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←第3話『聖なる剣(つるぎ)』
大事なことを
分からせてくれるかのように
天は僕に
トドメを刺した。
★ ★ ★
29歳の頃、
事業のパートナーが
見付かった。
少し肌の黒い
関西弁の男性だ。
彼は
多くの自己啓発を知り
ビジネスの実績もある。
マーケティングや
インターネットを強みとし
何かコンテンツを
探していた。
彼は僕の
行動力に目を付けて
一緒に何かやっていきたい
ということで
声をかけてくれた。
僕としても
願ったりだった。
僕が苦手とすることを
やってくれるのは
強い味方に
なると思ったのだ。
20代の最後、
これに賭けよう。
そう思って
派遣の仕事を
更新しなかった。
僕らは
活動理念やコンテンツを決めて
個人事業家が持っている
資源(リソース)を共有(シェア)する
『リソーシェア』という
プロジェクトを
起ち上げて活動した。
キャッシュポイントは
サイト制作と
その運用費だった。
しかし・・・
どれだけ活動しても
大した売上は
上がらなかった。
そのうち
事業パートナーの彼は
僕を
監視するようになった。
「今、何してんねん?
朝からカフェ?
悠長なもんやのう。
今日は何すんねん」
僕は人に
コントロールされるのが
かなりストレスになる。
何をしようが
僕の勝手じゃないか。
お金に
余裕はないけど
朝はカフェの
朝食も安いし
集中できるから
来ているんだ。
僕は基本的に
自分の意思で物事を決め、
自分のペースで
やりたいのだ。
そんなズレが
生じたまま
時間だけが
過ぎていき、
彼は徐々に
イラついてきているようだった。
そしてある日、
ミーティングをするからと
安い居酒屋に呼び出され、
その時、
彼は豹変した。
「これ、請求書な?」
最初は
意味が分からなかった。
売上が
上がったのかな?
そう思っていると
彼は怒鳴り出した。
「わしがこれまで
お前に尽くしてきたのは
300万円分じゃ!
これを払うか、
全てわしの言う通りにやるか
どっちかにせぃや!」
僕は
そういう態度をとる人とは
もう一緒に
やっていけないと思った。
そして
彼との縁も
切りたいと思った。
もちろん、お金だって
一銭も払う気はない。
僕は、彼と
連絡を取るのを止めた。
仲間を失った。
進む方向性も失った。
ギリギリまで
頑張っていたので
来月の家賃を
払うお金も無かった。
僕は住んでいた
高円寺のゲストハウスを解約し
箱根のホテルで
住み込みで
バイトをすることにした。
私物もヤフオクで
売っていたので
荷物も
段ボール4箱に収まった。
家を失い、
必需品以外の物も失った。
当時、借金は
500万円あった。
その金額よりも
毎月10万円の
返済がキツかった。
ホテルでの
バイト代を
前借りしても
足りなかった。
リゾートバイトとは
名ばかりで
上司は
ジャイアンみたいな人だった。
催促の電話も
毎日のようにかかってきた。
「返して頂かないと
連帯保証人の方に
連絡することになるんですけど」
自分の事より
今や働けない母に
迷惑をかけることが嫌だった。
最終的に
回らなくなり
友人から
弁護士を紹介してもらって
債務整理をした。
同じくらいの時期に
おじいちゃんが亡くなったと
母から連絡があった。
それから
少しして
おばあちゃんも
亡くなった。
家族がどんどん
死んでいく。
僕にはもう、
何もない・・・?
箱根の山道を歩き回り
いろんなことを考えた。
生きている。
少ないけど、
友人もいる。
借金の催促も
止まって
楽になった。
自然の中で
ゆっくり
今後について考えられる。
希望はまだ
残っている。
大切なものも
残っている。
僕は内観をして
自分を見つめ直し
人生を通して
やっていきたいことを考え続け、
1つの答えを
満点の星空は
何かを
囁いているようだった。