ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖伯夷・叔斉〗
はくい・しゅくせい
伯夷・叔斉は古代中国の殷末期の孤竹国の公子
の兄弟であります。
儒教では聖人とされています。
※中国で長男を伯、次男を仲、三男を叔、季を末っ子
と表します。
(→伯仲する・父母の兄は伯父・父母の弟は叔父)
<父親が弟の叔斉に位を譲ことを伝えると、叔斉は
兄の伯夷をさしおいて自分が譲位をうけることは、
道理に反するとして拒みます。すると、父の遺言に
背かせるわけにはいかないとして、伯夷は國を捨
て他国へ向います。
叔斉はそれを知ると、兄の後を追って国を出ました。
兄弟は賢人として名の知れる周国の西伯昌(文王)
の元へ向いますが、周に到着したころには西白昌
亡くなっていて、息子の姫発(武王)が周国を治め、
主君の殷の紂王の討伐に向かっていました。
その途上に兄弟は飛び出して、武王を諫めます。
「父上の喪中に戦いをするのは孝といえますか。
また、主である紂王を打つのが仁と言えましょう
か」と。・・・・・・・・
・・・・・・・
※殷の紂王は「酒池肉林」でしられる暴君であります。
やがて、諸侯であった周は印を滅ぼし、新王朝「周」
建てます。
そうすると、伯夷・ 叔斉は周で生きるのを恥として、
首陽山に隠棲し、蕨(わらび)や薇(ぜんまい)を食べて
生きていたが、遂に餓死してしましました。>
彼らの残した「詩」か『采薇の歌』であります。
西山に登り薇を采る
暴を以って暴に易(か その非を知らぬ
神農虞、夏忽焉(禹)として没す
于嗟徂(ああゆ)かん 命の衰えたるか
(外交は非戦闘の参謀であらねばなりませんね。)
≪仏教語≫
〖悪因悪果〗
あくいんあっか
悪いことをすれば悪いことが起きる。
※「因=原因」、「果=結果」。
この対は善因善果。
これに異議あり。そう司馬遷は言っています、
「天道は是か非か」と。
天は善人には福をもたらし、悪人には災いをもたらす
というが、善人が苦しんでいるという現実を見ると、
天が本当に正しいのか、疑問であるということですね。
<司馬遷の『史記ー伯夷列伝』から。
或る人いわく「天道に親なし。常に善人に与(くみ)す
と。
伯夷・叔斉の若(ごと)きは善人というべき者か非か」
仁を積み行い潔(きよき)こと此くの如くにして、
餓死せり・・・。
天の善人に報施すること、其れ何如ぞや。
盗蹠(とうせき)は日に不辜を殺し、人の肉を肝(かん)
にし、暴戻恣睢(ぼうれいしき)、党を聚(あつ)むること
数千人。天下に横行するも、ついに寿を以って終
わる。
是なんの徳にしたがうや・・・・>
※肝にし・・・刺身にして食う ・不辜・・・罪のない人
暴戻恣睢・・・乱暴で勝手な振る舞い。
この不条理を仏教は、現世の悪い事柄は前世に
悪いことをした報いの現れであるとて解決しようとし
ました。(そうするしかなかったんですよね。)
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ