Christy Moore ‐アイルランドのレジェンド | 100nights+ & music

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2020年の1年間に好きな音楽を100回紹介していました。
追記)2023年になっても見てくれる人がいて驚きました、感謝を込めて?気が向いた時にときどきまた書こうかと思います、よろしく!

 

アイルランド最高のシンガー

 

 クリスティ・ムーアは素晴らしいミュージシャンが多いアイルランドで最高の歌い手だと思う。アイルランド人に聞いても、そう答える人は多いんじゃないだろうか。

 若い頃から見るからに頑固そうなオッサンで、フォークギターを抱えて汗を流しながら淡々と歌うスタイルなのだが、クリスティ・ムーアの音楽には、ぼくがミュージシャンに期待するすべてがある。

 

 1970年代初めに、後年に有名なプロデューサーになったドーナル・ラニーなどと、その後のアイルランド音楽に多大な影響を与えたバンド「プランクシティ」を結成した。

 このバンドとそのメンバーが古臭いと思われていたアイリッシュ音楽を新しい感覚でよみがえらせ、それが世界的になる最初のきっかけをつくった。

 

Raggle Taggle Gypsy/Tabhair dom do laimh

 

 クリスティ・ムーアには何枚も良いアルバムがあるが、傑作中の傑作は1984年の「ライド・オン」であることは間違いない。このアルバムでは、アイルランド人のイギリスへの反抗と戦い、そして詩とフェスティバルと死について歌われている。

 

 “バック・ホーム・イン・デリー”は、19世紀はじめにアイルランド独立に失敗してオーストラリアに流刑された人々の曲。作曲したボビー・サンズは、IRAの政治犯としてサッチャー政権の時代に投獄され、ハンガーストライキを行って死んだ。

 

20年の歳月が過ぎ

俺の流刑期間は終わった

仲間の幽霊たちが

俺の後ろからついてくる

俺はかつて反抗していた

それはいまも変わらない

 

ある冷たい冬の夜に

お前は俺を見つけるだろう

 

Back Home In Derry

 

 “ヴィヴァ・ラ・クィンタ・ブリガーダ(第5旅団万歳)”も、同じアルバムに入っている政治性の強い曲。

 20世紀のスペイン内戦に協力してファシズムと戦ったアイルランド人のことを歌っていて、曲の最後ではそこで亡くなった何人もの名前を続けていく。

 

 このライブの盛り上がり方は独特だ、見るからに労働者階級っぽい客はどんな気持ちで一緒に歌っているんだろうか。

 

Viva la Quinta Brigada

 

 ジミー・マッカーシーは自分でも歌うが、ソングライターとして非常に優れていて、たくさんの名曲を書いた。クリスティは彼の曲を何曲も録音していて、それらの何曲かはアイルランドのスタンダードになっている。

 

 彼の”ブライト・ブルー・ローズ“の歌詞は難解で、ぼくの英語力ではいまひとつ理解しきれないが、都市に住むある男の死について歌われているようだ。

 

BRIGHT BLUE ROSE

 

 クリスティ・ムーアの音楽には、アイルランド人の持つ本質があることが、日本人のぼくにも感じられる。

 アイルランド人としてのアイデンティティを持つ多くのミュージシャン、ポーグスのシェイン・マガウアン、シンニード・オコーナー、エルビス・コステロ、U2、コールドプレイなどなど、クリスティの影響を受けた人やバンドは数知れない。

 

 彼の凄さは、特別なことを何もしないのに一つの文化や分野を代表していること、そして人間的なものも含むパフォーマーとしての存在感にあると思う。

 

 もう何十年も前、映像で初めて彼がジミー・マッカーシーのつくった“ライド・オン”を歌う姿を見たときから、最も好きなミュージシャンの一人としてずっと心に残っている。

 その時のクリスティ・ムーアも、汗をかいて目をつぶり、アコスティックギターを弾きながら静かな情熱で生と死についてただ歌っているだけだった。

 

あなたが駆っている馬は

私がこれまで見た中で最も素晴らしい

体躯が大きく緑色の荒々しい目を持っている

あなたはその馬にとてもうまく乗っていて

手綱さばきも見事なものだ

私には、決してついていけそうにない

どんなにそうしたいと思っていても

 

駆っていきなさい、いつかまた会おう

私には決してついていけそうにない

どんなにそうしたいと思っていても

 

Ride On