ペコリーナのブログ -3ページ目

 先日、落語を観に行ってきました。


 桂ざこばさん、南光さん、米團治さんの、桂米朝一門の三人会です。


 落語は文化的にも言語的にもお笑い的にも興味がありましたが、実際の寄席に行くのは二回目で、知識は殆どありませんでした。


 とはいえ、先述の方々は当然知っている落語家の重鎮たち。

 前もって何かしら予習をしておこうと思うくらい楽しみにしていた寄席でしたが、結局なにをどこから学ぶのが予習なのかも分からぬまま当日を迎えました。


 緞帳が上がりステージに設置された屏風と高座が見えると、そこから客席に流れ込んでくるライブ感に気持ちがアガります。

 前座にお二人の若手? のお噺。

 続いて南光さん、中入と称される休憩から、ざこばさん、トリに米團治さんの演技でした。


 それぞれの古典落語は初めて見聞きするものでしたが、いやぁ、めちゃくちゃ圧倒されました。


 ご存知でしょうが、落語は基本、座ってお噺をされます。手拭いと扇子だけを小道具に、ひとりで何役もこなします。

 それを実際、目の当たりにしたときの臨場感たらないですよ。


 座っているのに立って歩いている。

 閉じた扇子と両手だけで、うどんの入った丼と箸が見える。

 空調の効いた室内なのに、吐く息が白く感じられるほど寒く感じる。

 何もないのに酒と肴が見え、ないはずの紅生姜に唾液が出る。

 ひとりなのに、二人にも三人にも見える。


 いったい何なんだこれは。

 と、どんな所作も語りも見逃すまい、聞き逃すまいと神経を集中させているところに入ってくる軽快なやり取りや滑稽な仕草に、思わず声をたてて笑い、手を叩いてしまいます。

 語られる物語に入り込み、聞き入り、笑ったところですんなりと落ちがつき、より一層の笑いと拍手のなか、落語家というたったひとりの演者は頭を下げて颯爽と舞台から下がっていきます。


 すげ~!

 かっこええ~ッ!


 純粋な笑いとともに、その技術の高さに感動と憧憬を覚えて鳥肌すら立ちました。


 んで、まくら といわれる本題に入るまえの世間話みたいなやつもまた面白くて。

 トリの米團治さんは、ご自身が米團治を襲名するまでのあらましを まくら だけで起承転結のある小噺として、ど素人のわたしにも理解できる流れで涙が出るくらい面白く語ってくれました。


 あと、ざこばさんは数年前に大病を患ったせいで動きが鈍く言葉もうまく出てこないといった内容を、ぎこちないながらも面白おかしく語ったと思ったら。

 本題の噺になった途端にすらすらと演じます。とはいえやはり、噺のリズムや台詞などで、思うようにいかない部分があるのは感じました。

 でも、語り、声の張り、仕草などは、読み書きや箸の上げ下げくらい「当たり前」 に身に付いた所作で、病気なんかで失うような技術ではないのだろうな、と思いました。


 非常に濃厚な時間を過ごしたことで興奮したわたしと友人は、焼き鳥をびっくりするくらいたくさん食べて帰りました。


 良い体験をしたら、それを存分に語り合いたくて限界を超えて食べてしまう。

 これがわたしの「当たり前」 なもので……。

 ↑

 なんの落ちもなってませんな。


 落語、オススメです!!!



 


 


 


 


 


 


 


 


 

 


 

 映画「カラオケ行こ!」 を観てきました。コミックが原作のコメディ映画です。


 コミックは読んでいませんでしたが、主演の綾野剛さんのファンなので昨年から楽しみにしていた映画です。

 

 変声期を迎えてソプラノパートに苦戦している合唱部部長の男子中学生に、ヤクザ組長主宰のカラオケ大会で最下位になりたくない若頭が歌の指導を頼むという、なんじゃそりゃーなお話。


 でもそんな、なんじゃそりゃーな世界にすんなり入り込めるくらい作り込まれた内容で、現実では交わることのないヤクザと中学生が、歌を通して友情とも愛情とも違う奇妙で脆い関係、かつエモーショナルな世界が描かれていました。


 若頭役の綾野剛さんはこれまでたくさんの出演作品でその演技力を高く評価されていますが、今回も「コメディ劇においてのヤクザ」 を見事に実在させていて、本当にすごい俳優さんだなあ! と、ますますファンになりました。

 役柄によって話し方や声色が違うので、これまでのどの役とも違っていて、なんなら本当の綾野剛さんは普段どんな喋り方をしているのかな? と思うほど。


 これまで彼の作品(主に映画) を割としっかり観ているので、あの役ではこうで、あの映画ではこうだったとペラペラと(しかも早口で) 話せる自信はありますが、聞かされる側がポカーンとなるであろう自信もあるのでやめておきます。

 とにかく、与えられた役に徹する努力を惜しまない方なのだろうなと認識しました。


 もうひとりの主演、男子中学生を演じた齊藤潤さんをわたしは存じ上げなかったのですが。

 そらあもう、微妙な表情や冷静なツッコミ? 、変声期において曖昧で不安な感情や、綾野さん演じる若頭に少しずつ気を許していく様が伝わる演技の機微にそこはかとなく圧倒されました。


 印象的なシーンやセリフがたくさんあったので原作はどうなんだろ? と思い、和山やま氏の同名の原作コミックを購入して読みましたところ、その殆どのシーン、セリフが原作で描かれているものでした。

 映画オリジナルの設定やキャラクターも判明しましたが、

 二時間弱という限られた時間枠、しかもコミックよりリアリティを感じさせるであろう実写映像で、原作から醸し出されるアンニュイかつエモーショナルな魅力を伝えるために必要な設定の再構築であることが理解でき、その緻密な演出にもため息が出るほど感動しました。


 作り込まれた美術セット、もはや主演級のバイプレイヤーたち、コミカルな音楽、演出、その全てが、すでに凝縮されて一冊のコミックとして深く表現されている世界をさらに濃縮抽出した結果、観る者(わたし) を全方位から没入させるに余りあるフィクションを完成させていました。


 ん……? わたし、なに言ってんだ……。


 と、慣れないブンガク的表現で「れびゅー」 したくなるほど面白かったので、興味を持ってくれた友人を誘ってもう一度観に行ったのが先日のこと。


 作中で、齊藤潤さん演じる男子中学生がカラオケボックスでチャーハンを食べるシーンがあり、ひとりで観たとき、わたしはそれに触発されてバーミヤンでチャーハンを食べたのです。

 (ちなみに、昨年「首」の観賞後にもチャーハンを食べにバーミヤンに行きましたが、それは作品とは関係なく、もともと食べたかっただけ)

 んで、友人と観たのはバーミヤンが近くにない映画館だったのですが、観賞後の友人も「チャーハンが食べたくなった!」 と言うので、劇場近くのラーメン屋さんでチャーハンを食べました。


 だからきっと、他にも「カラオケ行こ!」 を観てチャーハンを食べたくなったひとはいるはず! わたし、間違ってない!


 と無意味な自信を得ました。

 で、それから2日ほど経った日、友人から

 「今日もチャーハンの口のままなので、唐揚げとスープ付きのチャーハン定食をランチに食べました」

 とメールが。

 それはさすがに、「いや、なんでや」 と思いましたが、そのやんちゃなメニュー、めちゃくちゃ美味しそうやん! とも思いました。



 そして。



 一回目と二回目の観賞の間に、とてもとても悲しいことがありました。


 昨年放送されたドラマの原作コミックを手掛けた漫画家のかたが、自ら命を断たれました。

 以前から原作コミックを楽しく読んでいたわたしは、ドラマ化のニュースに喜びました。

 発表されたキャスティングも素晴らしいと思いました。

 で、放送まえに発売された、「ドラマ化決定!」 の帯が巻かれた新刊を読み、その展開に夢中になり、その世界観に浸りたいのと、

 仕事のシフト上リアルタイムで視聴できないことを言い訳に、実際のドラマを観ることはありませんでした。


 だから、ドラマ化にあたって、原作者のかたが大変辛い状況下にいたことは、ご本人が経緯を綴った文章で知りました。


 これほどまでにしんどい思いをした実写化だったのか……と思いつつ、「それならなおのこと、原作のあの世界観だけを知っているわたしは、全力でこれからの原作コミックを応援するぞ!」 と思いました。

 「これからは、ご自身が築いたコミックの世界だけに注力できるし、わたしを含めた原作ファンもまた、これからの展開を待ち望む気持ちが強まったはず! 七巻からの続き、楽しみに待ってますよ……ッ!」

 とも思っていました。


 でも、現実はそんな単純なものではなかったわけで。


 大好きな作品の続き、描かれるはずだったラストは、もう読めません。


 事態はあらゆる論争を生み、

 テレビ局vs.原作

 脚本家vs.原作

 出版社vs.原作

 テレビ局vs.出版社

 などなど、過去の事例も巻き込んでいまなお延焼を含め燃え上がっています。


 今回の事態について、一般的には上記の対立を色濃くさせていますが、そもそも、原作者のかたがドラマ化にあたっての苦悩をなぜこのタイミングで吐露したのかが原作ファンにとっては重要であり、それも踏まえて最悪の結末を回避できた場面は、遡ればいくつもあったと思うのです。


 こんな辛い状況で、奇しくも同じくコミック原作の前述の作品は、実写化にあたって全方位から原作へのリスペクト、それに伴う努力と協調が評価されてるという事態について、正直わたしはうまく消化できていません。

 これまでも、原作を生かして素晴らしい映像化になったー! と単純に喜んでいた作品もあれば、あまりの改変にドラマ予告の映像すら観ないようにしていたものもあった一方で、

 原作を知らずに改変されたそれを絶賛している作品もわたしはあります。

 

 それについて、原作者は本当はイヤだったのに言えなかったのかもしれない。

 そもそも世間の絶賛とは乖離された次元で、原作者にはなんの還元もなかったのかもしれない。


 そう考えると、これから好きなコミックや小説が「映像化!」 と宣伝されるたびに「やったー」 と喜んだり「えぇ……大丈夫か……?」 というシンプルな感情だけで済まないのではあろうかという不安に苛まれます。


 イチ読者、イチ視聴者のわたしが動揺しているさなか、世間は件の事件そのものから離れてそれぞれの立場から他者との罵り合いになっていることにも恐怖を覚えました。


 このまま安易な二極の対立ではなく、亡くなった漫画家さんの今回の現状においての問題点の解明を明確にしてから、再発防止を根底から正していくのが重要だと思います。


 わたしにとって、漫画家も小説家も、脚本家も監督も、製作に携わる人々も、素晴らしい才能を持つ憧れの職業であります。

 でもその肩書きだけでのおおざっぱな戦いはなんの意味もなく、今回の事態から防げたであろうポイントポイントをきちんと精査してこれからのエンタメに活かしてくれないと、先の作品の原作者の方の命、原作コミックのファンの気持ちはうやむやに漂うだけだ。


 たくさんのクリエイター、作品のファンたちが怒りや哀しみや悔しさを放出させなければならなくなった、このひとつの事案についての問題究明を、該当するテレビ局と出版社がきちんとしてほしい。


 と、小説、コミック、ドラマ、映画をこれからも楽しみながら人生の糧にしたいわたしは切に願っています。


 辛すぎて、うまく文章にできないや。

 ↑これは、バーミヤンでチャーハンと一緒に頼んだ四川麻婆豆腐。
  辛すぎて、めっちゃ行きました。ドリンクバーに。

 でも美味しかった!!!

 辛さ(つらさ) と辛さ(からさ) をかけてみたところで、次からは、もう何も言わない。

 「カラオケ行こ!」 、素晴らしく素晴らしい映画でした。

 

 

 


 

 

 


 

 



 


 

 


 


 




 

 映画「パーフェクト デイズ」 を観ました。


 東京都内の公衆トイレの清掃員、役所広司さんが演じる平山の日常が描かれた、ドイツと日本の合作映画です。 


 早朝、自宅近くの道路を老婦人がホウキで掃除する音で目覚めた平山さんは、布団をたたみ、寝るまえに読んでいた文庫本を閉じ、歯を磨いて髭を整え、植木に水をやってユニフォームを着込みます。

 外に出て空を見上げ、自販機で缶コーヒーを買って車内でゴクリ。カセットテープで音楽を流しながら、その日割り当てられた様々な公衆トイレの清掃を丁寧にこなしていき、神社でサンドイッチと牛乳で休憩。

 フィルムカメラで樹木をパチリ。

 銭湯、居酒屋、読書、就寝。

 翌朝、ホウキの音で目覚め、布団をたたんで本を閉じて……。


 そんなお話。


 同じことをただ実直に繰り返す平山さんを、我々はただ観ているだけなのです。

 が、全く同じ日なんてないわけで、ちょっとしたトラブルや思いがけない出来事、嬉しいこともあれば嫌なことなどが、平山さんの日常にも起こります。

 そして後半、そんな日常のなかでも割とぎょっとするような出来事がポコポコと起こることで、平山さんの感情と共に、我々の心情も揺らぎます。

 同じ日々の繰り返しなんてない。

 良くも悪くも、色々なことが少しずつ変化していくのが当然の日常なんだ、と。


 なんだかとても清々しい気持ちになる映画でした。

 キャッチコピーが「こんなふうに 生きていけたなら」 なんですが、平山さんのアナログかつ実直な暮らしぶりは本当に平和で清潔で、ひとりで過ごしているのに孤独ではなくて、おおらかで真面目な平山さんの性格にも憧れます。

 でも、平山さんの過去が垣間見える出来事もあり、決して平穏な人生ではなかったようなので、このキャッチコピーはもしかしたら平山さんの心情でもあるのかもしれません。


 鑑賞しているときはただただその世界に没入していましたが、後で思い返したり、それこそ感想を言葉にしようとしたとき、様々なシーンにそれぞれの感情が沸き起こり、全部が大切な出来事なんだと気づきました。


 役所広司さんは、この映画でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞されました。

 考えてみたら、わたしは役所広司さんが不良刑事を演じた「孤狼の血」 、前科もちで何かとカッとなりやすいながらも再生を試みる男を演じた「すばらしき世界」 も映画館で観て大変感動しました。

 今度は極端に口数の少ない平山という男を演じていて、そういや全部同じひとが演じてんだよな……と考えたら、それはそれは凄いことだと思いました。

 もっともっと、たくさんの名作での名演技を評価されているひとなのに、どれもその世界にどっぷりと自らを染めているため、同一人物であることに気付きにくいといいますか……。


 もっともっと話したいことがあるのですが、キリがなくなってしまうのであと少しだけ。


 作品のなかで、平山さんのルーティンのひとつである、早朝の出勤のとき、自販機で買うコーヒーは当然サントリーBOSS の缶コーヒーでした(笑) 。

 で、その缶コーヒーが「がんがらごん!」 と音を立てて落ちてきて、平山さんが毎朝よそのひとのホウキの音で目覚めるのと同様に、その音を目覚めのきっかけにしてるひとが近所にいるだろうな、と思いました。


 あと、柄本時生さん演じる平山さんの後輩が平山さんのカセットテープを中古レコード店に持ち込み、買い取り価格が高額と知って「売ろう売ろう。そんで、そのお金を自分に貸してくれ」 みたいに騒いで、それを拒否した平山さんが仕方なく手持ちの現金を渡したら、大喜びで去っていくというシーンがあったのですが、

 そのレコード屋さんにいた数人のお客さんたちが、後輩柄本に対して呆れている空気感があって、それがとても良かったです。


 全シーン、全登場人物が素晴らしく印象的で、本当に素晴らしい映画を観ましたよ!!

 オススメ!!


 わたしも以前から本を読みながら寝落ちしたいと考えていて、一時間で消灯する機能がついたルームランプを購入していたのですが、結局スマホ寝落ちがクセ付いていて全然ルームランプを生かせていませんでした。


 よっしゃ、今日から読書寝落ちルーティンに再挑戦や!!


 と意気込んだものの、充実した休日を過ごせたことに気を良くしてビールをたくさん飲んだため、


 ただただ、酔っぱらった勢いでぐーぐー寝ただけでした。


 ダメな奴!