評価 4/5 ☆☆☆☆★
シリーズ第1作『ハンガー・ゲーム』(2012年)では第74回ハンガー・ゲームを描いていたが、本作はその64年前、第10回ハンガー・ゲームの話で、コリオレーナス・スノー大統領の若き日を描く前日壇と言うので、非常に興味があった。
さて、この第10回ハンガー・ゲームから、教育係の制度が取り入れられた。第1作では、かつての優勝者が教育係を務めたが、本作はアカデミーの成績優秀者が務める。でも成績が優秀でもハンガー・ゲームの経験がないと助言は難しいのでは?しかもアカデミーの生徒は地方の人間を馬鹿にしているので、関心が無いようである。実際、コリオレーナス以外は殆ど助言をしていない。
また、74回の大会は広い森の中で行われたが、10回大会は競技場の建物の中で行われると言う違いもある。ところが、全員で下見に行った時、競技場が爆破されるのには驚いた。
コリオレーナスは破壊された後の競技場の下見をして、競技が始まったら武器を取らずにすぐに隠れろと助言したが、これは第74回でのヘイミッチの助言と同じで、コリオレーナスは頭が良いと分かる。
競技が始まると、否が応にも戦わなくていけないのが怖い。凄惨な殺し合いが始まり、それを見て嘔吐する生徒がいるほどである。まだ幼い子供が殺されるのが可哀そうである。この様子を見て、非人道的なのでハンガー・ゲームを中止しようと訴える者はいないのだろうか?
ルーシーは同郷のジェサップを助けて隠れる。ルーシーが彼に水を飲ませようとしたり、熱がないか手を触れようとすると、ジェサップは彼女が何かしたのではないかと、疑心暗鬼で襲って来る。お互いを信頼できなくなる、嫌な競技である。
この10回大会でも、教育係が水や食料を競技者にドローンで与える事ができる。ただ、この規則をコリオレーナスはもっぱら、ジェサップやコーラル一派を攻撃するために使うとは、なかなか頭が良い。
ルーシーもコリオレーナスから貰った殺鼠剤を水に入れるとは頭が良い。コーラルを殺すのには失敗するが、天井の上から殺鼠剤を撒いてコーラルの仲間を殺すのに成功する。ただし、これを不正行為だとされ、コリオレーナスが罰せられるのは可哀そう。教育係の差し入れとみなせばいいのに。
また、コリオレーナスは、知っている臭いを攻撃しない毒蛇に、ハンカチに浸みこんだルーシーの臭いを覚え込ませて、ルーシーを助けるのは見事である。これも不正行為とみなされたが、コリオレーナス&ルーシー組の作戦勝ちだと思う。
ルーシーが優勝するまでスリルの連続で、ここまでで映画1本を見たような充実感があり、これで終わりかと思った。でも、このままだとコリオレーナスは頭が良くて優しい人間で、後の冷酷な大統領と全く違うのでは?と思った。やはり続きがあり、この後の「第3部:治安維持部隊」が凄惨な話であった。
コリオレーナスは親友のセジャナスを助けようとして、ルーシーを巻き込んだ殺人事件を起こしてしまう。ルーシーは、コリオレーナスが隠れてもう1人殺したと推測し(セジャナスを密告して処刑させた事)を推測し、信頼できなくなった彼を毒蛇で殺そうとする。コリオレーナスはルーシーが自分を密告するのではと疑い、彼女を銃で撃つ。セジャナスに関わらなければ、2人は幸せに暮らしたかもしれないのにと思った。でも恋人に振られたくらいで、冷酷な性格になるのかな?
ルーシーは消息不明だそうだが、そうなったのだろう?本作から第1作まで64年もあるので、その間を描いた映画をぜひ作ってほしい。評価は「4」である。
邦題は『ハンガー・ゲーム0』だが、原題は『The Hunger Games: The Ballad of Songbirds and Snakes』で、副題は「鳴き鳥と蛇のバラード」の意味。
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