『デューン 砂の惑星』リンチ監督・究極試写会版 ネタバレの感想 劇場版より良いが、まだ描写不足 | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

評価 3/5 ☆☆☆★★

 2021年公開のドゥニ・ヴィルヌーブ監督による『DUNE デューン 砂の惑星』に続き、2024年3月15日に『同 PART2』が公開されるので、非常に期待している。

 実は40年前の1984年にデイヴィッド・リンチ監督により『デューン 砂の惑星』が映画化されている。ただし、ラフカット版で4時間以上もあったそうだが、映画会社の都合で約半分の2時間17分に短縮して公開された。フランク・ハーバートによる原作は文庫本で3冊(旧訳版は4冊)の長編なので、約2時間の映画にまとめるのは無理がある。映画公開当時に鑑賞したが、話に深まりがなく、特に後半はナレーションとモノローグの説明が多く、話が急展開して分かりにくく、非常にがっかりした記憶がある。

 ところが上映時間が3時間9分の『「Lynch's DUNE The ultimate workprint」リンチ版「デューン 砂の惑星」究極試写版』がネットで配信されていた。映画の序文を紹介すると「このバージョンはデイヴィッド・リンチ監督が本来作りたかった物語の復元を目指したものだ。劇場公開版(1984年)やテレビ放映長尺版(1988年)に加え、未公開シーンなどをふんだんに使い、誰も見た事のないデューン/砂の惑星の「本来の姿」を浮き彫りにした。」とある。そこで、リンチ監督が本来描きたかった『デューン 砂の惑星』とはどのような物だったのか知るべく『究極試写会版』を鑑賞した。

 冒頭は劇場版も同様で、皇帝シャダム四世のもとへ宇宙ギルドの航海士が来て、アトレイデス家とハルコネン男爵の不和の黒幕が皇帝なのかと、問う場面から始まる。4000年の間、香料メランジを摂取した航海士が、宇宙空間を折りたたんで、動かずにどこにでも旅すると言う、考えただけでもすごい能力を得たが、ミュータント化して巨大なクマムシの様なおぞましい姿になっているのが衝撃的であった。

 ギルドが登場する場面は原作にはなく、原作の続編『砂漠の救世主』から取ったと思われる。元ハルコネン家の領地で莫大な富を得られる香料の産地であるアラキス星を、アトレイデス家の領地に国替えしたのは、両家間に紛争を起すためだと言う皇帝の謀略を冒頭ではっきり表した点で良い。また、ベネ・ゲセリットの教母モアヒムが、なぜジェシカとポールに会いに行ったのか、説明しているのも良いかもしれない。一番良かったのは、原作でも本作でも語り部として重要な役目を担っているイルラン姫を、皇帝の宮殿の場面で登場させた事だと思う。

 宇宙船のデザインは、武骨で個性的である。アトレイデス家の宇宙船のデザインは鋭利な感じ。ハルコネン家の宇宙船はパンフレットで「ボイラーのような形をしている」と紹介されているのが面白い。皇帝の宇宙船は豪華。と描き分けされているのが面白い。ただし、オーニコプター(羽ばたき機)が不格好で、技術的な問題からか、羽ばたかなかったのが残念である。ミミズの様な虫の動きもリアルである。

 この『究極試写会版』では、原作の第3部全体をちゃんと撮影しているのには驚いた。劇場版になかった場面も見られ、こんな場面も撮影していたのかと感心した。

 ただ、中盤のアトレイデス軍とハルコネン軍との戦いの状況が分からず、全く盛り上がらない。さらに終盤のフレメンが声をエネルギーに変えるモジュールでハルコネン軍を攻撃する場面は、フレメンが何か叫んで撃つ真似をするだけで、子供の拳銃ごっこを見ているようでつまらない。フレメンたちが虫に乗って皇帝軍を攻撃するのも、迫力がない。「生命の水」の作用についても良く分からない。ポールがフェイドに決闘を申し込んだのも良く分からない。映像ではなく、モノローグで説明する場面もまだ多い。

 このように3時間に延長しても、話が深まらず、描写不足である。原作のように3部作にするか、ヴィルヌーブ監督版のように、せめて2部作にすべきだったと思う。これだけの長編を映像化した価値はあるが、分かりにくく面白くないので、評価は「3」である。