少女たちが歌う Teenage Wasteland
子供の頃、上の世代の不良にキャロルというロックンロールバンドが流行っていた。
社会に合わせることのできない、反抗的でロマンチックで、暴力的なファンタジーのようで、労働者階級っぽい音楽はとても魅力的に感じられた。
強い自己主張を持った矢沢永吉と、自分がそうではなかった10代の夢についての歌詞を書くジョニー大倉は、単なる不良用ではなくて普遍的なロックンロールをつくっていた。
ある学校の先生が、「最近は周りには合わせずに、自分と社会にとって本当のことをあえて言おうとするのは、少女ばかりだ」と話していた。
何となくそれは分かる。いまの10代にリアリティを感じさせているだろう音楽のひとつに女性アイドルがあって、その一部はまるでかつてのキャロルのように荒廃と希望を歌っている。
歌手の大森靖子がプロデュースをしながら、メンバーの一人にもなっているアイドルクループ、ZOCの曲を聞くと特にそう感じる。(大森さんのしていることは素晴らしいと思う)
大森靖子が書いた“family name”は、ある少女たちにとって特別な曲になっているんだろう。
ZOC “family name”
ハロプロに2013年くらいからハマり始めた。アイドルをまともに聞くのは生まれてはじめてなので、自分でも驚いている。
その理由の一つに、斬新なアレンジと、若手の作家が中心になっている曲が面白いということがある。(つんく♂は最近離れたようだけど、すごく頑張っていたことをやっと知りました)
ハロプロに歌詞を提供している作詞家の児玉雨子は、1993年生まれで歌っているアイドルとあまり年齢が変わらない。
同世代の作詞家として、10代女性のどこか荒れている感じや、それでも希望を持ちたい気持ちをうまく歌詞にしていると思う。
初期の曲“乙女の逆襲”は、ダークなアレンジも含めてアイドルポップとはかなり違う。それでもアンジュルムが女性に人気があるのは分かる気がする。
アンジュルム “乙女の逆襲”
ハロプロの新しいクループ、ビヨーンズの曲を大森靖子が書いている。
“Girl Zone”は、中学生女子のための曲だと思うが、50代男子の自分も(内緒だけど)ちょっと良いと思う。10代の女性には、パンクロックのように聞こえるのかもしれない。
雨ノ森川海 “Girl Zone”
大森さんも児玉さんも才能と気持ちのある人だが、その上で人の心を掴むのは、音楽を捧げられた少女たちだと思う。
こう言うと怒る人がいるかもしれないけれど、それはモータウンレコードのザ・スプリームスやジャクソン5だって本当は変わりはしない。
ダークな感じの曲ばかり紹介したが、もちろんそれは例外で明るい曲の方が圧倒的に多いし、そちらもとても楽しい。
能書きはこれくらいにして、3月にZOCのコンサートにはじめて行くことにした。50代は浮くだろうな~と思いつつ、とても楽しみにしている。
4.1追記)
ZOCのライブは残念ながらコロナの影響で延期になり、3.27にネットで無料ライブがあった。
そこには事前情報なしで、アンジュルムにいた福田花音がZOCの新メンバーとして出ていた。大森靖子は本当にすごいな。
8.1追記)
ZOCはどうやら空中分解しそうになって、大森聖子がストップをかけたようだ。パンクバンドみたいなものだから、長くは続かないだろうなと思っていたがずいぶん早かった。
これからの彼女たちが、幸せな方向に進んでいくことを願っている。
シネマジック