Joan Jett & The Blackhearts -アイコンになったロッカー | 100nights+ & music

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2020年の1年間に好きな音楽を100回紹介していました。
追記)2023年になっても見てくれる人がいて驚きました、感謝を込めて?気が向いた時にときどきまた書こうかと思います、よろしく!

 

The Hit List

 

 ジョーン・ジェットは、1970年代の後半にザ・ランナウェイズという少女ばかりのロックバンドのギタリストとしてデビューした。

 ヴォーカルのシェリー・カーリーがコルセットで歌っていたこともあってか、日本ではけっこう人気があった。個人的には芸能っぽい偽パンクという印象で関心がなかったが。

 

 1982年には自身のバンド、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツで「アイ・ラヴ・ロックンロール」というロックンロールのアンセムみたいな曲を特大ヒットさせ、ジョーンはスーパースターになった。

 その時の印象はシンプルなロックンロールを演奏するアメリカン・バンドという感じで、好感を持ったがそれほどハマったりはしなかった。

 

 そんな自分の評価が一変したのは、1990年にリリースされた『The Hit List』という古典的なロックバンドの名曲をカバーしたアルバムを偶然聞いたことだった。

 大好きなキンクスの「セルロイド・ヒーローズ」が入っているという理由だけで買ったのだが、一曲目に入っているAC/DCの「Dirty Deeds」を聞いた瞬間にジョーン・ジェットのファンになった。

 

Dirty Deeds

 

 ジョーンの声のせいか、AC/DCよりパンクっぽくてオリジナルよりもこっちの方が気に入った。

 最初の偽パンクという印象はもしかして大間違いだったのかなと思って以前の曲を聞いてみると、ジョーン・ジェットはパンクの影響を受けたカッコいいロックンローラーだった。

 完全に誤解していたことが分かり、それ以来ずっと気にしている。

 

 シンプルなロックンロールを演奏しているので、特別に音楽的なオリジナリティが高いという訳ではないのだが、ぼくにとってジョーンの最大の魅力は、しゃがれた声にある。

 やさぐれた感じと、ひたむきな感情の両方が一緒に伝わってくるところが最高に良い。

 

Victim of Circumstance

 

 『The Hit List』の次に出た『Notorious』には、ザ・リプレイスメンツのポール・ウェスターバーグが協力している。

 ザ・リプレイスメンツは、ショービジネス的な派手さはないがとても良いロックバンドで、オルタナの元祖みたいに言われることも多い。パンクロックとそれ以前のロックを、うまく混ぜたような方向性がジョーンと少し似ているかもしれない。

 

 バンドのフロントマン、ポール・ウェスターバーグと共作した「Backlash」は2人のポップセンスが良い感じに噛み合っている。

 

Backlash

 

 

 ジョーン・ジェットは、1979年にザ・ランナウェイズを解散した後にセックス・ピストルズのお騒がせ2名以外とイギリスでレコーディングをしていたらしい。

 その後アメリカに戻ったが、既存のレーベルがどこも契約してくれなかったという理由で自主レーベル「ブラックハート・レコーズ」を設立して以来、自分で音源を製作している。メンバーは何回も変わっているが、ジョーンのバックバンドが「ザ・ブラックハーツ」であることも変わらない。

 

 ロックンロールが好きな少女がパンクロックにハマり、ショービジネスの世界で自立しながら長く音楽を続けているうちに、いつの間にか世界中の女性ロッカーに尊敬されるアイコンになっていたんだなと、自分が10代最初の頃にザ・ランナウェイズを知ったころからの長い時間を考えるとなかなか感慨深い。

 『The Hit List』に入っているセックス・ピストルズの「Pretty Vacant」をこの映像込みで見ると、特にそんなことを思ったりする。

 

Pretty Vacant