もっこり半兵衛、John Lennon と Bob Marly | 100nights+ & music

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2020年の1年間に好きな音楽を100回紹介していました。
追記)2023年になっても見てくれる人がいて驚きました、感謝を込めて?気が向いた時にときどきまた書こうかと思います、よろしく!

 

この世界で正気でいるためのギャグマンガ

 

  いつもは好きなミュージシャンの紹介をしているが、今回は特別編ということで好きなマンガと、それで思い出した音楽の紹介をしたいと思う。

 2024年はいろいろ大変な中で始まった。日本だけじゃなく、ロシアによるウクライナへの侵攻やイスラエルによるパレスチナのガザ地区侵攻など深刻で最悪なことが世界のあちこちで継続中だし、特にガザの状況は心が沈む。

 もし同じような暗めの気分になっている人がいたら、マンガの「もっこり半兵衛」を読むと良いと思う。

 

  「もっこり半兵衛」は、「ジャングルの王者ターちゃん♡』で有名な徳弘正也が、現在も不定期ながら連載している時代劇マンガ。不条理だらけの江戸時代で浪人をしながら弱い立場の人々を何とか守る(命を守れなくても、せめて尊厳だけでもかろうじて守る)という人情ギャグマンガになっている。

 ただし、少年向けではなくて大人向け(特にちょっとバカな男性向け)になっていて、しょうもない下ネタお笑い系が多いので人によっては最初とっつきにくいかもしれないが、例えば宮部みゆきの時代物が好きなら絶対好きになるはずの名作だ。

 とても良い内容なんだけど、第1話の最初からとってもお下品なギャグでスタートするので、そこで引かないでぜひ続きも読んで欲しい。

 

もっこり半兵衛

 

 基本はギャグマンガなので笑える話が多いが、貧しさで売られていく少女や封建制度に殺される子どもなど心の痛む回もある。

 そんな「もっこり半兵衛」を読みながらなぜか思い出したのは、ジョン・レノンとボブ・マーレ―だった。自由に生きることを邪魔する政治や社会なんて面倒だと思いつつ、誰よりも政治的で社会的だった2人の音楽は、なぜか「もっこり半兵衛」にピッタリな気がする。

 

 この2人は死んでから「とても立派な人間」みたいに言われているが、ジョンはインタビューで「嫌いなものは何ですか?」と聞かれて冷たく「お前」と答えたらしいし、ボブは来日したときにガンジャを我慢する気がゼロでスタッフがものすごく大変だったらしい。こういう人はプラスとマイナスの幅が大きくて、近くにいたら大変だろう。

 

 ボブ・マーレ―は、支配階級の61歳のイギリス人の父と16歳のジャマイカ人の母の間に生まれ、すぐに父親に捨てられた。10代でバニー・ウェイラー、ピーター・トッシュと出会ってバンドをつくり、それがウエイラーズになった。

 その後にスカ、ロックステディ、レゲエと音楽の深化とともに、ジャマイカだけでない世界的なカリスマになっていったのはご存知の通り。

 

 ボブは、1976年12月にジャマイカで「スマイル・ジャマイカ」というフリーコンサートを開催し、政治紛争に巻き込まれてコンサートの2日前に銃撃された。

 軽傷の状態で何とか出演して、直後にロンドンに亡命するように滞在し録音した1977年の「パンキー・レゲエ・パーティ」は、お前の偽善的な世界にパンクがやってきたぜ!という曲。

 

ミスティックスはそこにいるぜ

ダムド、ジャム、クラッシュ

ウエイラーズはそこにいるぜ

ドクター・フィールグッドもな

 

ジプシーからのアドバイス「あんたはほろ酔い気分の男だね」

お前は偽善の世界の中で、リアリティから隠れているんだろ

 

Punky reggae party 

 

 ジョン・レノンのプロフィールを説明する必要はないだろう。「愛と平和」や「家族愛」の人みたいに言われることも多いが、どう見ても「したいことしかしない気まぐれな奴」で、その中にポジティブな意思とまともな心があったんだろうと思う。

 

 (どちらも子供をまともに養育する気のなかった)アイルランド系の父とイングランド系の母を持つジョンの作った「The Luck Of The Irish」は、イギリスによるアイルランドの侵略と虐殺について歌われている。

 小野洋子と歌うこの曲は、まるで江戸時代や2024年の世界のことを歌っているようにも聞こえる。

 

1000年もの拷問や飢餓で、人々は自分の土地を追い出された

美しさと驚きに満ちた土地は、イギリスの盗賊にレイプされた

クソ野郎が!

 

もしあなたが花のような声を持ち続けることが出来るなら

世界中にシャムロックの葉が生えるでしょう

もしあなたがアイルランドの小川のように夢を飲み込むことが出来るなら

夜明けの山のように世界は高くそびえるでしょう

 

The Luck Of The Irish 

 

 「もっこり半兵衛」主人公の月並半兵衛は、大人で家庭的でちょっとお下品なスナフキンという感じのキャラクターだ。スナフキンと違うのは、冬になってもムーミン村から出て行かずに娘と貧乏長屋に居続ける部分だろうか。

 

 作者の徳弘正也は未だにまったく才能が枯れていないどころか、これまでの集大成のような作品を書いているのに、「時代劇物は連載できない」と出版社に言われて紙の媒体では出版していないので、ネットでしかこの名作を購入できない。

 本当はジョンやボブにも勧めたいところだが無理なので、代わりに多くの人に「買って」読んで欲しい。

 

 

9巻まで出ています、みんな読もうぜ!