先日、神戸から淡路島を経て高松、瀬戸大橋を渡り岡山、そして倉敷で一泊して新幹線で姫路に寄って帰還するという行程でかわいい大学生の子とぐるり巡ってきました!という記事の第5弾です。


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現在、瀬戸内地域はあらたな観光ルート「西のゴールデンルート」の定着に向けて動き出しています。

羽田空港か成田空港に降り立ち、東京〜箱根〜名古屋(というか伊勢や飛騨地方)〜京都〜大阪と巡り関西空港から帰る(その逆パターンも)という「ゴールデンルート」に相対するものとして着想されていて、関係されるみなさんもご高覧いただいていると知りつつ、あえて誤解を恐れずに申しますと、ゴールデンルートから"あぶれた"地域としても差し支えないことでしょう。

これは「天神ビッグバン」など数多のキャッチーなコピーを世に送り出した福岡市の高島宗一郎市長の発案で、今回私たちが足を運んだ神戸市・岡山県・岡山市・高松市のほか、広島県・松山市・下関市など瀬戸内地域、および九州の自治体計40、加えて100を超える民間企業などがメンバーとして加わって、ことし5月に福岡市で設立総会が開かれています。

観光庁によると、大阪以東の「ゴールデンルート」における訪日外国人の観光シェアは8割に上っていて、神戸以西に足を伸ばす外国人はわずか5%ほどなのだとか。「西のゴールデンルート」参加自治体は、特に購買額が大きい欧米からの観光客を多く招き入れたいと意気込んでいるようであります。



この西のゴールデンルートにおける「東」の玄関口として考えられているのが、神戸市であります。

連載記事の冒頭。

神戸から淡路島を経て高松、瀬戸大橋を渡り岡山、そして倉敷で一泊して新幹線で姫路に寄って帰還するという行程でかわいい大学生の子とぐるり巡ってきたと記してまいりましたが、そのなかで唯一記してこなかった今回の旅の出発地・神戸について最後にやりたいと思います。


阪神神戸三宮駅の躍進。



神戸市内におけるトラフィックで近年大きな変化を遂げているのが阪神電車。

今やわが国最大の大型商業施設集積エリアとなった大阪のキタエリア(大阪梅田駅)のみならず、平成10年(1998年)には阪神梅田〜山陽姫路間に直通特急が設定されたことで、須磨・明石・姫路方面への特急が1時間に4本設定されたのち、平成21年(2009年)には阪神なんば線(尼崎駅〜大阪難波駅)が開通すると同時に近鉄奈良線と直通、大阪のミナミエリア(大阪難波駅・大阪上本町駅)はもとより生駒・奈良市内方面、また大阪難波駅から奈良県中部地域を経て伊勢志摩方面や、津・四日市・名古屋方面への特急にも接続しています。



阪神神戸三宮駅は6年の歳月をかけて平成25年(2013年)に駅の拡張を含む大規模なリニューアルが完了しました。

手前が改札で奥が地下街「さんちか」の2番街のエントランスがあります。下町情緒を売りにしていた阪神電車の駅とは思えぬほどに、コンコースと街区が完全に一体化された品の良い空間に仕上がりました。


リニューアルがつづく商業施設。


その「さんちか」は目下リニューアル中。

ことし(令和6年)2月に2番街がリニューアルし県内初出店5店を含む12店がオープン、翌令和7年の春には1番街のリニューアルおよび地下鉄西神・山手線の三宮駅との連絡通路の開通が控えます。



阪神神戸三宮駅に隣接して建つのが三宮最大の商業施設・神戸阪急。
ここももとは「そごう神戸店」として営業していたものを、阪急百貨店が設立した持株会社・H2Oリテイリングが店舗資産を買収し令和元年(2019年)の10月に阪急にブランドチェンジを果たし、100億円弱の投資をおこない、ことし全館リモデルを果たしています。


三宮再開発の火蓋。



同じく阪急阪神グループでも阪急神戸三宮駅は震災で解体を余儀なくされた建物敷地に建てられた仮設の駅ビルを撤去、令和3年(2021年)に「神戸三宮阪急ビル」を竣工させました。
地上29階、建物の高さは121mで、ミナト神戸の景観を一望のうちに収めます。


地上フロアには阪急神戸三宮駅の高架下を活用したあらたなグルメゾーン「EKIZO神戸三宮」が誕生。

これに併せて神戸市ではサンキタ通りを歩行者優先に改造、既存の繁華街との往来を活発化したことでさらなる活気を呼んでいます。



市役所では大型再開発が。


市役所周辺では大型再開発がスタートしています。

市役所1号館(左の高層ビル)に隣接した東遊園地がリニューアルしたことに加えて、市役所2号館跡地には五つ星のラグジュアリーホテル・オフィス・商業施設からなる複合ビルが令和11年(2029年)の開業に向け工事が進められています。




先の画像とほぼ同じ角度で描かれた新ビルの最新イメージパースです。

地上28階、高さは140mの高層ビルで、ラグジュアリーホテルのロビーは神戸港を望む最上階に設けられる予定です。


シンボリックな新駅ビル。

JR三ノ宮駅も開発が進みます。

三宮交差点に面して地上30階、高さ155mの高層ビルが生まれます。





交差点に面している場所はこれまでタクシーロータリーが設けられていましたが、それは建物東側(ミント神戸との間)に移し、JR三ノ宮駅中央口と三宮交差点を斜めに結ぶ新動線ができる予定。

このイメージには描かれていませんが、三宮交差点付近の車道(南北…フラワーロード、東西…中央幹線)を削り歩行者空間に充てる「三宮クロススクエア」構想もありますので、この交差点の横断歩道をスクランブル化して三宮センター街方面とダイレクトで繋がれば、三宮全体の商業空間としての魅力は増幅すると思います。


三ノ宮駅東地区の大型開発。


旧中央区役所・再開発ビル「サンパル」などの跡地を集約して開発が進められているのが「神戸三宮雲井通5丁目地区第一種市街地再開発事業」。

ホテル・オフィス・商業施設のほか、国交省が整備する関西最大の集約型公共交通ターミナル(バスタ新宿の神戸版)、神戸市の責任で1800席ほどの大ホールと「知と情報のゲートウェイ」として整備する大規模な図書館も開設されます。

こちらは前掲2例よりひとあし早い令和9年度(2027年度)の開業を目指して工事が進められています。

また、先日のリリースではアシックスの本社が令和10年(2028年)1月をメドにポートアイランドから当ビルの11〜14階に移転するリリースを発表しています。


神戸空港の国際化が開発を後押し。


三宮が大きく変わろうとしている、そのきっかけはまさに現在進行中のビックプロジェクトが完了する令和12年(2030年)に神戸空港に国際定期便が就航することが決まっており、これがマザーシティである三宮の開発にかなり大きな追い風となっている現状があります。
その前哨となるのがチャーター便に限り国際化が実現する来年(令和7年)で、神戸市ではこれを機に海外から富裕層を迎えるべく、空港担当局など関係部局の動きが活発化しています。


​生田町から北野、新神戸へ。

阪神神戸三宮駅に辿り着いた私たち一行は地元・神戸の上島珈琲店でブレイクしたあと、三宮をあとにして山側に歩きます。



フロインドリーブ本店です。

もとは神戸ユニオン教会として昭和4年(1929年)に建てられたもので、平成7年の阪神・淡路大震災で大きな被害を受けたのち、同社が買い取りリノベーションを施したうえでここに本店を移転しました。



内外装のデザインはウィリアム・メレル・ヴォーリズ。関西学院大学(上ヶ原キャンパス)や大丸心斎橋店、また長く居住した近江八幡にも氏がデザインした多くの建造物が残っています。



同店を創業したドイツ人パン職人のハインリヒ・フロインドリーブさん(1884-1955)は昭和52年(1977年)の秋からオンエア開始となった朝の連続テレビ小説「風見鶏」のモデルとなったことで脚光を浴び、人気店になりました。併せて神戸を代表する観光スポットとなったのが北野異人館街。北野坂のまんなかに建つ「風見鶏」そのものが神戸を代表するモチーフとなりました。ハインリヒさんが住んだ邸宅は神戸市により「北野物語館」として解放され、館内は神戸市と姉妹都市提携を結んでいる米・シアトル発祥の〈スターバックスコーヒー〉がコンセプトストアとして出店、連日人気を博しています。


ハインリヒさんの邸宅であった「北野物語館」。

インテリアも素敵で連日人気のスタバ。


フロインドリーブ本店から歩くことおよそ10分。



フラワーロードの山側の終端に建てられている白亜の高層ビル。

神戸から流通革命を起こしたダイエーによって昭和63年(1988年)に「新神戸オリエンタルシティ」として開業した、今も昔も変わらない新神戸のシンボルです。

現在では「ANAクラウンプラザ神戸」と商業ゾーン「コトノハコ神戸」が核として入ります。



ここの商業ゾーン。もとは「眠らない迷宮の街オーパ」として神戸らしい飲食・物販施設が多く入る都市型SC「新神戸オリエンタルパークアベニュー」、通称新神戸OPAでした。

さまざまな悪条件が重なり、空き区画が目立つ「明るい廃墟」状態で、ご覧のような閑散とした雰囲気になっています。


「オーパ」時代の名残がエレベーターホールの大理石に刻まれていました。




新幹線新神戸駅と直結する3階に兵庫県が出店する「兵庫県おみあげ発掘屋」。

このほかにも「神戸ビーフ館」も出店していますが、建物への波及がみられるほどの賑わいはありません。



新幹線新神戸駅は東京・名古屋〜広島・博多を結ぶ「のぞみ」号、新大阪〜博多、さらに熊本・鹿児島中央までを結ぶ「みずほ」号、「さくら」号を含んだ全列車が停車する神戸の陸の玄関口です。ただ、在来線の駅が隣接していないことや再開発が進まなかったこともあり、先の「コトノハコ神戸」を含め駅周辺は非常に閑散としています。

神戸市では新神戸駅をエントランスに見立てたリニューアルを施すことで注目を集める取組をスタートさせようとしています。


新神戸駅の山側には清流が流れ、川遊びの光景も。

「のぞみ」が停まる駅とは思えぬ憩いの場所。


私たち一行はここ新神戸からバスに乗って高松に向かいました。途中停車停留所の三宮や高速舞子(垂水区)からは多くの乗車がありましたが新神戸駅からは私たち以外の乗客はいませんでした。おそらく首都圏・中京圏から高松までは岡山のりかえの快速マリンライナーが早いとは思いますが、途中の降車バス停の利用者(鳴門から高松道の各バス停)の取り込みも厳しそう。瀬戸内回遊のハブとなりうる新神戸駅の活性化は至上命題であります。


「かわいい大学生」の衝撃の一言。



私は神戸の出身であることに強い誇りを持って生きてきましたし、自分自身にとって、この神戸を凌ぐまちは皆無であるとまで言い切ります。

これはなにも私だけではなく、神戸出身者のほとんどが深い神戸愛に満ち溢れています。

それは単に往年の「ハイカラ」への回顧にとどまらず、平成7年1月17日に発災した阪神・淡路大震災(阪神大震災)を経験した、あるいは身近に接したことが、神戸人の絆を深めたのではないかと、私は思います。

本当に神戸は素敵な場所だし、素敵な人が集まるまちであることに疑いの余地はない。

しかしながら、外から見られる神戸と、われわれが抱く神戸で、著しい乖離があることは、現実として絶対に目を背けてはなるまい。



「かわいい大学生」は神戸について、こうことばを発しました。



神戸が大阪に勝てるものって、なにかありますか?



正直に申します。

これを耳にしたとき、一瞬、血の気が引く思いをいたしました。

現状の神戸の姿を、もっとも端的に言い表したものではないのか。


悔しいと思うならば、神戸を変えたいと思うならば、神戸人がリアルな神戸を見つめ、マーケティング戦略を地道に整えて、世界に勝負をかけること。

肥大化する大阪・梅田の商圏に対抗することは厳しさを極めつつありますが、しっかり商勢を東に延ばし、大阪から顧客を引き剥がす取組を絶対に怠らないこと。

そして、今般の「西のゴールデンルート」の取組のように、地勢的あるいは文化的に繋がりのある都市との連携を深め、相互交流をさかんにすること、さらには神戸がみずからアライアンスを先導することで都市としてのプレゼンスを高めていくこと。



もう1度申します。



神戸が大阪に勝てるものって、なにかありますか?



神戸が地方都市のひとつと考えて、それなりのアクションをやってればいいや、と思っている限りは、ここに対して明確なアンサーは出せないままでしょう。


神戸が瀬戸内の玄関として鮮やかに、そして華やかに輝くために、微力を尽くしてまいりたい。



▶︎次回の記事は9/6(金)に公開します。



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