ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖人生意気に感ず〗
人間は相手の心意気に感激して行動するもので、
名誉や金銭などの為にするのではない。
これは唐の高祖(李淵)、太宗(李世民)の二代に仕
えた諌臣・魏徴の「述懐」という詩からで、自分を厚
遇してくれた皇帝の為に敵地に乗り込もうという気
概を宣べたものであります。
[ 述 懐 ]
中原にまた鹿を追う
また天下取りの戦いが始まった
筆を投じて戎軒(じゅうけん)を事とす
文筆を捨てて戦いの中に身を投じる
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希布に二諾なく
漢の希布は一度承諾したことは必ず実行した
侯嬴(こうえい)は一言を重んず
侯嬴は約束を守って自ら命を絶った
人生意気に感ず
人は相手の心映えに感じで行動するものだ
功名誰が復(ま)た論ぜん
功績や名誉など問題ではない
【脚注】
・諌臣(かんしん)
忖度なくダイレクトに天子の誤りを諫める
臣下ということで、魏徴はその性格を認められ
太宗から諌義大夫の役を賜ります。
・述懐(じゅつかい)
思いを宣べる
・中原(ちゅうげん)
黄河中流域をいい、天下を象徴。
「中原を征する者は天下を征す」と言われて
きました。
・逐鹿(ちくろく)
鹿は帝位を表し、天下を争うことを言います。
・戎軒(じゅうけん)
兵車。戦争の意。
≪仏教語≫
〖生者必滅〗
しょうじゃひつめつ
命あるものは必ず死んで滅びていくということ。
『平家物語ー巻の十』に次のように出てきます。
<生者必滅、会者定離はうき世の習いにて候なり>
生者必滅は『大般涅槃経ーだいはつねはんきょう』
にある「一切諸世間、生者皆死 寿命雖無量
要必当有尽」からであります。
(如何なる世にあっても生あるものはみな死する
寿命は本来無量であるが、現象界では必ず尽きる)
会者定離は会う者はきっと離れる定めにあると
いうことであります。
会うは別れの始めなりですね、
『平家物語』の冒頭は
<祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必滅の理をあらわす
おごれる人も久しからず 唯春の世の夢の如し
たけき者もついにはほろびぬ
偏に風り前の塵の如し>
【脚注】
・祇園精舎
中インドのコーサラ国の首都・舎衛城の南にあ
る釈迦とその僧団の僧房で、釈迦の強化活動
の拠点の一つの僧院。
・諸行無常
仏教の根本主張である三法印ー諸行無常・
諸法無我・涅槃寂浄ーで、世の中の一切の造ら
れたものは、常に変化し消滅して永久不変なも
のないということ。
・沙羅双樹
二本並んだ沙羅の木で、この木の下で釈迦は
入滅します。涅槃の象徴とされます。
釈迦は八十歳で入滅しますが、その時、四隅に
植えられた沙羅双樹の木の一本ずつが枯れて
白くなったといいます。
いずれにしても、仏教の無常観を表すものですね。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経の文庫