オーケー創業者である飯田勧さんが2日、肺炎のため96歳で亡くなられたことが同社の4日付リリースで公表されています。


関西スーパーの創業者、北野祐次さんからスーパー経営のノウハウを学び、そこに同社独自のノウハウを加えて売上5000億円、グループ従業員数12000人の大企業へと育て上げました。


日本版EDLPの完成へ。

この「独自のノウハウ」のひとつが、米ウォルマートに倣った日本版EDLPの完成にあります。毎日安いということで上代への信用度が増すとともに、チラシやテレビCMなどで特売の告知をおこなう必要がなく、そのぶん価格戦略に反映されやすいというメリットがありますが、チラシ特売が定着したわが国の消費者にEDLPを訴求するのはとてもハードルが高いものといえました。事実、ダイエーの中内㓛さんでさえもEDLPを目指したものの頓挫した経緯があります。当時の流通業の旗手すらできなかったことを、オーケーは成し遂げるに至ったのです。


なぜそれが成功したのか、明確な文献は見つけきれませんでしたが、やはり根底にあるのは関西スーパーから学んだ、生鮮3品の品質管理能力と、インストアキッチンによる惣菜の充実にあったのだろうと思います。物価を下げることこそ消費者の豊かさに繋がるとだけ信じきった中内さんに較べて、クオリティを徹底して磨き上げたうえでしっかり価格競争力も持たせるという飯田さんの思考は、逆説で申せば消費者の支持を得られないはずはありません。実際にオーケーの生鮮と惣菜はクオリティが高く、また店舗環境も安さを全面に打ち出したものではなく、誰にも好感を持たれる環境を保っています。


オーケーの旗艦店・オーケーみなとみらいの店頭。

天井も高く、清潔で明るい店頭空間が保たれている。

(出典:毎日新聞)


あえて「売らない」戦略!?

もうひとつ、オーケーらしい特徴は「オネスト(正直)カード」(原文ママ)と呼ばれるもの。POPとして店内に掲示されているのですが、「品質が悪い」「普段より高い」などの商品情報、また値下げする直前の商品の告知なども含めて、売るうえにおいてのマイナス情報を提供しているのです。



これは飯田さんが発案してはじめたといわれていて、どこまでも消費者の見方をしたいという思いが詰まった取組であるといえましょう。(公財)日本生産性本部が毎年実施するJCSI(日本版顧客満足度指数)において昨年度、スーパー業態で1位を獲得、これで13年連続という偉業を成し遂げています。ただ安いだけでなく、品質管理を徹底していること、そして顧客に正直に向き合うことが、長年の評価に繋がっているのでしょう。


取引先に勝つことで消費者により近く。

消費者からの評価が高い一方で取引先には大きなプレッシャーになっている面も否めません。同社のEDLPの旗印のもとにある施策のひとつである「競合店対抗値下げ」の値下げ分を取引先に補填させているとの通報を受けた公取委が昨年、調査に入ったという報道もありましたし、一昨年には値上げを発表した花王製品の約3割にあたる145品目を一時的に販売休止にした事例もありました。



ダイエー創業者の資料館である「中内㓛記念館」の記事でも触れましたが、かつてはリテールの社会的地位は低く、それを高めていくためにはメーカーや問屋から価格決定権を奪取する必要がありました。日本チェーンストア教会をつくった中内さんや伊藤雅俊さん(イトーヨーカ堂創業者)、清水信次さん(ライフコーポレーション創業者)などの経営者は取引先との戦いを制して、より消費者に近いリテールが価格を決める今のかたちになったのです。その意味で飯田さんも消費者に寄り添いつづけた経営者だったという証と申して差し支えないように考えております。


​流通の旗手ふたりを手玉に取る?

飯田さんのオーケーは全盛期を突っ走るダイエーの中内㓛さん、西友の堤清二さんの2人からM&A提案を受けていたのだそう。受けて立った飯田さんは双方の要請を聞き入れるかのごとく、双方から出資を受け容れます。そしてその際の増資を手元資金にして店舗網を拡大、それらの経営の安定を見るやいなや両社から自社株を買い取り関係を解消するのです。流通の旗手と呼ばれた中内さん、清二さんをも手玉に取ってみずからの事業拡大のためにうまく利用してしまう飯田さんの豪傑なエピソードのひとつです。こういう良くも悪くも「男らしい」経営者が、またひとり、いなくなってしまった寂しさを感じつつも、2代目を引き継いだ二宮涼太郎社長は私と同年代ながら見事な人格者で高い経営能力を持っていると聞いておりますので、引き続きオーケーの動向には期待して見てまいりたいと思っております。



さあ、いよいよオーケー悲願の関西初進出は、今年11月に迫っています。


※次回の記事は4/10(水)に公開します。


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