究極のターゲティング―次世代ネット広告テクノロジー/横山 隆治
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ネット広告の第一人者、ADKインタラクティブCOOの横山さんの著書。


メディアでの露出を狙った従来の広告では、メディアの選定のためにターゲット属性を仮定するという
いわば間接的なターゲッティングを行ってきた。
しかし、インターネット広告では、そういったいちいち相手を属性に置き換える間接的なターゲッティングを行う必要はなく、もっとダイレクトなターゲッティング・広告配信が行える「行動ターゲッティング広告」というものがある。

それには例えば「検索連動型広告(リスティング広告)」というここ数年で急激に伸びている手法があるが、
本書ではさらに究極のターゲッティング広告である「個別ブラウザ認識広告」に関して述べている。
すでにYahoo!などで利用されている、ユーザーごとのブラウザの履歴を元に配信する広告を変える手法だが、
この技術によって既存のインターネット広告がどう発展するのか、広告効果を最大化するにはどうすればよいのか、今後必須となるクロスメディアマーケティングをどう行っていくべきなのかが語られている。

CPCやCPAだけでなく、VTR(ネット広告をみたがクリックはせず、後日サイトを訪問した率)を把握することの
重要性やそれと広告クリエイティブの最適化をどうすべきかなどの提言もされている。
広告マンだけでなく、Webプロデューサー、企業マーケティング担当者にも必須の知識になるのでお勧めの一冊です。


▼以下、メモ

■個人情報ベースの限界
 見込み客だと思った個人のリストはいつまでも見込み客ではいてくれない。
 固定的な情報は常に更新しないと価値のあるリストとして維持できない。
 →動的な情報の重要性。


■個別ブラウザ認識広告とリスティング広告
 PUSH型とPULL型。PUSH型はキャンペーン等コントロールが可能。

■トータルトラフィックマネージメント
 ①広告スペース別のCTRとアクション率
 ②クリエイティブ別
 ③広告スペース別のVTRとアクション率
 ④クリエイティブ別
 ⑤リスティング広告のキーワード別誘導とアクション率

■スルーザラインのマーケティング設計
 ①当該商品カテゴリーにおける購買心理形成プロセスを確認する。
 ②当該ブランドの購買に至るまでの各ステージの重要度とそのステージにおける
  生活者設定の影響度を確認
 ③②から大枠での量的メディア配分を仮定。
 ④各ステージでの効果的なマーケティングメッセージの開発。
 ⑤各メディアでの最適なコミュニケーションメッセージとその連携構造を設計。

※メールという配信システムが、スパムメールだらけの現実のなかでどれくらいターゲットの認知を
 得ているのか調べる必要がある。

※会社と自宅のWeb履歴や検索行動には明らかに違う別人物。
 →プライベートなメディアであるSNSはBtoBマーケティングには向かないのだろうか?

※ターゲッティングを対象者の属性を決めることのように勘違いしている広告関係者が多い。
 これはメディアを選定するときにいったんデモグラフィックに置き換えているのに過ぎず、
 間接的なターゲッティングといえる。
 →属性情報が明確にわかることが強みのメディア・SNSの存在意義はどうなるのか?


※ほとんどの場合、広告商品やサービスの設定ターゲット像に的確に合わせたメディアはない。

※行動ターゲッティングによりメディアは、PVの少ない枠の単価を上げることが可能。

※ネット広告は様々なフォーマットがあるため、フリークエンシー5回よりも1回のリッチメディアが効果が高いかもしれないし、逆にバナーを何回も露出する方が得策かもしれない。これは広告メッセージによる。

※行動ターゲッティングによる実績
 http://www.247realmedia.com/EN-US/news/press-releases.html

※フリークエンシーとインターネットCM認知率の関係
http://www.dac.co.jp/dacfiles/200611%20gyao_tyousa.pdf

※「IntelliTXT」によるコンテキシャル・ターゲッティング

※テキストマイニング技術の広告コピー開発への応用
 →クリエイターの意義

※閲覧履歴のあるブラウザのデータベースを供給するビジネスモデル
すごく良いCMだと思った。
公式サイト「夜洗い.com 」から見れる。

商品のコンセプトが、夜遅くまで残業で頑張っている若いビジネスマン、ビジネスウーマン。

「あのね、また会社でミスっちゃった。」
「深呼吸してごらん」
仕事に疲れて癒しを求めているターゲットに、幸せな癒しのある支え合った恋愛、夜帰宅してから洗濯することの啓蒙。

伝えたいメッセージをすごくうまくクリエイティブに乗せて届けられている。

ただ公式サイトの動画がWMPなのがもったいないなー。イメージを伝えることが非常に重要な場面で
世界観が壊れてる。
たまにこういうことしているとこがあるけど、FLV配信の費用を抑えちゃったのかな。

ネット時代10年後、新聞とテレビはこうなる/藤原 治
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TV放送のデジタル化等、ネット到来によりマスメディアは今後どう変わっていくのかを、
元電通総研社長・藤原治さんが論述した書籍。

以前にアメリカジャーナリスト達が製作したコンテンツ「EPIC2014」 は、
Googleとamazonの脅威によってテレビ、雑誌、新聞といったマスメディアが
どう変わっていくかを描いたムービーだったが、それの日本版といった感じ。

メディア関係の仕事につくビジネスマンにはお勧めの一冊。

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▼以下、メモと考察

【ネットとメディアの融合】
ネット
①デジタル②静止画③双方向④蓄積型
メディア(TV)
①アナログ②動画③一方向④フロー

この差異により融合してこなかったものが、
・2011年TV放送デジタル化
・HDDレコーダーの大容量化
・ネットのブロードバンド化
によってほぼ差異がなくなり融合が起こり、「eプラットフォーム」ができる。

そこでは、伝達媒体は全てeプラットフォームとなるため、
マスメディアの「コンテンツ制作と伝達媒体を併せ持つ」という特徴がなくなる。
PRのボトルネックは、「メディア」から「消費者」へと移る。
つまり、コンテンツの選択権が消費者の手に委ねられる。それによりコンテンツ合戦が起こる。

コンテンツ競争に強制的に放り込まれる。
そこでは新聞社も日テレもサイバーエージェントも関係なく競争する。

■eプラットフォーム時代の広告
・検索連動型広告
・プロダクトプレースメント
・アフィリエイト広告
・エクスペリエンス広告
・カスタマイズドアド


※若者の新聞離れとテレビの接触について。
テレビは新聞と違って、つけっぱなしにしておいてもお金がかからない。


※ジャック・バルキン
ブロガーは「第五の権力」の地位を獲得した。「第四の権力」と呼ばれる既存メディアの役割が
政府を監視することなら、「第五の権力」は既存メディアの監視役だ。

→ディベートを避ける日本人の特性として、上記は日本では今日的ではない。
 SNSは、その特性をより強めるはず。それでは、SNSはメディアとなり得にくいのではないか?

※新聞は、「見出し」をペラペラ目を通し、興味を持ったものをじっくりと読む。
 オンデマンド型に近い。

起業ってこうなんだ!どっとこむ/藤田 晋
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サイバーエージェント藤田社長と一橋大学イノベーション研究センター教授・米倉誠一郎の対談本。
サイバーエージェントという株式会社を題材に、ITビジネスについて、企業について、経営についてを対談した内容。

・ネット広告代理店の基本的知識
・ベンチャーマインド、アントレプレナーシップについて
・ネット企業のM&A戦略について
等、様々なビジネス本の題材となっているが、2人程度で企業し、26歳最年少で上場、ネットバブル崩壊を
乗り越えて1300人を越す企業にまで成長させた藤田社長が語ると、非常に具体的で説得力があった。

2006年2月発売だが、執筆はライブドアショック前ということもあり、
ライブドアとサイバーエージェントの長期経営戦略やM&A戦略の対比も書かれている。
今振り返って、市場はサイバーエージェントの戦略が正しかったことを証明している。

▼以下、要約・考察


北海道の経済規模は21兆円。デンマークの一国の経済規模とほぼ同じ
大阪は93兆円。カナダの85兆円より大きい。
地方で起業するということ。

確かにこうやって視点を変えてみると、ビジネスの隙間はより見つけやすくなりそう。



総合広告代理店は、枠を抑えてそこにクリエイティブを投下することにフォーカスしがち。
ネット広告は、枠が無数にあり、さらにクリックしてサイトに誘導するクリエイティブにフォーカスする。
ノウハウに違い。

→広告代理店は変われるか。

→ネットに注力しすぎると、短期的なマーケティングを優先し、ブランディングをおろそかにしがちになる。

※関連記事
「ネット広告万能」の死角
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20071207/142645/
大衆消費財は、イメージによる差別化が重要なため、リッチメディアしか向いていないのではないか?



楽天の物販は3分の1がブログ経由。


昔は映画の対策はテレビCMを大々的にやれば、とりあえずみんな見に行ってくれた。
しかし、今はどこかのブログに「面白くない」と書かれるとあっという間に広がるので、
いくら宣伝費を使って頑張っても本当に面白くなければヒットしないという現象がありえる。

→情報大爆発  そもそも売れない製品は、ブロックバスター方式をどうプランニングすべきか。


アントレプレナーシップ FLOSS
F failure
L left hand
O Out there
S sloppy
S stupid

スティーブジョブス「stay hungry, stay foolish」


アイデアの質は量に比例する フラス・ハンソン
秋山 隆平
情報大爆発―コミュニケーション・デザインはどう変わるか


マーケティングのAISASモデルを提唱した電通インタラクティブ局の秋山 隆平さんの書籍。

○インターネットの普及により、ブログやポータルなどメディアの数が劇的に増えた。
 情報量が従来の410倍に増え、情報量が多すぎることによって迎えた「情報過剰時代」。
 そこでは、情報が多すぎるあまり飽和し、価値が下落する現象が発生する。
○現在の日本は、成熟期に達した商品が多く、機能や性能による差別がが難しくなっている。
 また差別化できたとしても、その情報が消費者の心に染み込んでいきにくい。

上記のような中でいかに消費者の注意を引くことができるかというアテンションに価値が置かれる
というアテンションエコノミーの時代になってきている。

そしてそこで企業はいかに潜在顧客とコミュニケーションをとっていくべきなのか、
広告代理店の意義というものは何なのかを具体例を出しながら様々なデータと共に
学術的に掘り下げている。

インターネット業界と広告業界で現在どのようなことが起こっているのかの全体像を1から理解できる本だと思います。

一回これを読んで全体像を理解した上で、次世代広告コミュニケーション 次世代広告テクノロジー Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告” を読んで具体例を学び、もう一度この本を読むとより理解が増すと思います。

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以下、備忘録と考察。

【ブームの起こり方】
■雪だるま型  例 電車男、恋のマイアヒ
 ①ローカルインタラクション
 ②ローカルでの情報に流れが作られる。
  →どうやって作るのか?
 ③マスメディアによる増幅作用。
  権威付け。これは流行っているという事実。
 ④さらに②の増幅が起こる。

■ブロックバスター方式  例 ハリウッド映画
 ①マスメディアによる権威付け
  →シーディング?
 ②ローカルインタラクション
  →アルファブロガーによる増幅が可能?
 ③ローカルでの情報に流れが作られる。

※代理店の仕事は、雪だるまであれば③をいかに早く、適切に行うか。
 マスメディアによる増幅作用とはどのような手法があるか?CM以外では?
 ブロックバスターであれば、全体をプランニングするべき。

・ブランドに関するネット検索の3分の1は、消費者の見解サイトである。(WOMMA2006年7月)

【AISASモデルそれぞれの段階の消費への影響率調査】


aisas


日本新聞協会「2006年メディアと消費行動に関するインターネット調査」より

※認知・関心の定義とは?クチコミで認知を起こすことは?

【広告効果の捉え方】
■従来 GRP(延べ到達率)
 ○CM GRP=リーチ×フリクエンシー(接触回数)
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20071010/137304/?P=2

■これから
 情報過剰時代においては、到達することと受容されることは違う。
 広告露出(到達)は、消費者の行動変化を保証しない。
 ・「リーチ」「CPM」「GRP」は重要だが、短期的な刈り取りばかりでは、ブランド育成ができなくなる。
 ・情報過剰時代に、訴求内容を絞り込んだ広告を大量に打ちすぎると、商品のライフサイクルを縮めたり、
  ブランドをコモディティー化させてしまったりする恐れがある。
 ↓
 ↓
 ①アテンション・マーケティング 【キーワードはキャッチ】
  情報を受け入れてもらうためのマーケティング
  →「注目率」「興味喚起率」によって測定

 ②ペネトレーション・マーケティング 【キーワードはマッチ】
  消費者の心に浸透させるためのマーケティング
  →これからの開発課題。「マインドシェア」「ブランドイメージ」「ブランド指名意向」では不十分。
   「検索率」「行動率」「情報共有率」を見る。求める「行動」は、企業やサービスによって様々。
  浸透:ワンウェイ広告→双方向広告→経験メディア(イベント、サンプリング)→クチコミ

【アテンションマーケティング】
 ・「テレビっ子」であった段階の世代が一斉に暇になるので、マスメディアの接触時間はまだまだ増える。
  ※果たしてそうか?団塊の世代のメディア接触率はどうなのか?
 ※Webで、どうアテンションを掴んでいくか。
 ・オンデマンド型のネット動画広告の最大の問題点は、フリークエンシーが伸びないこと。
  何回か見ると再生しなくなる。
  →マッチングした動画広告であれば、ペネトレーションするが。。。

【ペネトレーション・マーケティング】
 ①あなた目線の共感性
  ・企業が消費者をわかってくれているというパーソナライズの共感性。
  ・パーソナライズされた広告は「あなた」の購買理由をつくる。
 ②なかま目線の共感性
  ・企業と消費者が同じ方向を向いているという共感性。
  ・コーズマーケティング CSR、市民活動の支援
  ・コーマーケティング 企業と消費者の共同マーケ
 

【クロスコミュニケーション】
 アテンションマーケティングとペネトレーションマーケティングを効率よく組み合わせる。
 ※マスメディアで、幅広いメッセージを打ち、クラスターメディア、インタラクティブメディアで
  多様な情報チョイス(あなたの購買理由)を提供。
 ※個別のブログパーツ?
 ※ブランドサイトでの、情報設計、ユーザビリティ設計は重要。

【クチコミ】
 ・バズは、マスメディアに対する反応としても発生するが、消費者同士の間に情報格差があるときに、
  積極的に書き込まれる。