たゆたううた -11ページ目

画家の話

そのとき私は
空の色が見えなくて
下ばかり向いていたんです

自然のままでありながら
見たことのない表現で
私の心をとらえて離さないものを
私はずっとあの色を求めていたのです
あの色をこのカンバスに写しとれたら
私は筆を折ってもいいと
心の底から望んだのです

それから何度も繰り返し
それから幾度も練り上げて
それから幾重も色を重ねて
迷って悩んで苦しくて
見つめ続けて描き続けました

できあがったのは
見たこともない色
あの日憧れたものとは
似ても似つかないけれど
これが
今の私の到達点

はじめに現れたのは失望で
しかしそれを憎めない気持ちにも
同時に気づいて
そしてふと空を見上げると
燃えるような
夕焼け色が降りそそいでおりました

東の濃紺から
西の紅まで
あの日見えなかった色が
目の前に現れては消え
一瞬たりともその場に
同じ色が留まることはないのです

私はじっとそれを見つめていました
暗くなるまでずっとそれを見つめていました

胸がドキドキして
映画を見ているような刺激的な時間でした

見ることすら許されなかった
すてきな色の数々が
心に刻まれていくのがわかりました

明かりをつけて
もう一度完成した作品を見つめ直すと
重ねた色の中に
あの空のかけらを見つけました
私の憧れのかけらです

足りない色を補うために
私はまた新しいカンバスを張ります
もう一度重ねるために
練り上げるために

それは終わるためではなく
また始めるため
真っ白いカンバスに
私の理想を掲げるために

HERO

目の前には満月
後ろには影
手の中の鏡をかざして
冒険の合図

商店街を駆け抜け
校庭を横切り
空き地を抜け
集合場所は博物館の前

たどり着くまで
しゃべらないのが
このチームのルール

今日の任務
<あの朝顔を咲かせること>
夜のカーテンが開いた直後
決行される極秘任務

目で頷いて確認する
不可能なんて一つもない
それがこのチームのポリシー

月明かりに身を晒し
チームを信じ
自分を信じ
必要なことを
必要なだけ

短い夜を最大限に動き
逸る気持ちを抑え
得られるものは
達成感と誰かの笑顔
他に何かが必要かい

ほら、夜が明ける
今日笑顔がきっと咲く
他に何か必要かい

不可能なんて一つもない
願えば叶うかもしれない
そんな勇気にこたえるよ

姿は明かせないけれど
泣きたくなったら助けを呼んで
冒険の合図をするよ
共に行こうか
満月の夜に

水着は何色にしようかな

夏が好きだから
というわけではないけど

夏に向かう空気に
ソワソワ
フワフワ
している

街ごと
そんな空気に包まれていて

いますれ違ったのは
ピンク色のカサ

さっき通り過ぎたのは
群青のプールバッグ

去年の今頃
喫茶店で話したね

すきな人と
初めて手をつないだって

カサに隠れて
内緒話をしたんだって

今年もあなたの好きな
季節が来るよ

今年も一緒に
プールに行こう

今年はピンクの
カサも買おう

来る夏を
迎え打つのだ

あなたの口調を真似てみた
フワフワ
ドキドキ
したんだもの