ことばの物語
≪ひよみのとり・さけのとりー酉≫
「ひよみのとり」というのは、暦の十二支の十番目の「と
り」のことで、「さけのとり」というのは、「酉=酒つぼの形」、
つまり酒の字を当てたところから。なぜ酒なのか?
それは、十二支の十番目は方向では西になり、動物で
は鶏が当てられます。これから「とり」となり、それが「酉」
となるのは、酒を抽出するのが十月であるところからと。
医=醫=いやす・イ
旧字は醫で、「酉」がついています。これには意味があ
り、医療の歴史がありました。この字はさらに古くは
「毉」で「巫=みこ」がついていました。つまり、医療は
お祓いでありました。
字を分解すると
「匚(かくされた場所)+矢(悪霊払いの矢)+殳(う
つ)+巫」。
かけ声をかけながら矢をうち、病気をもたらす悪霊
を祓うという意味であります。
のちに、酒で傷口を清めたり、酒を興奮剤として
使ったりしたので巫から酒に入れ替わったもので
あります。(参考:常用字解)
ちなみに、薮医は「野巫=やふ」という説があり、これ
はお祓いでは病は治らないっていうことでしょうね。
主説は「野夫(やふ)」田舎医者で、藪は田舎となるよ
うであります。
酒ーさけ・シュ
夏王朝の禹(う)の治世、儀狄(ぎてき)という者が酒を
造り禹帝に献上した。禹帝は之を飲んでうまいと思っ
たが、「後世必ず酒をもって国を亡ぼす者があろう」と、
儀狄をとおざけたと。
国とわ言わずとも、個人としては大いにあり得る話で
ありますね。
酷ーひどい・むごい・コク
アルコール度の強い酒のことで、ひどい、むごいの
意味。
「告」は「祖霊などにささげつげる犠牲の牛」のことで
あります。
生きた動物を生け犠牲に捧げるのがいかにむごいこ
とか気づき始めたころの字ではないでしょうかね。
酩ーよう・メイ
「酉」に「名=冥に通じ、目がくらむ」で、目がくらむほど
酒にようの意味。
酔ーよう・スイ
「卆=まったし」で、酒の量をまっとうする。
そして、酩の症状が現れるんですね。
醒ーさめる・セイ
「酉」に「星=すみきったほし」で、酒の酔いずさめて気
分がすっきりする。
衆人皆酔い我独り醒めたり
是を以て放たれたり・・・・
漁夫曰く
「聖人は物に凝滞せずして能(よ)く推移する。世人
皆濁らば、何 ぞ其の波を提げざる。」
下戸の私は
皆酔い我独り醒めたり。是を以て宴を放たれりで
ありました。
2017.9掲載再考
今日一日幸運でありますように
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
字訓:白川静著(平凡社)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新佛教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編