映画『変な家』は変な所がいっぱい | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

 

映画『変な家』は家の平面図の間取りから、殺人のための隠し通路、子供を監禁するための部屋、など様々な事を推理するのに感心した。ただし「ネタバレの感想」にも書いたが、映画のストーリーに変な所が沢山あるのに気づいた。さらに、推理の根幹に関わる映画の家の間取りが、ネットの『オモコロ』や小説版の間取りと違っている事に気づいた。そこで映画『変な家』の変な点について考察したい。

 

1.最初に台所とリビングの間の空間に気づくのは変

 予告編でこの家の間取り図が出て「あなたにはこの家の異常さが分かりますか?」と問いかけている。下図は映画の家の間取りである。私はこの間取り図を見て、台所とリビングの間の空間は収納か棚だろうと思って、気にしなかった。普通の人は空間が異常だと気づかないと思うが、それに真っ先に気づく柳岡の妻は変である。

2.台所からリビング・ダイニングへの動線も変

柳岡の妻が台所とリビングの間の空間に気づくほど台所を注意深く見たなら、台所からリビング・ダイニングへの動線も見たはず。料理を持って台所からリビング・ダイニングにいくのに、ドアを2枚も開かなければならないのが大変だと気づかなかったのだろうか?

 

3.子供部屋の間取りの異常性に気づかないのは変

 私が予告編でこの家の間取り図を見て変だと思ったのは、やはり子供部屋に窓がない事である。柳岡夫妻は、将来子供が生まれるのを予定して一軒家を買おうとしたのだと思うが、子供部屋の窓の事は気づかなかったのだろうか?また、栗原も言っているが、ドアが2重になっているのも変である。しかも内側のドアはナンバー・ロックになっているのも、かなり変である。柳岡夫妻は家を内覧したそうだが、その時に子供部屋の異常性に気づかなかったのだろうか?

 

4.子供部屋の床の傷に気づかないのは変

柳岡夫妻が内覧で子供部屋を見たなら、床の無数のひっかき傷に気づかなかったのだろうか?中古住宅を売るなら、破損個所は修理するはずで、床を張り替えなかったのもおかしい。もし、不動産屋が子供部屋に案内しなかったとしたら、意図的に子供部屋の異常性を隠したと思われ、この不動産屋も変である。

 

5.謎の空間を通って浴室の床に出るのが変

 1階と2階の平面図を重ねると、1階の台所の謎の空間は、2階の子供部屋の棚から2階の浴室に重なる。栗原は「棚を動かせて下に穴があったら、下の空間に降りて2階の浴室に移動できる」と推理する。映画中で、浴室の床板を開けて子供が出てくる場面が映る。でも浴室の床板を開けたら、水が下の空間に流れ込んで、水浸しになるのでは?それに床板は密閉されていないようなので、普段から浴室を使うと、水が隙間から下の空間に漏れてくるのでは?

 

6.死体を2階浴室→1階謎の空間→2階子供部屋→1階車庫と移動させるのは大変

 さらに栗原は「子供部屋のもう1つの棚の下には車庫がある。棚の下に穴があったら、車庫に降りられる」と推理する。その構造にしたのは「子供が姿を見られずに子供部屋から浴室に移動して、客を殺害する。客の死体は切断して、2階浴室→1階謎の空間→2階子供部屋→1階車庫」と運ぶと推理する。

 家に侵入した雨宮が子供部屋の棚を動かすと、確かに下に続く穴と梯子があった。でも梯子は普通、両手を使って上り下りする。死体を持って梯子を3回も上り下りするのは非常に大変である。2階浴室から階段を使って車庫に持って行った方が、ずっと楽である。

 

7.子供部屋の穴が車庫の車の真上になるのは変

 栗原は、子供部屋のもう1つの棚を動かすと穴があり、1階の車庫にこっそり死体を移動できると言う。映画版の1階と2階の間取り図を重ねたのが下の図である。棚の角は1階の車庫の右から約3分の1、上からも約3分の1の所にある。棚の角に穴があったら、真下は1階に駐車中の車の屋根の上になる。これでは死体を車庫に運べないのでは?

 

8.映画の間取り図を、小説・オモコロ版の間取りと変えたのは変

 「7」はどうも変だと思い、映画版の間取りをよく見たら、小説・オモコロ版の間取りと違うのに驚いた。下図が小説・オモコロ版の間取り図である。これなら棚の真下は車庫の物置になり、死体を下ろすことも可能だろう。

 パンフレットを見たら、映画に登場する家の外観に合わせて図面を書き直したそうだ。そのために矛盾が出て来たので、外観の家も原作の間取りに合わせて、セットかCGで作ればよかったのではないだろうか。

 

9.謎の空間が隠れ場所なのは変

 終盤になって、台所の謎の空間は、片淵本家の者が桃弥を連れ戻しにきた時の隠れ場所、シェルターの様なものだったと分かる。こっそり殺人をするための通路や、死体を運ぶ通路より、こっちの方が断然説得力がある。これなら、浴室の床に繋がっている必要はないので水漏れの心配をしなくて良いし、車の屋根に死体を落とす心配をしなくても良い。

 でも、その空間が隠れ場所なら、片淵家に知られてはいけないので、図面に出さないはずだ。殺人の通路だとしても、犯罪に関わる構造を図面に書かないはず。

 

10.埼玉と東京の家を新築・増築する時、建築業者に不審に思われないのは変

 埼玉の家も子供部屋に窓がない。この家を建てる建築業者に何と説明したの?さらに三角の部屋を増築する時も、子供部屋があるのにもう1つの子供部屋を作るのをどう説明したの?

 もちろん東京の家を新築する時も、建築業者に不審に思われなかったのだろうか。しかも2年で2回も家を新築するとは、資金はどうしたの?

 

11.雨宮が喜江に襲われたとき、栗原が幻覚剤を飲まされたと知るのは変

 雨宮は面を被った喜江に襲われ気を失う。雨宮を起こした栗原は「幻覚剤を飲んだのでは?」と言う。喜江はいつどうやって雨宮に幻覚剤を飲ませたのだろうか?それに栗原は、なぜ雨宮が幻覚を見たと思ったのだろう?

 

12.栗原が雨宮より先に柳岡を助けないのは変

 栗原は雨宮に「さっき怖い女の人(面を被った喜江)がいた。玄関先に柳岡も倒れていた」と教える。確かに玄関前に柳沢が白目をむいて倒れていた。普通は、雨宮の部屋に入る前に柳岡を助けるのでは?柳岡も幻覚剤で気を失ったのだろうか?

 

13.警察に届けないのは変

 雨宮と柳岡の2人も女(喜江)に襲われ、栗原が目撃しているのだったら、普通は警察に通報するのでは?

 

14.家に不法侵入するのは変

 雨宮と柚希は麗の家に不法侵入して、室内の様子を生配信する。もちろん不法侵入は犯罪である。庭からリビングに入ったが、そこの窓を壊して鍵を開けたと思われるが、器物損壊の罪も加わる。この家は売りに出されているので柳岡夫妻のように、不動産屋に行って鍵を借りればいいのでは?しかも、その不法侵入を生配信しているので、それを見た誰かが警察に通報したら、2人は逮捕されるはず。

 

15.綾乃が柚希に2つの家の住所を渡したのは変

 3か月前に柚希と再会した姉の綾乃は、分かれ際に4年前に住み始めた埼玉の家、その2年後に住み始めた東京の家の、2つの家の住所が書かれたメモを渡す。2つの家を調べると手がかりがあるという事だろうが、普通なら「今は本家にいる」とか「左手供養が危ない」を伝えるのでは?

 柚希は雨宮に「夫の手掛かりがつかめるかと、遠くない所で不審な物件を探したら、こんな物があった」と、埼玉の家の平面図を見せた。普通なら夫が失踪したら、近くの物件を探さないとは思うが、綾乃が住んでいた家を雨宮に調べてほしいので平面図を見せたと分かる。

 

16.近所の北川が柚希を知っていたのは変

 柚希が東京の家の住所を知ったのも3か月前で、その時は、綾乃一家は本家に連れ去られていた。つまり、柚希は東京の家で綾乃一家に会ってはいない。近所の北川が、綾乃一家と柚希が一緒に写った写真を持っていたが、どうやって撮ったのだろう?

 

17.柚希が父の精神異常に気付かないのは変

 柚希、雨宮、栗原が、柚希の母・喜江の家を訪問する。喜江は柚希に、父が中学生時代に亡くなったのは、交通事故ではなく、精神を病んで死んだと教える。その頃は家族一緒に暮らしていたが、柚希は父が精神を病んで行った事に気が付かなかったのだろうか?

 

18.喜江が面を隠さないのは変

 柚希、雨宮、栗原が喜江の家を訪問し、その後栗原が喜江野家に戻った時に、壁に面が飾ってあったのを見つける。喜江は雨宮を襲撃した証拠の面を、なぜ隠さなかったのだろう?

 

19.潮の面がみな同じ顔をしているのは変

 その恐い形相をした女の面は、後に高間潮の顔だと分かる。てっきり手彫りの面かと思ったら、桃弥も片淵本家がある村人全員も同じ面を被っていた。手彫りだったら顔が少しずつ違うはずだが、全部同じ。つまり、何十個もどこかに頼んで大量生産していたの?因習の面を外注するのは変だ。

 

20.他人の家に撮影しながら勝手に上がり込むのは変

 雨宮と柚希は片淵本家に行くが、誰もいないので、2人は勝手に上がり込む。柚希の母の実家とはいえ、勝手に上がっていいのだろうか。さらに雨宮は、他人の家の撮影許可を取っていないのに、勝手に撮影を始めて良いのだろうか?

 

21.綾乃・慶太夫妻が白々しい嘘を言うのは変

綾乃・慶太夫妻は柚希に「ずっと本家にいた、子供はいない」となぜ白々しい嘘を言うのだろう?その理由が分からない。

 

22.和室①と和室②の間に隠し部屋があるのは変

 和室②と和室②の間の襖が開かないのを不審に思わないのだろうか。平面図だと、和室①~④はすべて同じ大きさになっている。和室①と和室②の間に隠し部屋があったら、和室①と②の大きさが和室③と④より狭いと分かるはず。隠し部屋を作るとしたら、和室②の外側だろう。

 

23.雨宮の部屋に謎の空間があるのは変

 栗原は雨宮の自宅の間取り図を見ると、謎の空間を見つける。そこのカーテンを外すと、壁から蛆が這い出して、壁を引っ掻く音が聴こえる。

壁を引っ掻く音がしたが、空間の中に誰かがいるの?壁から蛆虫が出ていたが、中に腐った死体があるの?もし腐った死体があるなら、腐敗臭いはしないの?雨宮と栗原は、その空間から喜江が雨宮の部屋に侵入したのではと疑っているが、どこから入ったの?ひょっとしたら隠し扉から喜江が出て来たのを見て、柳岡が驚いて失神したの?でも、喜江はどうしてこの空間の存在を知ったの?そもそも、誰が何のためにその空間を作ったの?長年この部屋に住んでいた雨宮が気付かなかったのはなぜ?

 

24.「左手供養」を信じるのは変

 一番変なのは「左手供養」を信じて、明治時代から子供を10年も日の当たらない場所に閉じ込め、10歳から3年連続で人を殺させて左腕を切り落とす儀式を36年ごと続けていた事である。この因習は片淵本家の火事で無くなったと思ったら、喜江と綾乃がまだ信じていたと言うのが怖い。

 

 このように映画『変な家』は変な所が一杯である。誰か、この変な点の答えを教えてほしい。

(写真は「映画com」「公式X」「オモコロ」より)