「朗読劇」というのをご覧になったことがありますか。
役者さんたちが、全部ないし一部、台本を読み上げる方式で進められる演劇である。個人的には、出演者が台詞を覚えずにすむ演劇…という、ある種のチープさというか、どこか必然性の実感できない手抜き感みたいな偏見をもっていた私だったが、大きな間違いであった。先日、ある朗読劇を鑑賞してそう気付いた。
それは新宿シアタートップスという劇場の「トップスまで15秒」という演目である。出演者は3人。その3人が16人の男女を演じ分ける。
近隣のふたつの劇場にかけもちで出演しようとした役者をめぐる、ある種ドタバタ劇ではあるのだが、聴衆をまったく退屈させないプロット、構成が見事だった。
また、この作品は何組かのキャストがチームを組んで演じているのだが、私が鑑賞した回の出演者は、西ノ園雄大さん、株元英彰さんといったいずれもいかにも女性にもてそうなイケメン俳優と、これまで何度か舞台を拝見したことのある美人女優糸原舞さんのお三方。そろいもそろって大変な実力派で、芸達者ぶりをいかんなく発揮されていた。たった3人で100人を超えるお客を、しかも朗読だけで釘付けにするのだからさすがだ。やはりお金をとるプロの仕事とはこういうのをいうのだな、と納得。なぜ朗読劇なのかということを考えさせるいとまもない後味のよさというか、終わって実にすがすがしく、しかし、まだまだ見足りない、つづきはないの?…という思いにもさせられた傑作だった。
出演者は、終始信号みたいな3色のジャージ。それがときおりポジションチェンジしたりと、見た目もそれなりに楽しかった。
もう1作、「Greif4」という朗読劇も鑑賞した。荻窪のオメガ東京という小劇場。
じつは、ここでは、以前、前記糸原舞さんの名演を見たこともあった。が、この「Greif4」は、純粋な役者さんというより、グラビア系の女性アイドルのみなさんの顔見せ的興行。…生粋の役者よりも、アイドルの方が、役者としての出番にも恵まれるのだなと思ったが、しかし、なかなかあなどれない力作であった。
こちらは、朗読劇といっても、ふつうの演劇とあまり変わらず、長台詞のところだけ朗読方式にしているみたいではあったが、それはそれで演出としてメリハリがあって、かえってよかった。
しかも、ひとりひとり本物のアイドルたちが――ギャラなんて知れてるだろうけど――打算抜きで真剣にこうして演劇に取り組んでる姿を見てると、年のせいかウルウルしてしまう。じっさい、内容もアイドルユニットのけなげな友情と成長をえがく予定調和的な、ダンスあり、歌ありの、ベタな青春ものなのだった。
とくに印象に残ったのが、ユニットのリーダー役を演じた阿南萌花さんの非凡な演技である。あまりに脚が長いのでぶったまげたが、聞けば彼女も有名なモデル、グラビア・アイドルとのこと。才能がある人はなんでもできるんだな、と思った。阿南さんの今後にも大いに期待したい。
新型コロナ禍、みなさん感染対策に気を使いながら…で、どこか遠慮がちながらも、それぞれに心地よいステージであった。
やはりやり直しの利かない生の舞台にはいつも発見があるし、出演者の頑張りからは、自分自身、大きな刺激を受ける。