為。
月に一度のアレの所為。
こんなに苛々して悲しいのも、全部、全部。




はやく終わってしまえ。
早く泣き止んでしまえ。
どうしても逢いに来るって一言が欲しい。逢いたかった。否、逢いたい。



抱きしめて欲しいんだ。