『ある閉ざされた雪の山荘で』ネタバレの感想 三重構造が凄い!ひょっとして四重構造? | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

評価 4/5 ☆☆☆☆★

 原作は読んでいない。題名から、雪で閉ざされた山荘が舞台のクローズド・サークル(閉鎖環境)での殺人事件の話かと思っていたら、海岸近くの貸別荘?季節は春?と不思議に思った。実は、貸別荘で演劇出演者の最終選考が行われ、その設定が「大雪で外部に連絡できない山荘」だった。携帯電話は使用禁止で、外部に出たら不合格になるため、ちゃんと閉鎖環境が成立するので感心した。

 選考方法は、貸別荘で「殺人事件」が起き、その犯人を解いた者が合格と言う変わった物である。リビングにアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を参考のため演出者が置いたらしい。これは孤島に10人が招待されるが、次々に殺され、最後に全員が死ぬと言う話。実は死んだと思われた1人が生きていて、殺人をしていたと言う内容。本作のトリックと違うので、結局、参考になったのかな?

 1日目夜、遊戯室で電子ピアノを弾いていた笠原温子が、着けていたヘッドホンのコードで絞殺された(という設定)。直前に言い争っていた中西が疑われる。

 2日目夜、停電中に自室から出てきた元村由梨江が花瓶で殴打され、絞殺される(と言う設定)。部屋の壁に付いていたのは血ノリだったが、花瓶には本物の血が付いていた。1人目の被害者も、2人目の被害者も死体が見つからず、芝居なのか本当の殺人なのかわからなくなる。

 笠原と元村の共通点は、3次選考で不合格になって退団しようとした麻倉雅美に会いに行き、引き留めた事。それが原因で麻倉は交通事故に遭い、下半身不随になった。ひょっとしたら麻倉の復讐で、次の被害者は2人と一緒に行った自分だと気づいた雨宮は、帰ろうとし、それを本多が引き留める。

 3日目夜、雨宮が絞殺された(と言う設定)と次の朝に発表される。これで終了なので誰も騒がない。

 すると、久我がこの事件は三重構造だと推理する。一番目の構造…東郷先生の最終選考(これ自体が麻倉と本多の創作)。二重構造…一番目の構造を隠れ蓑にして、本多が雅美のために3人を殺す。三重構造…本多は3人を殺す事が出来ず、3人に殺される芝居を頼む。

 この三重構造のトリックをよく考えついたものだと感心する。思い返すと、中西が警察に通報しようとしたのを止めたのは、本多だった。田所と久我の喧嘩を止めたのも本多と雨宮で、この時、本多は「落ち着け。先生の手の内だという事を忘れるな」、雨宮は「下手したら、公演が無くなる」と言っている。つまり、この最終選考会が中止になったら、雅美の復讐が完了しないので困るからだろう。帰ろうとする雨宮を本多が止めたのは、もちろん2人の芝居である。

 ただ、笠原の事件も元村の事件も死体がないので、本当の殺人事件とはどうも思えない。しかも、笠原の殺人ではヘッドホンのプラグが抜けていないので、本気で力を出していないことになる。それに気づいた本多が後でプラグを抜いたが、遊戯室の鏡の後ろの隠し部屋にいる麻倉が見ているのでは?また、久我が本多と一緒に泊まると言い、本多が元村を殺せないので、代わりに雨宮に頼む。雅美に顔を見せられないため、電灯を消したのはいい方法である。でも次の日、久我が本多と泊まったのでアリバイがあると、他の劇団員に言っていた。それをモニターで朝倉が見ているはずで、元村を殺したのは本多でないとバレバレである。本多が花瓶を食堂に置いたのも、麻倉がモニターで見ているのでは?

 ところで、井戸の蓋の金網に笠原のセーターと思われる赤い毛糸が付いていたが、なぜ付いたの?笠原が蓋を持ち上げたの?この伏線回収がなかったのが残念である。

 最後はいつの間にか、貸別荘内から舞台での芝居に変わっていた。芝居の題名は『ある閉ざされた雪の山荘で』で、この事件を元に久我が脚本を書き(元々の殺人のシナリオを描いたのは本多だが)、東郷の演出で劇にしたようだ。つまりこれは四重構造では?この構造に感心した。評価は「4」である。