ことばの物語
≪むしー虫・蟲≫
獅子身中の虫
獅子の胎内に寄生して、獅子を死に至らしめる虫。
仏教徒でありながら、仏教に害をなす者のたとえ。
といっても、果たしてどれが本物の仏教ですかね?
諸宗派はそれぞれか他宗を獅子身中の虫と見て
いるのでは。
ーー獅子を食うと続きます。
人には腹に虫がいて心を左右するとな。
この虫、好き嫌いが激しく、理由などありゃしない。
とにかく虫が好かんのであります。
虫唾(むしず)が走る、逆流する胃酸であります。
【虫】は頭がふくらんだヘビの象形で、蝮(まむし)
のことであります。
蝮の字の成り立ちは、腹のふくれたヘビということ。
また、虫は小型の動物を指すこともあり、魚類は
「鱗虫」、亀の類は「甲虫」、鳥類は「羽虫」、獣は
「毛虫」といったようで、今日とは様相がまるっきり
違っていますね。
【蟲】は小さなムシが数多く集まったことを示し、
蛆虫のようなものを指します。
蛆の字の成り立ちは「虫」に「且=かさなる」で、集
まって重なっている虫なんでしょうね。
蠱ーコ
怪しい魅力で人を惑わすという意味の蠱惑で使わ
れます。
「蟲」に「皿」で、皿に盛った食物につく虫の意味
ですが、これが迷わし乱す意味に使分けるのは、
呪術と関係がありました。
その呪術は蠱毒(こどく)、蠱道(こどう)、巫蠱(ふこ)
と言われます。
<ヘビ、ムカデ、カエルなどを同じ容器のなかで育
て、互いに争い残ったものを神霊として、その虫
から採った毒を飲食物に入れて相手を殺すとい
う。>
西洋の黒魔術みたいですね。
蠱媚(=媚・こび)
なまめかしく美しい様子。
蠢(うごめく・シュン)
春は虫の生気が地中でうごめいていています。
蠢動(しゅんどう)というと、無知なものが騒ぎ立て
るさま。
螽=蝗(いなご)
冬は蓄えの時期でありますね。幼虫を多く巣の中
に蓄えて、異常発生する虫ということであります。
虹(にじ・コウ)
昔の人は長くて巨大な虫が「江」に水を飲みに来
た姿と思ったようでありますとの話がありましたが、
字の成り立ちは「虫」に「工=つらぬく」で天空を貫く
ヘビという意味というのがあります。
江に水を飲みに来ている長虫の方がことばの物
語としては面白いですね。
古くは、虹は天に棲む竜形の獣と考えられていて、
色が鮮やかな方が虹で雄、淡い色の方が蜺(霓
:げい)で雌であると。
オスとメス
牛のオスから作られた字が「牡」、メスから作ら
れ字が「牝」。
隹(ことり)のオスから作られた字が「雄」、メスか
ら作られた字が「雌」。
鳳凰
おおとりですが、「鳳」がオスで「凰」がメス。
麒麟
「麒」がオスで、「麟」がメス。
今日一日幸運でありますように
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
字訓:白川静著(平凡社)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新佛教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編