『碁盤斬り』「公開記念全国生中継舞台挨拶」の詳しい内容 | アンパンマン先生の映画講座

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2024年5月18日(土)11時の回上映前の舞台挨拶。

11時00分、舞台挨拶開始。

司会「このたび、映画『碁盤斬り』の公開を記念して全国生中継舞台挨拶を開催します。公開2日目を迎えたこの日の舞台挨拶は、全国47都道府県327の劇場に生中継です」

登壇者入場。( )内は役。草彅剛(柳田格之進)、市村正親(長兵衛)、小泉今日子(お庚)、國村隼(萬屋源兵衛)、白石和彌監督。

司会「挨拶をお願いします」

草彅「327の劇場ですか。やばい。(中継カメラに)全国の皆さーん、見えてますかー?こんにちは!昨日公開で今日は2日目。昨日と変わらず、ずっとドキドキしていて、朝からエゴサーチしてました(笑)。皆さん喜んでくれたり、楽しい時間を過ごしてくださったようで、嬉しいです。今日は、マスコミが入らない舞台挨拶なので、より深く面白い裏話ができると思います。映画では僕の新しい顔が見られると思います。皆さんに支えられて役を作り上げることができました。一人でも多くの人に観てほしいと思っています。よろしくお願いいたします!」

國村「タイトルにもあるように、囲碁のお話です。囲碁というものは打ち手の品性や性格、手筋などいろいろなものが出てきます。打ち手同士が影響し合う、お互いがお互いにインスパイアされるような関係性です。それでいて、人が変わっていくある種の成長譚でもあり、物語が進んでいくと復讐譚にも変わっていく。そういうところを観て楽しんでいただければと思います」

市村「(会場と中継カメラに手を振って)どうもー!全国の皆さーん、会場の皆さーん、舞台俳優の市村正親でーす。今回は白石監督の映画に出させてもらいました!とても嬉しいでーす!いい親分ができたと思います。全国の皆さーん、観てくださーい!」

小泉「(会場と中継カメラに手を振って)こんなに沢山の皆さんにお会いできて嬉しいです。全国の劇場も見てくれて嬉しいです。お庚は廓(くるわ)の女将で、世の中の表も裏も見て来た貫禄のある女性。格之進とお絹ちゃんを優しく見守っているのか、厳しくしているのか、そのあたりが見どころだと思います。昨日の舞台挨拶には出られませんでしたが、私も昨日はずっとエゴサーチしていました。評判も宜しかったようで、良かったです。見ているので、ハッシュタグを付けて呟いてください!」

白石監督「全国の皆さん、朝から観てくださってありがとうございます。時代劇は初めてですが、草彅さんをはじめ、本当に素敵なキャストの皆さんと、京都という伝統ある場所で今もずっと働き続けているクリエイターの皆さんと一緒に映画作りができました。扮装にもセットにも一つ一つに感動しながら映画を撮っていました。僕の感動の全てがスクリーンに詰まっています。短い時間ですが、よろしくお願いします」

司会「別人のようにかっこいいと評判になっていますが」

草彅「全国に繋がっているんですか?今日は全国的に天気がいいそうです。天気が悪いと出だしが悪いので困る。お天道様も味方してくれた。かっこよさにも色々あるんでね(笑)。僕の顔(のポスター)を貼り付けたバスも運転したりして。(本ポスタービジュアルをラッピングしたロンドンバス)を僕が運転しているわけじゃないけれど。僕に見えないとか、誰だか分からないというのは褒め言葉だと思って受け取っています。それだけ役に入り込んでいたと思うようにしています。僕も観た後に、僕じゃないって思いました。芸能生活の中で、1番大人の顔を撮ってくれたと思います。新しい顔を引き出すことができたのは、共演者の存在もあったし、皆さんと共にお仕事をして来た、色々な繋がりもあってできたのかな。自分が観てもかっこいいって思うし、1番気に入っている作品になっています」

小泉「笠姿がかっこいい!」

草彅「そう!自分でもそう思います!」

小泉「今、笠をかぶったら世界1じゃない?」

草彅「日本を飛び越えて。国際的な。ワールドナンバーワン笠!先輩方に囲まれて、ちゃんと仕事しています!かっこよさのギャップが堪能できるのは、真剣にお芝居に向き合っていたから」

國村「格之進という人はものすごく几帳面な人。この人の碁に僕が演じるキャラクターは心酔しちゃう、そういう関係性です。そこから色々なことが起こってくる。四角四面でカチカチの格之進が源兵衛をはじめ、色々な町人たちと交わる中で、色々なものを見るようになって…」

草彅「『おっさんずラブ』なんですよね」

國村「本当にそれに近い!」

草彅「性別を超えた人間愛の物語」

國村「まさにそう。碁敵(ごがたき)っていう言葉があるけれど…」

草彅「ごがたき?」

國村「碁敵。碁を挟んだ敵同士」

草彅「あー、その碁ね。何かことわざなのかと思っちゃった“百聞は一見にしかず”みたいな」

國村「碁敵はイコール恋人に近いかな。人間としてのリスペクトから始まる物語なので」

草彅「まさに。なるほど、碁敵、碁敵。市村さんとも『おっさんずラブ』がある」

市村「そうそう!つよぽん(草彅剛)は、綺麗な格好で出てくるけれど、だんだん汚くなっていく」

草彅「1番汚いときに出会って…」

市村「そこに何かを見つける、キュン!ってね(指ハートを作る)」草彅が大爆笑。

草彅「僕はずっとキョンキョンにラブし続けている」

小泉「いつも本当にありがとう」

草彅「マジでずっとラブ。だからキョンキョンと國村さんが仲が良いのにかなり嫉妬していて」

市村「ヤキモチ妬かない!」

草彅「だってずっと話してるんだもん」

小泉「京都でもご飯一緒に食べに行った」

草彅「ズルい!どうやったらキョンキョンとご飯に行けるの?どっちが誘うの?」

國村「僕が誘うんだよ」

小泉「國村さんは京都に詳しいから、どこか美味しいお店ないですか?って訊いて」

國村「知ってるよ、一緒に行く?ってなる」

草彅「なるほど。國さんからか。あ、昨日から國さんって呼んじゃってるけれど。大人として色々知っておくことが大事なのか。まずは京都の美味しいお店とか」

小泉「だって、古着屋さんしか行かないでしょ?」

國村「ちょっと狭いんや!」

草彅「確かに、狭いな。テーマはそこだな」

司会「小泉さんが何に興味あるか知ることが大切では」

小泉「韓国語を覚えたい。教えてほしい」

草彅「いいですね」

小泉「チョナン・カンさんに教えて欲しい!」

草彅「少しは教えられるかも…」

小泉「具体化されると引くんだよね(笑)」

草彅「國さんついてきて!」

國村「韓国語でけへんで」

草彅「國さん、韓国作品たくさん出てるから大丈夫」

國村「それは関係ないで〜」

司会「撮影現場もこのように和やかで笑いが絶えなかったのか?」

草彅「監督が穏やかな方なので、『孤狼の血』のようなバイオレンスを撮る方とは思えない」

白石監督「今ほどキャピキャピしていない。現場ではもっと集中していたはず」

小泉「寡黙にやってましたよね」

草彅「そういうところはちゃんと保っておかないと、仕事なくなっちゃう(笑)。あいつ、ずっとふざけてるなってなっちゃうと商売あがったりなので。先輩方に比べたらまだまだだけど、芸能界でちょっと長くやってきたので、侘び寂び(メリハリ?)というのは意識しているつもりです。京都の撮影所は銀幕のスター、高倉健さんも入り浸っていた場所。毎日、映画を観に行くように撮影所に通っていたそうなので、そんなことを思いながらやっていました」

司会「市村さんは寡黙(かもく)だそうですが?」

市村「僕は全然寡黙じゃない。寡黙(火・木)と言うより月水金!」

草彅「すごいね、市村さん!」

市村「こういう事を言ってないと居心地が悪くて」

草彅「今日は記者の方がいなくてよかったです」

市村「ほんとに。いたら、またやってるって書かれちゃう。(中継カメラに手を振って)全国の皆さーん、観てますかー?旅公演っていうのがあるけれど、ここにいて全国に行ってるような気分になる」

草彅「327館って凄いよね。大型映画じゃん!今気づいた。『ミッドナイトスワン』の時はこんなになかったもん」

司会「結構たくさんやってましたよ、中継で」

市村「海外でも賞を獲っているし…。日本だけでなく海外からも注目度が高い作品だ」

白石監督「イタリアで(第26回ウディネ・ファーイースト映画祭)批評家賞(ブラック・ドラゴン賞)をいただきました。イタリアの方達も侍映画を観たいんだな、って思いました」

市村「全世界の映画館でも上映可能ですか?」

白石監督「可能です」

市村「全世界のみなさーん!(カメラに手を振る)目標は高い方が良い。凄く誇らしいし、幸先のいいスタートになりました」

市村・草彅「今のカメラは凄いね、みんなの顔が見えるよ」「本当だ」

草彅「月水金や寡黙の話。今日は自由に話していい、ここでしか聞けないトークになっているのでいっぱい拡散してください」

司会「舞台挨拶とは全く違う雰囲気の映画が楽しめる」

草彅「こんな雰囲気の映画だったら、お客さん入らないよ」

市村「僕が出てきたら、月水金の人出てきたーってなったら嫌だな」

司会「役作りのこだわりについて」

草彅「僕は、あまりやらない。皆さんのオーラとグルーブ感っていうのかな。皆さんの顔を見たらその役になれるというか。(芝居は)1人ではできないと思うので、やっぱり皆で作り上げていくものだし。いくら台本を読んでも、実際に目の前に役者さんがくると、台本を読んだときとは違う感覚がたくさん出てくる。その場その場で感じたことを表現するのがフレッシュだし、伝わるものがあります」

司会「アドリブも?」

草彅「アドリブはしない。セリフは台本通りにちゃんとやります。でも、台本に書かれてないものが湧き出て良いものになるとは思っているから、そうなりたいなと心がけてやっています」

國村「カメラが回っている間、考えているのはいかに自由でいられるかどうか。相手を感じながらリアクションが出る。それがお芝居というもの。10テイク撮ったら、10テイク違うものが撮れる。同じものは2つとないですよね、監督?」

白石監督「まさにその通りです。もちろんチョイスはするけれど、ここにいる人達は俳優としてはもちろんですけれど、人としても色々な経験をされて、色々な意見を持っている。そういう懐の深さ、大きさがスクリーンに焼きついています。そういう形で大きく映画に貢献してくれる、凄い俳優が集まってくれた凄い映画です!」

市村「衣裳を着て、かつらをつけることで役になりきれる。役の気持ちが入った状態で、いざ、格之進と対峙したときに、つよぽん演じる格之進が、僕が演じる長兵衛を見ることで役が出来上がる。格之進とのやりとり、呼吸をする中で、芝居というものは生まれてきます」

小泉「相手とのやりとりで芝居が生まれる。さらに今回は時代劇。自分のセリフを言うための説得力として、知らない情報を埋めていくという作業は皆さんしていると思います。そんな中で古い映画に出会ったりして。この映画に出てくる、まあるい橋が出てくるかっこいい映画にも出会いました。そういうふうに埋めていく時間も楽しかったりします」

白石監督「吉原大門の前の橋は『緋牡丹博徒 お竜参上』(加藤泰監督)にでてくる橋。京都(撮影所)にその図面が残っていたので作成した。奥の方は狭くて、映画的な表現を使って長く見せている。映画の知恵が詰まったシーンなので、そんな所にも注目してほしいです!」

小泉「今回、初めて京都の撮影所に行って。やっと(映画俳優に)仲間入りした感じ。美術もプロフェッショナルでとても素敵でした」

白石監督「貧乏長屋の障子紙も近づくと、破れた所を貼っている」

小泉「江戸と京都での作りの違いも、ちゃんと美術さんが作ってくれたことにも感動です!」

11時25分、フォトセッションの時間。数分。

司会「最後の挨拶をお願いします」

草彅「キョンキョンとは29年前に共演して、市村さんとはドラマ『ホテルビーナス』以来20年ぶり。國村さんとはドラマ『ペペロンチーノ』以来3年ぶりで。今朝はそんな御三方と会うんだなって色々と思い出していて。僕はこの映画で何を伝えたかったのかなって、ちょっと真面目なことも考えている中で、僕と格之進の決定的な違いって何だろうって思ったときに覚悟が違うって気づいて。生きる覚悟が僕にはない、格之進にはある。ネガティブじゃなくて。切腹とか生きる覚悟、すなわち死ぬ覚悟。そういう覚悟を持って格之進は生きている。覚悟の度合いが違うって思ったんです。でも、シンプルに考えたら、毎日生きているってことは毎日命がけってこと。格之進から『お前は覚悟を持って生きているのか?』みたいに言われているように感じて。覚悟を決めて生きていく人生ってかっこいいじゃないですか。何気なく過ごしている日も覚悟を決めて命をかけて生きている訳だから、そういうマインドを新しく格之進に書き換えてもらったのかなと今日、思いついちゃって(笑)。僕の作品を観て心を動かしてもらいたい。そういうことに命をかけてこれから生きていこうかな、ということを格之進から教わりました。そんな気づきも、共演者との出会いがあったから。みなさんと長くお付き合いしてきた中から生まれたのかなって。便利な時代だけど、自分が何に命を燃やしているとか、少し考えてもらえるきっかけになればいいな、なんて、最後にそんなことを話したかったんです!」

11時32分、舞台挨拶終了。

(写真は「公式ホームページ」より)

 

 司会が「別人のようにかっこいいと評判になっていますが」と言うように、草彅は映画では寡黙で実直な柳田格之進を演じていたが、舞台挨拶の間は白石監督が言うようにずっと「キャピキャピ」していて、そのギャップに驚く。それを「演技が上手い」と言うのだろう。草彅の挨拶もキャピキャピしすぎで、司会にかっこよさを聞かれたのに、今日の天気を話すのはズレてるし、ラッピングバスの話も要領を得ない。特に最後の挨拶は長くて、何を言いたいのかよく分からなかった。これも草彅の人柄を表しているので、面白かった。

 市村も草彅に負けず明るく、「寡黙(かもく)」の話になると「火・木(か・もく)じゃない、月・水・金だ」と切り返すとは、なかなか頭が良いと感心した。

 草彅の「いくら台本を読んでも、実際に目の前に役者さんがくると、台本を読んだときとは違う感覚がたくさん出てくる」と言う話は、役者としての考えが分かって感心した。國村の「相手を感じながらリアクションが出る。それがお芝居というもの。10テイク撮ったら、10テイク違うものが撮れる」や、市村の「格之進とのやりとり、呼吸をする中で、芝居というものは生まれてきます」も同様で感心した。また小泉や監督から、セットの江戸の家の造りや橋にも工夫がある事を知って感心した。

 草彅が言った「より深く面白い裏話」を期待したらほぼ無かったが、各俳優の人柄が出て面白い舞台挨拶だった。