『流転の地球』ネタバレの感想 壮大な話に感心したが流転でなく流浪では? | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

評価 3/5 ☆☆☆★★

 『流転の地球 太陽系脱出作戦』(2023年)が公開されるが、第1作『流転の地球』(2019年)の前日譚なのだそうで、まず第1作『流転の地球』を見た。

 まず、太陽の温度が急激に上昇し、100年後には地球を呑み込むという。つまり太陽の寿命が来て赤色巨星になるという事だが、太陽の寿命は100億年と言われ、赤色巨星になるのは50億年後で、まだまだ先である。また、赤色巨星になった太陽は半径が200倍(70万㎞×200=1億4000万㎞)に膨張するが、地球の軌道半径は1億5000万㎞なので、かろうじて呑み込まれないはず。

 さて、地球が消滅する場合は『地球最後の日』(1951年)のように、宇宙船で脱出する事も考えられるが、建造に時間がかかり、移住できる人数も限られている。地球にロケットエンジンを建設して、地球ごとケンタウルス座アルファ星に移住しようというのは感心した。ただし、極寒になる地表に住めないので地下都市に移住し、半数の人類しか生き残れないが、それでもかなり多い。日本の『妖星ゴラス』(1962年)も、地球に黒色矮星ゴラスが衝突するので、地球の南極にロケットエンジンを建設して地球の軌道を変更するが、本作の方が規模が大きいのに驚く。

 地球エンジンの燃料は岩石らしいが、鉄より原子量が軽い元素を核融合させるのだろうか?燃料が至る所にあるのは良いが、それより海水の水素(トリチウム)を核融合させた方が効率が良いと思う。

 さて、チーとドゥオドゥオの義兄妹は地表に出て祖父の輸送車を運転するが、何が目的だったのだろう?地球の駆動エンジンの約半数が一斉に故障するが、その原因は何だろう? その5000カ所のエンジンの再点火のために苦労して着火石を運ぶが、エンジンの近くに着火石を常備しておく考えはなかったの?

 さらに、推力不足で地球が木星の重力に捕らえられて衝突軌道に入る。そこで木星表面を爆発させた爆風で、地球を引き離す。地球を押し戻すほどの爆風なら、地球に甚大な被害をもたらすと思うが。てっきり、着火石を投入して木星大気の水素に核融合反応を起こすのかと思った。ところが木星が地球の大気を捉えて酸素が混入したため、地球エンジンの炎を伸ばして水素を燃やすのだとか。地球の直径は木星の11分の1で表面の大気層はごく薄く、その僅か2割が酸素である。水素の爆発濃度は10 % ~75 %で爆発しやすいが、木星の水素の量に対して酸素は極々少なく、爆発するのだろうか?

 結局、炎の高さが500㎞足りず、リウが犠牲になって宇宙ステーションを炎に突っ込ませ、燃料の爆発で木星表面の水素に点火した。人工冬眠区域を切り離した時に、自分も一緒に避難すれば良いのでは?

 地球エンジンの炎を一旦消し、7倍の高さに再点火する時に再び着火石が必要だった。チーがいるスラウェシ島だけでこの作戦を行ったのかと思ったら、世界中の地球エンジンで行っていた。つまり着火石はさらに1万個あった事になる。こんなに沢山あったのに、何で着火石を運ぶのに苦労していたの?

 リウは自分から人工冬眠を解除できるの?ハンは酸素不足で死亡したが、ヘルメットが割れたチーは酸素不足で死なないの?ドゥオドゥオが呼びかけしたら、物凄く沢山の協力者がやって来た。チーが上海からスラウェシ島まで連続で20時間かかったのに、移動時間が早すぎない?しかも多すぎない?

 壮大なSF映画で感心したが、物語の大半はエンジンを再点火するために着火石を運ぶ話と、炎を長くするのに苦労する話で、余りSF的でない。しかも上記のように、おかしい点がかなり多数ある。自己犠牲でお涙頂戴のストーリーも感心しない。評価は「3」である。

 題名は中国語『流浪地球』、英語『The Wandering Earth』で「流浪の地球」の意味。邦題は『流転の地球』だが、「流転」とは「たえず移り変わること」、仏教用語で「六道四生の迷いの生死を繰り返すこと(輪廻)」なので、「流浪」と意味がだいぶ違う。なぜ『流浪の地球』にしなかったの?