監督:白石和彌 2024年
主な登場人物(俳優)役柄
柳田格之進(草彅剛)浪人。江州彦根藩の進物番の下士だった。
お絹(清原果耶)格之進の一人娘。
萬屋源兵衛(國村隼)質屋の萬屋の亭主。
弥吉(中川大志)萬屋の手代。
徳次郎(音尾琢真)萬屋の番頭。
お庚(小泉今日子)吉原の半蔵松葉の大女将。
長兵衛(市村正親)賭け碁を仕切る町の親分。
柴田兵庫(斎藤工)格之進と因縁のある武士。
梶木左門(奥野瑛太)彦根藩の藩士。
江戸の町で囲碁を打つ町人。
(タイトル『碁盤切り』。オープニングクレジット)
浪人の柳田格之進は、娘のお絹と貧乏長屋の八兵衛長屋で暮らしていた。大家が半年分も滞った家賃の催促に来るが、格之進は「夕刻まで必ず」と約束する。お絹が心配すると、「お庚さんの篆刻が仕上がる」と答える。
〔江戸吉原〕
格之進は吉原の半蔵松葉に行き、大女将のお庚に篆刻を渡す。格之進とお庚が囲碁を打ち、お庚は勝つ自信があったが、格之進が逆転する。格之進は「石の下と言って、自分の石を取らせて、相手の石を取る。実践ではまずない」と教える。お庚は篆刻料が2分のところ、碁の稽古料だと言って1両を渡す。
帰り道、格之進は不忍池の碁会所に立ち寄る。すると初めて現れたという恰幅のいい男が、汚い手で次々に勝ち、碁会所の客はことごとくやられて金を巻き上げられていた。男が格之進に碁の勝負を申し込んむ。普段は賭け囲碁をしない格之進が、手持ちの1両を賭けて源兵衛と囲碁をする。お互い強く、接戦が続く。格之進が有利になると、男は苛立つ。格之進はまだ勝敗が付いていないのに、投了して帰る。男は不思議な心持で格之進を見送る。
家賃の催促に来た大家に、お絹が「預かった反物に謝って染みを付けたので、弁償しなければならない」と嘘を言って、家賃の支払いを伸ばしてもらう。大家は「気にするな」と優しく言って帰る。お絹は「賭け碁に手を出すなんて、父上らしくない」と言う。
男は質屋の萬屋の亭主の萬屋源兵衛で、手代の弥吉が「帳面が10文合わない」と報告すると「合うまで計算をやり直せ」と命じる。さらに他の手代や番頭に、掃除の埃の残しや植木への水かけ忘れを厳しく指摘する。
格之進の家にお庚が来て、頼んでいた着物を受け取る。お庚は「お絹の縫い方は心が籠っている」と褒め「そろそろいい人と一緒になったら」と言う。お絹は「父の世話をしなくては。一人ではお湯も沸かせない」と話す。
格之進は印版屋に行き、篆刻の注文がないか聞くが、無かった。質屋の萬屋の前を通りかかると、中から怒声が聞こえた。格之進が店の暖簾をくぐると、一人の旗本が「預けていた家宝の高麗由来の大井戸茶碗が割れていたので、500両で弁償しろ」と主人に怒鳴り声をあげていた。主人は格之進と碁会所で賭け碁をした源兵衛だった。格之進は「書画、骨董に詳しいので、目利きをさせてもらう」と申し出る。茶碗を見た格之進は「この茶碗は高麗由来の物でも、高貴な物でもない。10文もしない安物だ。家宝が安物だと分かると家名の恥になるので、帰った方が良い」と話す。旗本は怒りながら帰り、格之進も去る。
弥吉が格之進を追いかけ「主人がお礼をしたい」と引き留めるが、格之進は「気遣い無用」と言って帰る。番頭の徳次郎は源兵衛に「裏で旗本と一芝居売って、大金をせしめる魂胆では?後で高価な報酬を請求されるといけない」と進言する。源兵衛も同意する。
源兵衛と徳次郎は、碁会所で格之進の家を教えてもらい、八兵衛長屋へ向かう。道では子供達が源兵衛を「ケチべえ」と呼ぶ。源兵衛が格之進に会い、お礼に10両払うと言うと、格之進は「いわれのない物は受け取れない」と断る。お絹も「父は一旦こうと決めたら、何があっても後には引きません」と教える。
源兵衛は碁会所の件で「あの石は死んでいた。決着はついていた。なぜ勝ちを譲った」と聞く。格之進は「相手といさかいになった嫌な思い出がある。それを思い出した」と答える。源兵衛は「姑息な手に嫌気がさして、勝ちを譲ったのか」。格之進「嘘偽りなく打ちたいと思った」と答える。
部屋に碁盤があるのを見た源兵衛は「勝負して私が勝ったら10両を受け取れ」と勝負を挑む。窓から見ていた長屋の住民は「源兵衛に勝ってぎゃふんと言わせたい」「勝ったら10両を貰えないので、負けてほしい」と様々。格之進が勝つ。源兵衛は「嘘偽りのない碁を打った。格が違い過ぎる」と言うと、格之進は「久しぶりに良い碁が打てた」と言う。源兵衛は「これを縁に、今後もお手合わせ願えないか」と頼むと、格之進は「喜んで」と承知する。
源兵衛と格之進は、源兵衛の屋敷や格之進の部屋で碁を打つ。
夜遅く、長時間の対戦のときは、付添いの弥吉もお絹も居眠りして、お互いに笑う。弥吉は「旦那様はケチベえと呼ばれていて、10文合わない時もひどく叱られた。10文ではそばも食べられないと言うのに」とお絹に話す。
格之進は源兵衛に「江戸に来て長屋暮らしを始めて10年になる。それまでは江州彦根藩で進物番をしていた」と話す。源兵衛は「道理で骨董に目が利くはずだ。どうして浪人暮らしを?」と聞く。格之進は「色々と」と言葉を濁す。
源兵衛は格之進や長屋の住民に酒を奢り、宴を催す。源兵衛は弥吉に「碁を学んだら?」と勧めると、弥吉は「勘弁して下さい。頭が痛くなる」と断る。源兵衛が「ここに通って教えてもらおうと思ったのだが」と言うと、お絹に会えると思った弥吉は「喜んで」と承知する。
弥吉は格之進に碁を教えてもらう。弥吉がお絹と碁を打つと負ける。
萬屋で番頭の徳次郎が「この皿で5両貸してほしいと客が言っている」と伝える。源兵衛は「10両の値打ちがある。10両貸しなさい」と言う。徳次郎が「相手は素人で、価値が分からないので」と言うと、源兵衛は「私は嘘偽りのない商売がしたい」と言う。
源兵衛が「弥吉の腕は?」と聞くと、格之進は「品がある」と答える。源兵衛は「弥吉は私の遠い親戚で、元武士だった。将来は跡目を継がせるつもりだ。番頭にも伝えてある」と教える。そして、次の十五夜の中秋の名月の月見の宴に、格之進とお絹を招く。
それを聞いたお絹は「着て行く着物がない」と言うが、格之進は、妻の形見の着物を直して着て行くように言う。
お絹は松葉のお庚に着物の着付けをしてもらう。お庚は「ケチべえが嘘のない商売をしてから、逆に繁盛している」と感心する。お庚はお絹に帯を挙げる。お庚は「好きな人でもできたのか?」と聞き、お絹の唇に紅を塗る。
そこに足抜けをしようとした遊女が捕まって連れてこられる。お庚は「足抜けしようとしたからには、覚悟ができているのだろうね。行燈部屋で仕置きをして」と下人に命じる。お庚はお絹に「嫌な所を見せたね。ここは極楽と言われるが、裏は地獄。因果な商売だ」と言う。遠くから遊女の悲鳴が聞こえる。
格之進とお絹は、萬屋の屋敷の中秋の名月の宴に行く。宴の途中で、源兵衛は格之進を碁に誘い、離れには「四方木口」と呼ばれる立派な碁盤が用意されていた。2人は碁を打つ。
宴が進み、番頭の徳次郎が酔っ払う。伊勢屋喜助が源兵衛に用立ててもらった50両を返しに来て、徳次郎の代わりに弥吉が受け取る。弥吉はその50両を、離れで碁を打っていた源兵衛の元へ届ける。
しばらくすると、かつて彦根藩で格之進の部下だった梶木左門という武士が、格之進を訪ねて萬屋へやって来る。左門は「無くなった狩野探幽のかけ軸は、柴田兵庫が盗んだと分かった」と告げる。
格之進は昔を思い出す。格之進と兵庫が碁を打つ。兵庫は「星」という珍しい手を得意としていた。劣勢になった兵庫はイライラして、不正を殿に直訴した格之進に「お前のために沢山の武士が藩を追われた。何だ、その目は。進物番の分際で、図に乗るな」と言って出て行く。
格之進が城外に出ると、兵庫が刀を抜いて襲い、格之進は逃げまわる。それを見た他の武士達が兵庫を止めるが、兵庫はその武士にも斬りつける。格之進は刀を抜いて兵庫に斬りつける。兵庫は取り押さえられる。
左門は「兵庫は藩を出奔し、中山道で賭け碁をして流れ歩いているらしい」と教える。さらに左門はお絹に聞かれないように、野外で格之進に「兵庫は格之進の妻の志乃に、格之進の身の潔白を証明してやると持ちかけ、無理やり手籠めにしていた」と伝える。志乃はそれを苦にして琵琶湖に身を投げたのだった。
格之進が源兵衛の所に戻るが、格之進は碁を打つ心境でなかった。源兵衛はこの試合を「打ち掛け」とし、持ち越しにする。
格之進とお絹が帰る。橋の上でお絹が「父上。大義の嫌疑が張れたのに、なぜ黙り込んでる?」と尋ねる。格之進は「言うまいと思っていた」と言って、事の次第を話す。
格之進が帰った後、番頭の徳次郎が源兵衛に、弥吉が渡した50両はどうしたと聞く。源兵衛は金を受け取ったが、その後の記憶がなかった。徳次郎は弥吉に「この部屋にいたのは旦那様と格之進だけだ。格之進に50両を尋ねてこい」と言う。
家に帰った格之進は、妻の仇の柴田兵庫を討つために出かけようとする。格之進を見つけた弥吉は、格之進に「50両を知らないか」尋ねる。格之進は「無礼者。人様の金を私が盗ったと思うのか」と激昂する。弥吉は、50両が戻らないと奉行所に話すと言う。格之進は家に帰る。
その夜、格之進は井戸水で体を清める。その様子をお絹が見る。
朝、格之進は手紙をお絹に渡し、お庚に持って行くように頼む。嫌な予感がしたお絹が途中で手紙を読むと「訳あって切腹することになった。私の死後は、お絹の面倒をみてくれ」と書いてあった。驚いたお絹は急いで家に帰り、切腹しようとしていた格之進を止め、「母の仇も討たず、濡れ衣を着せられたままでいいのか。切腹したら、金を盗んだと認めた事になる」と詰め寄り、家を飛び出して行った。
お庚はお絹に「私は9歳の春に吉原に売られ、地獄を見て育った」と話す。
格之進の家にお庚がやって来て50両を渡し「お絹は格之進の無念を晴らすため、この50両を借りた。大晦日までに返せばお絹を無傷で返すが、それを過ぎたら遊女として店に出す」と言う。
格之進は萬屋に行き、弥吉に50両を渡す。格之進は「盗ったはずもない50両が出てきたら、弥吉と源兵衛の首をもらう」と激怒する。弥吉は格之進の気迫に押されて約束する。
格之進が50両を持ってきたことを聞いた源兵衛は、「柳田様は決して金を盗む人ではない」と言い、徳次郎と八兵衛長屋へ飛んで行く。しかし、家の前には「訳あって旅に出る。家賃は部屋の中の道具を売ってくれ」と張り紙があり、格之進は長屋を引き払った後だった。
兵庫は賭け碁をしながら中山道を流れているらしいと聞いた格之進は、中山道の宿場の碁会所を回って、足が悪い大男が賭け碁をしていないか探し回るが、兵庫は見つからなかった。
〔塩尻宿〕
冬になろうとしていた。左門は殿に事情を話し、仇討赦免状を携えて格之進と合流した。格之進は左門から、格之進の直訴で藩を追われた武士の消息を聞くと、皆苦しい生活をしている事を知る。左門は格之進に、殿もどうしても必要な人なので藩に戻ってほしいと言っていると伝えるが、格之進は固辞する。
弥吉は吉原に届け物をした帰りに、お庚達と一緒にいたお絹に会う。弥吉はお絹に「どうして何も言わずに姿を消した?この近くに住んでいるのか?格之進は?」と聞く。お絹は「何を呑気な事を。あなたのせいで、あの50両を作るために、私はどれだけ…。金輪際、私の前に姿を現さないでください」と言って、お庚達と一緒に半蔵松葉の建物に入る。弥吉は驚いて見る。
源兵衛が帰って来て、弥吉に吉原の三浦様への使いについて聞く。弥吉は「柳田様は…」と言いかけるが、「柳田様はどうしていらっしゃるのでしょうか?」と言い直す。源兵衛は「江戸中探してもいないので、江戸を離れているのでは」と言う。
格之進と左門がある碁会所で、柴田兵庫と言う足の悪い大男がいなかったか聞きこみをすると、そこの主人が「大男が来た。足が悪いかは覚えていない。変わった碁で、星に打ち、皆全く歯が立たなかった」と教える。2人は、その男が兵庫だと確信する。さらに「男は3日前に江戸に旅立った。大晦日に両国で大きな賭け碁の会があるそうだ」と情報を与える。格之助と左門は、急いで江戸に向かう。
吉原を神楽が回り、松葉にもやって来る。武士がお絹を見て、お庚に「300両で身受けしたい。返済の期限は今日だが、返す当てがないのだろう」と言う。
格之助と左門は船で賭け碁の会場にやって来る。会を仕切っている親分の長兵衛は「今日の会は紹介のある方だけの会だ」と2人の参加を断る。格之進は土下座して「どうしても会いたい人が碁を打っている。詳しい事は話せないが、訳あってどうしても会わなければならない」と必死で頼む。長兵衛は格之進と左門を、刀を預かって中へと通す。
会場の奥で柴田兵庫は賭け碁を打っていた。格之進は「とうとう突き止めたぞ。掛け軸は返してもらう」と言う。兵庫は「久しぶりだな、格之進。掛け軸は売った」。格之進「このままでは済まさない」。兵庫「反吐が出る。おぬしはどれほど恨まれているのか知らないのか。直訴で役を解かれた者は細々と生きている。そのために掛け軸を売った」と言う。
格之進は「碁で決着をつける。私が勝ったらお主の首を貰う。おぬしが勝ったら私の首を挙げる」と言う。兵庫は「私には何の得にもならない」と断ると、長兵衛親分が「命を賭けるのは、よくよくの事。一生に一度の頼みを受けてさし上げなさい」と言う。兵庫は渋々了解し、長兵衛親分が立会人になる。
格之進は星を打ち、兵庫も星を打つ。どちらが勝つか賭けが行われるが、互角の勝負で、周りで見ている人々も「どちらが勝つか、さっぱり分からない」と言う。
萬屋では源兵衛が額に掲げる来年の字「不得貧勝」を書き、「むさぼれば勝ちを得ず、と読む。己だけ勝とうとすれば、勝負に勝てない」と番頭達に説明する。
格之進と兵庫の勝負は夕方になっても続く。兵庫が白石を打とうとして、悩んで止める。周りの人は「とっとと勝負を付けろ」「死んでいるのでは?」「石の下だ」と騒ぐ。
夜になるが、兵庫の手は止まったままである。長兵衛親分が「お打ちください、柴田殿」と急かす。兵庫は水を1杯貰い、石を打つ。格之進が次の石を打とうとすると、兵庫は杖の仕込み刀でいきなり格之進に斬りつけ、格之進が怪我する。
長兵衛親分の子分が兵庫を止めようとするが、兵庫は強く、座敷は大乱闘になる。格之進は兵庫に体当たりし、2人は庭で戦う。長兵衛は持ってこさせた刀を、格之進に投げ与える。斬り込んできた兵庫に向かって格之進が刀を振り上げると、兵庫の腕が斬り落とされる。
観念した兵庫は「自分では切腹できないので、代わりに格之進に介錯してほしい」と頼む。格之進は了承し、兵庫の首を斬り落とす。左門は格之進に「見事に本懐を遂げた」と褒める。
長兵衛は2人に、賭け碁の前に兵庫が預けた狩野探幽のかけ軸を見せる。兵庫が売ったと言ったのは嘘だった。本懐を遂げたとお絹に知らせに、格之進と左門が吉原に向かって走る。浅草寺の鐘が鳴る。午前0時の「中引け」になると吉原の入口の大門が閉められて、中に入れなくなる。
萬屋で徳次郎が居間の額を来年の商訓に掛け替えようとすると、額の裏から50両の包みが落ちてくる。徳次郎が源兵衛に渡すと、源兵衛は、碁の途中で厠に行こうとして、額の裏に50両を置いたまま忘れていたのを思い出す。
源兵衛は「50両が出て来たという事は、柳田殿が持ってきた50両は、どうやって工面したのか?」と不思議がる。それを聞いた弥吉は「申し訳ありません。金を貰っていきます」と言うと、50両を掴んで吉原に向かって走る。
格之進と左門は吉原へ駆け来るが、中引けの時刻になり、直前で門が閉められる。そこへ50両をお絹に返そうとした弥吉も現れる。弥吉は「申し訳ございません」と言って、格之進に50両を渡す。格之進は「やはり出て来たか。50両が出てきたら、弥吉と源兵衛の首をもらうという約束は忘れていないな」と確認すると、弥吉は「決して忘れていない」と答える。
格之進と左門と弥吉は萬屋へと向かう。格之進は源兵衛に「50両が出てきたら、弥吉と源兵衛の首をもらうという約束だ」と言って、左門から刀を借り、源兵衛の首を切ろうとする。
弥吉が止め「私の首を取ってください。旦那様の首は私が勝手に約束したものです」と言う。源兵衛は「若い弥吉を死なせるわけにはいかない。私の首を取ってください」とお互いに庇う。格之進は「もういい。約束通り、2人の首を貰う」と言って、2人を並ばせて座らせる。格之進が刀を振り下ろすが、2人は無事で、傍の四方木口の碁盤が真っ二つに斬られていた。
翌朝、吉原の半蔵松葉でお絹はお庚に「年が明けました。約束通り店に出ます。覚悟はできています」と言う。すると、格之進と左門がやって来る。左門はお絹に「父上は柴田を討ちとり、本懐を遂げられました」と伝える。格之進はお庚に「私の濡れ衣が晴れました。50両を返します。約束の期限に遅れて申し訳ない」と50両を返す。お庚は「期限とは何の事ですか?お絹、 父上が迎えに来たのです。帰る支度をしなさい」と言う。
左門は兵庫から取り返した掛け軸を持って、藩に帰ろうとする。格之進は「その狩野探幽の掛け軸を私にくれないか。兵庫が掛け軸を売った金で、藩を追われた者達の窮地を救ったと聞いて嬉しかった。掛け軸を売って、私がそうしたい」と頼む。左門は「この掛け軸は、私は見なかった事にします」と言って掛け軸を置いて出る。
源兵衛の屋敷で弥吉とお絹の祝言が行われる。お庚がお絹の母親代わりに出席する。徳次郎が「高砂」を歌う。
源兵衛は格之進に「弥吉に家督を譲り、隠居する」と伝える。格之進が「まだ早いのでは」と言うと源兵衛は「番頭全員で弥吉を支える」と話す。
格之進は「四方木口の碁盤はもったいない事をした」と謝る。源兵衛は「縁起がいい。私たちの身代わりになったのだから」と言う。源兵衛は、あの日、途中だった決着を付けようと言う。源兵衛が代わりの碁盤と碁石を茶室に持って来ると、格之進の姿はなかった。
(エンドクレジット。1人で旅に出る格之進)
(写真は「映画com」より)