『レジェンド&バタフライ』ネタバレの感想 描写が濃姫は新鮮だが信長は従来通り | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

 評価 3/5 ☆☆☆★★

 若年期の信長は奇天烈な行動が多く、周囲から「大うつけ」と呼ばれていたそうだ。それは美濃の国にも知れ渡っていたのか、濃姫が結婚初夜に信長を「大うつけ」と呼んでいるのが面白い。濃姫については殆ど分かっておらず、その名前すら「美濃から来た姫」を略したのだそうだ。帰蝶または胡蝶とも呼ばれていたとか。マムシと呼ばれた(後の小説での名称だそうだが)斎藤道三の娘である濃姫は、剣術や狩りに長けても不思議ではない。結婚初夜に横柄な態度を取る信長を、濃姫が組み伏せる場面もあり得ると思って楽しい。その時の信長の悲鳴を、部屋の外で聞いていた小姓たちが、信長の快感の声かと思って興奮するのが可笑しい。また濃姫は狩りに行っても、信長より多くの獲物を仕留め、信長の命まで救ってしまう。ダメな夫に優秀な妻の組み合わせが面白い。

 今川義元が尾張の国へ侵攻した時、清洲城の信長は優柔不断で作戦を決められない。これは『信長公記』に「織田方は軍議したが織田信長は雑談するばかり」とある史実だそうだ。映画では、今川軍を奇襲する「桶狭間の戦い」を提案したのは濃姫だ、としたのにも感心した。

映画では足利義昭を擁して上洛するのを勧めたのも、濃姫としている。濃姫と言う軍師がいたからこそ、戦略家としての信長がいたという説は実に面白い。

 桶狭間の提案の後、濃姫は家来を鼓舞する仕方まで、信長に手本を見せている。出陣で信長が濃姫から教わった通りに、部下を鼓舞する場面が見たかった。さらに、かの有名な桶狭間の戦いの場面を見たかったが、ないのが残念である。

 また、火縄銃を初めて本格的に使った合戦として有名な、長篠設楽原の戦いも見たかったが、これすらなかったのが非常に残念である。比叡山延暦寺の焼き討ちや、最後の本能寺の乱はあるが、どちらも小規模な戦いだけである。戦国時代の映画なのに、合戦場面がないのはどういう事か?製作費20億円だそうだが、豪華俳優陣の出演料で製作費を使い切ったのだろうか?

 信長と濃姫がお忍びで街に出かけ、店で三足の蛙の香炉を買う。これは本能寺の大寶殿宝物館にもあるそうで、信長と濃姫の愛情のエピソードとして良いと思う。しかし2人が貧民窟で虐殺行為をするのは不必要だと思った。さらに小屋に隠れた2人が、人を殺した後でラブシーンを行うのは理解できない。

 信長が「魔王」に急変するのもよく分からない。濃姫が死産しても、ただの冷たい人間にしか見えない。戦の非情さが彼の性格を変えたと言う表現があれば、理解できたかもしれない。

本能寺で追い詰められた信長が「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」と『敦盛(あつもり)』を舞うが、これも後の創作と言われている。新しい信長像を描くと言っていたが、従来の信長像と変わっていないのはどういう事か?

 信長が抜け穴で本能寺を脱出したとする説もあるが、その後濃姫と南蛮船に乗り、異国へ渡る場面は明らかに幻想で、映画を見ながら早く終われと願った。上映時間が2時間49分と長いので、この場面をカットするか短縮すれば、もっとテンポが良くなったと思う。

 信長が亡くなった頃、濃姫も亡くなる、ロマンチックな場面で終わる。前に述べたように、濃姫の生涯は不明で、いつどのように亡くなったかも不明なので、絶対に無いとは言えないが、都合良すぎる。

 題名の『THE LEGEND&BUTTERFLY』の「LEGEND(伝説)」は信長で、「BUTTERFLY(蝶)』は帰蝶とも呼ばれた濃姫だろう。でも、戦国時代なのになぜ英語題?『伝説と蝶』ではダメ?

 濃姫の描き方は新鮮であるが、信長は従来とほぼ変わらず「信長の人生を今までとは全く違う視点で描く」の宣伝文句になっていない。合戦場面もなく単調で冗長なので、評価は「3」である。