『陰陽師0』ネタバレの感想 学生の安倍晴明の活躍が面白い | アンパンマン先生の映画講座

アンパンマン先生の映画講座

映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

評価 4/5 ☆☆☆☆★

 平安時代の陰陽師として一番有名な安倍晴明の話であり、夢枕獏原作の映画『陰陽師』(2001年)、『陰陽師Ⅱ』(2003年)も面白かったので、楽しみにして見た。

 本作は清明がまだ陰陽師になる前の学生の時代の話だというのが興味を持った。有名な陰陽師になるはずなのに、学生の清明は育ての親の賀茂忠行が言うがままに陰陽寮に入ったが、出世する気はないと言うのが面白い。また、呪いは、催眠にかかりやすい香の煙の中での暗示や催眠術だと言ってのけるのが面白い。

 遍照寺の寛朝僧正の所で、同席した公卿達に陰陽道の技でカエルを殺してみせるようにせがまれ、術を用いて手を触れずにカエルを潰した。と言う話は『今昔物語集』に載っている有名な話らしいが、後のネタ晴らしで、蛙は逃がし、血しぶきは水滴で、暗示効果がある香の元で、催眠術で破裂したように見せただけと言うのが面白い。

 清明は出世には興味がないと言うが、得業生の橘泰家が殺害され、その犯人を博雅の権力を借りて調査する。その手法は証拠を集めて合理的(今で言う科学的)なのが興味深い。最初は泰家殺しの犯人は、てっきり泰家にいじめられていた平郡貞文だと思った。しかも、平郡貞文は45歳にもなって結婚もせず、昇格を焦っていたので、上の位の得業生を殺す動機は十分だと思ったのだが。逆に呪いの木札の筆跡が似ていると、清明が貞文から泰家殺しの容疑者にされるのが可哀そう。

 泰家殺しの黒幕が藤原義輔だったと言うのは意外だった。藤原義輔は清明の両親殺しの犯人でもあり、出世のために陰陽師としての才能がある者を殺していたと言うのは恐ろしい。どうやら藤原義輔が最強の毒「蠱毒」を作って泰家に飲ませたらしい。でも即死ではなく、水を飲みに慌てて井戸にやって来たらしいので、本当に最強の毒なのだろうか?

 さて清明は、呪いは暗示や催眠術だと言っていたが、その後は金龍を瓶に封じ込め、空間を切り裂いて脱出し、火龍がやって来る前に扉を封印し、水龍を召喚して火龍と戦わせと、陰陽師らしく呪文で戦うのが面白い。

 最後には何と、当時最悪の呪霊である菅原道真を召喚してみせ、藤原義輔を葬るのが凄い。しかも道真ゆかりの飛梅まで使うとは感心した。

 また、本作は源博雅と徽子女王の淡い恋の話になっているのも面白い。この二人はどちらも醍醐天皇の孫であるが、徽子は伊勢神宮の斎宮だったので、博雅より身分が高いのだろう。この時代は身分制度が重要なので、博雅は徽子を好きなのに、結婚を申し込むことはできないらしく、はたから見ていてもどかしい。そうしているうちに、帝が徽子に結婚を申し込む(帝は徽子の叔父だが、当時は叔父と姪でも結婚できたの?)。帝の意向では、博雅は諦める外にないのだろう。でも博雅は「私があなたを好きな気持ちは、変わらない。誰といても変わらない」と純愛(本当は不倫?)を誓うのは立派である。博雅と徽子の精神世界で、博雅と徽子がお互いの心を打ち明けると、冬のように殺風景だった世界が、一気に花が咲いて春の様な景色になるのに感心した。

 最後に帝は賀茂忠行に、帝専属の陰陽師「蔵人所陰陽師」にならないか聞くが、賀茂忠行は得業生になったばかりの安倍晴明を推挙するとは立派である。この帝は後の村上天皇であり、安倍晴明は彼の元で「蔵人所陰陽師」になるはずである。つまり続編が創られる予感がする。是非続編を作ってほしい。評価は「4」である。