ことばの物語
〖白・素ー黒・玄〗
しろーくろ
相撲で勝星(印の意)を「白星」、負星を「黒星」と
いいますが、「白黒をはっきりする」「あいつは
白だ・あいつは黒だ」などというのはこの相撲の
白黒からだそうです。
「白」の漢字源は「白骨化した頭蓋骨の形」で、
その骨の色から白を表す意味になりました。
和訓の「しろ」の語源は「著しいーはっきりとしたさ
ま」からで、これは古くは「いちしるし」と言い、この
音転「いちしろし」であります。
白川静先生の『常用字解』につぎのようなことが
書かれていました。
<偉大な指導者や打ち取った敵の首長の頭を
白骨化した髑髏を保存した。
優れた首長の頭骨には優れた呪霊(呪力)が
あると信じられていたからである。それでその
ような主長は伯とよばれた。>
「素」の字は「糸を染める時の形」。
糸を染める時、白絹の糸束の根元を縛って染
汁につけまますが、その縛ったところは染まず
もとのままの真っ白であります。
そのところを「しろ・もと」と言ったもの。
「黒」の字は、旧字は「黑」で「下の灬は火」で
上の字は「煙り出しに煤が付いたさま」で、その
煤の色から「くろ」を表す。
和訓の「くろ」の語源は「暗い・暮れる」という意
と繋がり、水底の黒い土「涅(くり)」からのようで
す。
「玄」の字は、「白」と同じく糸を染める時の白
絹の糸をねじった形ですが、こちらは黒く染まっ
た部分を表しています。
字の成り立ちは「幺=小さい糸」に「━」で、宙吊り
になった細い糸がゆらゆらとしてよく見えない情
景を表しています。
漢字源は「玄は幻(よくみえない)」なりとし、また
「懸ける」に通じ、空中に宙吊りになる→遠く懸け
離れる→遠くかすかでよく見えないというように
転化していったものであります。
白川静先生の『常用字解』に
<「周礼」という古い書物に、染汁に三度漬けると
うす赤、七度漬けると黒の色になるとあり、赤黒
い色の感覚が理想化されて幽玄となり、玄は「奥
深い・ふかい・しずか」の意味となる>とありまし
た。
※「黒の色の例」
書の黒墨は大きく二つあります。
松煙製の墨を薄めていくと青味を帯びた色に
なります。これを松煙墨(青墨)といいます。
もう一つは菜種油の油煙製のものは褐色に
なります。これを油煙墨(茶墨)といます。
ともに水墨画に用いられます。
〖銀杏〗
いちょう
「いちょう」の語源は「銀杏」の中国音に和語の似
た和語音を当てたものであります。
(今で言うならカタカナ英語のようなものかな?)
世界最古の原生樹であるそうです。雌雄異株で、
種を実らすのは雌株のほうであります。
街路樹に銀杏が用いられるのは、火災に強い
ため、防火樹として用いられたようです。
西本願寺には樹齢四百年の大銀杏があり、昔
本願寺が火災に遭った時、この銀杏から水が
吹き出し火を消したたという伝説があります。
これからこの大銀杏は「水吹き銀杏」と呼ばれて
いるそうです。銀杏は長寿木で、実際樹齢七百年
という銀杏を古い寺の境内で見たことがあります。
その木はところどころ牛の乳のような瘤が何か所
にも垂れ下がっていました。
本来街路樹には、雌株のギンナンが悪臭を放ち落
ち、また、た実が道路を汚くするため雄株が用いら
れいていました。
[銀杏の漢字]
銀杏・・・実の中の種の殻が銀色を帯びた白い色
から。
公孫樹・・・「公」は「祖父」の意で、植えてから孫の
代に実をつけると言われるところから。
鴨脚樹・・・葉の形が鴨の脚に似ているところから。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経文庫