ことばの物語
≪ゆめうつつー夢・現≫
夢現(ゆめうつつ)
本来は、夢が現実かで、夢と現実の意味でありました。
それが夢なのか現実なのか分けることができないとい
う意味になりました。
【夢】ーゆめ・ム
和訓の「ゆめ」は「寝目=いめ」からとありました。
字の成り立ちは、分かれています。
<第一の字書>
「莧」と「夕」とを組み合わせた字。「莧=カン」は「眉を
太く描いた巫女が坐っている形」で「夕」は「夜」。
大昔、夢は呪術を行う巫女が操作する霊の作用に
よって、夜の睡眠中にあらわれるものとされていま
した。
<第二の字書>
もとの字は「宀=おおう」に「爿=寝台」に「その中に
夢=暗い」で、人が屋内の寝台に寝て、暗い中で見
るもの、ゆめの意味。
<第三の字書>
「上半分の字は羊の赤くただれた目」でよく見えな
いこと。それに、
「冖=おおい」と「夕=つき」を合わせた字で、夜の闇
に覆われてものが見えないこと。のち目をふさいで
眠り現実の世界を見ていない状態、ゆめの意。
夢違え(ゆめちがえ)
悪夢を見たとき、それが現実にならないようまじない
をすること。
夢違観音
悪い夢を見たとき、この観音様にお願いすると、夢を
取替えてくれ、また良い夢正夢にしいくれるという。
【現】ーあらわれる・あらわす・ゲン
字の成り立ちは「王=玉」に「見」で、玉の光があら
われること。
白川先生の字書によると、
<偏の「王」は「霊力を持つ玉」。玉に糸飾りをつ
けて神霊の憑どころとし、これを拝んでいる拝ん
でいる姿が「顕」。そこに神霊が顕れるのである。
「現」はこの「顕」に代わる字として使われたので
あろう。>
和訓の「うつつ」の語源は「顕=うつし」からで、現に
存在することをあらわす。
仏は常にいませども 現(うつつ)ならぬぞあはれなる
人の音せぬ暁に ほのかに夢に見えた給ふ
(梁塵秘抄)
現人=うつせみ
「現臣=うつしおみ」の略「うつそみ」から転じたもので、
この世に現存する人間のこと。「空蝉」は当て字で、
空蝉そのものは「蝉の脱け殻」のことで、魂が抜けた
虚脱状態の身にたとえられます。
荘周は胡蝶になった夢を見た。
自分が夢の中で胡蝶になったのか、夢の中で胡蝶が
自分になったのかと。(荘子)
胡蝶の夢
現実と夢の世界の区別がつかないことのたとえ。
また、人生のはかなさのたとえ。
胡蝶の夢の百年目
晩年に人生を振り返って、夢であったと思うことをい
います。
今日一日幸運でありますように
2017.7掲載再考
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
字訓:白川静著(平凡社)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新佛教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編