『ある閉ざされた雪の山荘で』ネタバレの詳しいあらすじ | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

監督:飯塚健 2024年

主な登場人物(俳優)役柄

久我和幸(重岡大毅)オーディションに参加した唯一の部外者。

本多雄一(間宮祥太朗)華と実力を兼ね備えた劇団トップ俳優。

中西貴子(中条あやみ)公演直前に役を奪われてしまった女優。

田所義雄(岡山天音)恋愛感情をこじらせたクセのあり怪優。

笠原温子(堀田真由)役のためなら超勝気なワガママ女優。第1の被害者。

元村由梨江(西野七瀬)世間知らずなお嬢様女優。第2の被害者。

雨宮恭介(戸塚純貴)誰より優しい劇団リーダー。第3の被害者。

麻倉雅美(森川葵)圧倒的な演技力を持つ天才女優。ある事故で下半身不随に。

東郷陣平(声:大塚明夫)劇団「水許」の演出家。

 

 バスが海岸沿いの道を走り、中にはアイマスクをした6人が乗っていた。6人は劇団「水滸」の劇団員で海岸近くのバス停で降り、オーディション会場の貸別荘「Shiki Villal」に行く。そこには唯一「水滸」の劇団員でない久我和幸がいて、劇団「水滸」に憧れてオーディションを受けたと自己紹介する。

「水滸」の6人は、本多雄一、元村由梨江、中西貴子、笠原温子、雨宮京介、田所義雄。7人は、この貸別荘で4日間、次回作のメインキャストの最終選考を行うと、劇団「水滸」の演出家、東郷陣平から招待状が送られてきたのだ。

 7人が中に入ると、台所が広く、冷蔵庫には沢山の食材があった。各自の宿泊部屋を決める。元村由梨江と笠原温子は相部屋、他は1人ずつ部屋に分かれる。

 荷物を置いた7人は食堂に集まり、テーブルに座る。17時に東郷の声が聞こえ、天井に説明が投影される。「舞台設定。ここは山奥の山荘。大雪で外部との連絡手段は遮断され、外に出たら凍死する。これからある事件が起きる。どう振舞うか見させてもらう」。別荘のあちこちに監視カメラがあった。「事件を解決した者は、次回の主役のチャンスが平等に与えられる。オーディションは4日後の午前10時に終了する。外部との連絡は禁止。電話は一括して保管してもらう。指示に従わない者は不合格とする。ある閉ざされた雪の山荘へようこそ」

 全員がスマホをリビングの棚に置く。久我が、持参したビデオカメラを使って良いか皆に聞き、構わないだろうと言う事になる。

 夜、レストランでバイトしていた久我が肉をフランベし、料理する。社長令嬢の元村に「花がある」という。中西貴子と笠原温子は、東郷先生の事で意見が対立していた。久我の料理を皆が美味しいと言って食べる。笠原が「芝居とは何か」と質問すると、久我は「殺し合い」と答える。

 雨宮はリビングにアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』の文庫本を7冊見つけ、全員に配る。田所が「きっと東郷からのメッセージだ。1人ずつ殺されていく話だから」と言い、各自、好きな場所で本を読む。

 本田がタバコを吸いに外に出ると、久我が本を読んでいた。久我は本田に憧れていると話す。久我はオーディションの3次選考の時、麻倉雅美の演技がずば抜けて優れていたのに、最終選考にいないのを不思議がる。本多は「先生が求めたイメージと違ったのだろう」と答える。

 遊戯室で笠原がヘッドホンを掛けて電子ピアノを弾いていると、中西が来て夕食時の事を謝る。笠原が「私が東郷と寝ていると思っているのだろう」と言うと、中西は「私に決まった主役が、公演直前に温子に代わったのはそれでしょ」と突っかかる。その様子を廊下で久我が見ていた。

 田所は風呂に入る。久我は公演のパンフレットを読む。雨宮は「3月4日、最終選考」と日記を書く。本多は劇団員の集合写真を見る。元村はベッドで寝ている。中西は「あいつ!」と言って「ストリートファイター」の春麗(チュンリー)みたいな蹴りを空中に入れる。

 遊戯室に誰かが入って来て、ヘッドホンをして電子ピアノを弾いていた笠原の首をヘッドホンのコードで絞める。

 2日目。朝、庭で久我と雨宮がラジオ体操をしていると、本多が「外は記録的な大雪の設定だぞ」と指摘する。久我と雨宮は遭難の芝居をする。

 田所と中西が来て「誰か朝ごはん作って」と言う。元村が来て「温子がいない。ベッドも使った形跡がない」と言う。久我が中西に「昨夜、温子さんと揉めていたみたいだけど」と言う。

 みんなで探すと、遊戯室でヘッドホンのコードが電子ピアノに付いたまま落ちていた。東郷の音声が流れ「事件設定。温子がピアノの前で倒れていた。ヘッドホンのコードで絞殺されていた。犯人が誰か考察しろ」と言う。

 中西が「温子はどこに行った?」と聞くと、雨宮は「殺された役は退場する設定なのだろう」と言う。田所が「先生とグルだったのか?」と言うと、久我が「急に誰かに退場を告げられたのかも」と言う。田所は「中西が一番怪しい。温子と揉めていた」と言う。久我は「言い争っているのを見たのは、昨晩10時か11時」と証言する。本多は「この中に犯人はいないかも」と外部侵入者説を言う。

 午前9時。みんなは黙って朝食を食べる。

 遊戯室のヘッドホンコードが電子ピアノから抜けていた。

 久我が玄関に行って靴を取ると、温子の靴もあった。久我と中西がダイニングの勝手口から外に行くと、網で蓋をされた井戸があった。2人で蓋を取るが、中には何もなかった。

 久我と中西は遊戯室に行く。久我がピアノを弾く真似をし、中西がヘッドホンのコードで絞殺する真似をする。次に中西がピアノを弾く真似をし、久我がヘッドホンのコードで考察する真似をする。コードを二重にした方が、力が入ると分かるが、力を揉めてコードで首を絞めると、コードが電子ピアノから抜ける。久我が「遊戯室に来た時、コードが刺さっていました?抜けていました?」と聞くが、中西は覚えていない。温子の付け爪が落ちているのを見つけ、中西が預かる。

 夕食を6人で食べる。元村が「疲れた、この空気。仲間が嘘を言っているんじゃないかと疑うのを、いつまで続けます?」と席を立って部屋に戻る。雨宮が追いかける。

 中西が、田所が脚本のゴーストライター説を言い、田所は、東郷先生に脚本を観てもらっていただけだと話す。

 元村は部屋でワインを飲む。雨宮は日記を書く。久我はパンフレットを読む。

 久我は本多に、今夜一緒の部屋に泊まりたいと言う。本多が、久我にそっちの趣味があったのかと警戒すると、自分と本多が一緒の部屋に泊まる事によって、犯人の襲撃を防ぐ事と、事件が起きた時にアリバイを造るためだと言う。

さらに久我は元村に、自分と本多が一緒に泊ってアリバイ作りをした証人になってほしいと頼む。

 田所が久我に「元村由梨江にちょっかい出すな」と警告する。久我は「由梨江さんはどう見ても雨宮と付き合っている」と教える。それを知った田所が慌てる。

久我は本多と手を紐で繋いで就寝する。

 雨宮は元村の部屋に押し入って「雨宮と付き合っているのか?」と聞く。元村は「尊敬しているけど、付き合っていない」と答え、田所を追い出す。停電が起き、館内は真っ暗になる。ドアを誰かがノックするので、元村がまた田所だと思って開けると、何者かが花瓶で元村の頭を殴打する。

2日目。久我と本多が起きると、紐がハート形になっていた。久我と本多は、お互いに犯人でないと確証する。

 元村が起きてこないので、雨宮と久我、本田、中西が元村の部屋に入ると、いなかった。壁に血痕があって驚くが、血糊だった。

 食堂に行くと、玄関にあった花瓶が置かれ、血が付いていた。本郷の声が流れ、天井に文字が投影され「事件設定。元村由梨江は前頭部に鈍器による打撃痕があり、絞殺されたと推定される。誰が犯人か考えろ。競い合え」との説明がされる。

 田所は「由梨江がいなくなるとは、どうなっているんだ」と嘆く。中西が「田所がしつこいと、由梨江から相談された」と言う。田所は中西に「温子のエロ仕掛けに、由梨江の金。お前が犯人だろう」と言う。

 花瓶の血を触った田所が、本物の血だと分かって驚く。久我は「オーディションに便乗して、本当に殺したのか?」と疑問を持つ。みんなで元村の死体を探す事にし、久我と中西が本多と田所を井戸に連れて行く。網のふたを開けるが、井戸の中には何もなかった。ところが網には、笠原のセーターと思われる赤い毛糸が付いていた。

 中西は「付け爪を見つけた時から変だと思った。ピアノを弾いていた時に襲われて取れた」という。中西は自分のスマホを持ち出して「これは本当の殺人だ。警察に電話する」と言う。本多は「ルールを破れが、芝居が打てなくなる。本当の殺人だと言う証拠がない。本当の殺人なら、見ている先生が通報する」と引き留める。中西も納得する。

 久我はリビングにこっそりビデオカメラを仕掛けていた。ビデオカメラをテレビに繋いで再生すると、夜中にフードを被った誰かが元村の死体を引きずっているのが映っていたが、顔は見えない。久我は「誰かが先生の芝居に見せかけて、温子と由梨江を殺した。5人の中の誰かが」と言う。中西は「4人でしょ」と言う。本多は「殺人と分かってから警察を呼べばいい」と言い、雨宮は「自作自演の可能性がある」と言う。

 田所は久我に「お前だろう」と言い、久我は「恋愛感情で行動する誰かと違う」と言い合いになる。本多は「落ち着け。先生の手の内だという事を忘れるな」と止める。雨宮は「下手したら、公演が無くなる」と注意する。田所は「明日も誰かが死ぬぞ」と警告する。

 雨宮が荷物を持って玄関を出ようとする。本多が「逃げてどうする」と止めると、雨宮は「逃げるのではない。選考を降りる。分かるか、殺された2人は年明けに麻倉雅美と一緒にいた。おれもいた」と言う。久我が何のことか聞くと、中西が「3次選考に落ちた雅美は、実家に帰った。3人は雅美を励ましに行った。それが原因で雅美は交通事故に遭い、下半身不随になり、役者をできなくなった」と教える。本多は「役者なら信じたい。これが芝居だって」と言う。雨宮は帰るのを辞める。

 久我の部屋に中西貴子が来て「壁に血糊。ヘッドホンのプラグが抜かれていた。ここのカメラが東郷先生じゃなく、犯人が仕掛けていたら、犯人は何を見ていると思う?」と聞く。久我は「貴子さんは誰が犯人だと思いますか?」と聞く。中西は「私は嘘をついていない」と言い、久我も「俺でもない」と言う。中西は「今までダメ男ばかりに引っ掛かってきたけど、久我君を信じる」と言う。久我は「貴子の笑顔は、気が晴れる」と言うと、中西が「騙されていい。役者は嘘をつくのが仕事だから。見てくれるお客さんのために、最高の嘘をつく」と言う。中西は部屋に帰る。

 最終日。久我、中西、本多、田所が自分の荷物を持って食堂に集まり、テーブルに座る。午前10時になり東郷の声で「事件設定。雨宮がリビングで首を絞められて絞殺された。最終選考は終了。事件の全容を解いたものは、明日稽古場に来い」と伝える。

 本多が「先生の手の上か。明日まで解けるかな」と言って帰ろうとすると、田所が止める。久我がビデオカメラをテレビに繋いで再生すると、久我、田所、中西が同じ部屋に泊まっていた。久我は「3人のアリバイを作り直した。本多、あんたが犯人だ」と言い切る。

本多が観念し、全容を話し始める。「去年のオーディションの時、雅美は人生を変えると言っていた」3次選考の雅美の演技を久我も見ていた。ところが合格発表の掲示に雅美の番号がなく、雅美は怒って掲示を破る。本多「努力は報われない。世界が嫌になったって」

 麻倉雅美の実家に雨宮、笠原、元村が車で行き、雅美に戻るように説得する。雨宮は「本当に芝居が嫌なのか。逃げてないのか?」と説得する。雅美は元村に「何で由梨江に役があって、私にはないの?お父さんが劇団に大金を寄付したからでしょ」と言う。雅美は笠原にも「先生と寝たんでしょ。みんな知っている」と掴みかかる。それを止めようとした雨宮は、反動でテーブルの上に倒れ、熱いお茶が顔に掛かる。

 3人は車に戻る。雨宮は右目を冷やしていた。笠原は雅美に電話し、迫真の演技で「雨宮が事故を起こした。目が良く見えていなくて、中央分離帯に突っ込んだ」と嘘を言う。それを聞いた雅美は路上で呆然と立ち尽くす。雅美は自動車と衝突する。

 病院に雨宮、笠原、元村が病院に行くと、本多が雨宮に「何でお前がいて、こんなことに」と責める。笠原が「私が悪い」と謝る。

 麻倉が「27歳で終わった。芝居どころか、人生めちゃくちゃだ。生きている意味あるって言える?」と嘆く。本多が「俺が雅美の足になる。全部俺がやる」と言う。麻倉は「簡単に言わない方が良い。私が殺してと言っても、できないでしょ」と言う。

 ピアノを弾いていた笠原を本多が、ヘッドホンのコードで首を絞めて殺す。元村の額を花瓶で殴る。リビングにいた雨宮の首を本多が締めて殺し、死体を引きずる。

 本田は「3人とも俺が殺した」と自白する。田所が怒って「お前を殺す」と本多を襲う。久我が止め、盗聴器を見せ「目撃しているのでしょ。麻倉雅美さん。そこに行きます」と言って皆で遊戯室へ行く。

 遊戯室の一方の壁が鏡になっていた。久我が「雅美さん、出てきてください」と呼びかけると、本多が右端の鏡を引く。その向こうには隠し部屋があり、車いすに乗った麻倉がいた。鏡はマジックミラーで、隠し部屋には、館内の色々な場所に取り付けてあるカメラの、映像のモニターがあった。麻倉に久我が「初めまして」と挨拶すると、麻倉は「3次選考会にいたのを覚えている」と言う。

 久我が「3人殺しても誰も逃げ出さない設定は、ここでしかできない」と言う。しかし久我は「由梨江を本多は殺していない」と言う。中西は「由梨江生きているのか?」と驚く。久我は「共犯者というか、共演者がいたのです」と言うと、殺されたはずの笠原、元村、雨宮が出てくる。笠原、元村、雨宮が麻倉に「本当にごめんなさい」と謝る。

 久我が真相を話す。「この事件は3重構造になっている。東郷先生の最終選考の一番目の構造を隠れ蓑にして、本多が雅美のために3人を殺す2重構造になっている。本多は3人を殺す事が出来ず、殺す芝居をすることにした。これで3重構造。東郷の声は偽造した。本郷は3人に台本を渡し、殺人の芝居を頼んだ。雅美は隠し部屋で、モニターで見ていた。笠原の殺人の時、本気で首を絞めると、プラグが抜けると知り、本多が後でプラグを抜いた。その後もアクシデントがあった。久我が本多と一緒に泊まると言い、本多は元村を殺せない。そこでアドリブで雨宮に頼んだ。雅美に顔を見せられないため、電灯を消した。雨宮が花瓶で元村を襲う演技をした。本多が自分の血を花瓶に付けた。以上が3重構造の全てです」と話す。

 本多が「久我、お前凄い。何で嘘だって気づいた?」と聞く。中西が「役者は嘘をつくのが仕事」と言う。久我が「雅美の脚本を実行したら、雅美も罪に問われる。だったら本多は名役者だから、雅美を出し抜けると考えた」と話す。

 麻倉は「私のためについた嘘?捕まるのは覚悟だった」と言って隠し持っていたナイフで、自自分の喉を刺そうとする。それを本多が止め、怪我しながらナイフを取る。本多が「お前に生きろなんて言えない。それでも生きてくれ」と頼む。久我も「俺は前の劇団「堕天塾」が潰れて、もう役者を辞めようと思って、最後に「水滸」のオーディションを記念に受けようと思った。そこで見たんです」と話す。

 3次オーディションで麻倉が熱演する。「滑車と歯車の違い分かる?自分で回るか、転がされるか。自分の人生くらい、自分でこじ開ける」

 久我「だからあの時、もう一度頑張ろうと思った。俺からもお願いします。生きて下さい」と頼む。麻倉が泣く。中西も「雅美、もう一度、みんなで一緒に芝居やろう」。笠原も元村も雨宮も「お願い雅美」と頼む。田所が最悪と言えるうちは、最悪じゃない」と言うと、麻倉が「シェークスピアかよ」と言い返す。本多「一緒に生きよう。芝居は殺し合いじゃない。生かし合いだ」と言う。麻倉は「特殊な役しかできない。私に嘘つけるかな」と言う。

 いつの間にか舞台の演劇になっていて、車いすに乗った麻倉が「見てくれた人が驚いて、泣いたりできるような、最高の嘘をつけるかな」と言う。本多が「嘘っていう字は…」と言いかけるが、「僕にはそんな含蓄なない」と言い、観客が笑う。舞台に紙吹雪が舞い、元村が「雪だ」という。久我が「こんな時間に大雪にならなければいいが。次に会うのは夏か?」。本多が「気が早い」と言うと、麻倉が「でも、桜も好き」と言う。舞台が終わり、観客から拍手が起こる。

 役者たちが舞台袖にはける。久我が感動して泣く。本多が「カーテンコールで泣く役者は最低だぞ」とからかう。みんなが舞台に出て行き、久我も涙を拭いて舞台に出る。芝居のポスターは『ある閉ざされた雪の山荘で』だった。

 (エンドクレジット)

(写真は「映画com」より)