ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖刎頸之交〗
ふんけいのまじわり
極めて密接な交わりの喩で、その友のためには己
が首を刎ねられても悔いがないということであります。
<司馬遷の『史記』にあるお話しから。
藺相如(りんそうじょ)は秦国との外交で「和氏の璧」
を守り、趙国の王に仕える宦官の食客から、大臣
格に昇格しました。
それを歴戦の名将・廉頗(れんぱ)は、口先だけで出
世した藺相如に不満を抱き、敵対する言動を取り
ます。
これにたいし、藺相如は病と称して廉頗に会わな
いように外出を控えました。その主人の気弱な態度
に、部下が辞職を申し出ます。
藺相如は「今私と廉頗が争うことになると秦の思う
壺で、国を危ぶくする。それて廉頗の行動に目をつ
ぶっているのだ」と諭します。
この話が廉頗の耳に入り、廉頗は自分の愚かさに
大いに恥じ入り、藺相如を尋ねて、土下座して謝り
ました。これ以来、二人は刎頸の交わりを結びま
す。>
頸と首はほぼ同じ意味で使われますが、あえて区別
すると「頸」は医学や生物学上の分野で使われ、人
間や動物の部位を指します。
「首」は日常生活や文学などで使われ、人間の首や
物体の一番上部を指すことが多いようです。
「頸」の字の成り立ちは、「巠=まっすぐで強い」に
「頁=あたま」で、頭に連なるまっすぐで強い部分。
「首」は「目」に「頭の毛」の象形で、目は顔を表し、
その上に頭髪をつけたものであります。
ちなみに「県」は「頭を逆さにして木に吊るした形」
で、これが行政区の「県=けん」として用いられたた
めに「懸=かける」という字が作られ、原義を明らか
にしました。もともと「県」は「かける」という意味であ
りました。
古代においては、異民族の首を携えてその呪力の
霊力で邪気を払い、進行しました。その進行を「導」
といい、そうしてし祓い清められてできたところが
「道」であります。
≪仏教語≫
〖七仏通偈〗
しちぶつつうかいげ
釈迦以前の六仏と釈迦を含む七仏が共通して説
いた教えのこと。
○諸悪莫作ーしょあくまくさ
諸々の悪をなすこと莫れ
○衆善奉行ーしゅうぜんぶぎょう
ものもろのぜんを行う
○自浄其意ーじじょうごい
自ら其の意を浄くす
○是諸仏教ーぜしょぶっきょう
これがもろもろの仏の教えなり
<逸話>
中国中唐の詩人・白居易(字・白楽天)は禅を好み
鳥窠(ちょうす)和尚に仏教の神髄をといます。する
と和尚は「諸悪莫作、衆善奉行」と答えます。
白居易はあきれて「そんなことは三歳の幼児でも知っ
ているではないか」と言うと、和尚は「三歳の幼児で
も知っているであろうが、八十歳の老人でも行うこ
とは難しい」と答えました。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経の文庫