フライドチキンと海のおと。 -41ページ目

千里のバカ達 その2

まあそんなような風土・環境だから、学力の差、
なんていうのはみんな五十歩百歩である。
気の合う仲間は大抵バカだった。



四年生の学級文集で『私のすべて』という自己啓発文を書くヤツ。
同じく文集で『汚れっちまった俺』という半自伝的随筆を書くヤツ。
伝書バトを肩に乗せて登校するヤツ。
下剤と下痢止めを同時に大量に飲んで、どんな大便が出るか実験するヤツ。
パラシュートふうにビニール傘を開いて団地の三階から飛び降り、足の骨を折るヤツ。
猫の交尾を三十分間じっと見てるヤツ。
望遠鏡を分解して殺人レーザー光線の開発にいそしむヤツ。
竹やぶに捨てられたエロ本を七時間かけて捜索するヤツ。
蟻の巣にロウソクを垂らして出口を固めているヤツ。
毛虫を百匹集めて、百匹すべて蛾に孵化させたすごいヤツもいた。
ともかく、何というかバカの集まりだった。



そんな中、隣の学区だったので友達というワケではなかったが、
『ハヤテのコジロー』と呼ばれていた伝説の少年がいた。
はたして本名が『コジロー』だったのかどうかは定かではないが、
とにかく『ハヤテ』ではあった。
つまり、ロケットのように足が速いのだ。


『ドロップタイプ』の自転車(正式名称なのかわからない)、
といえばお分かりだろうか。
十二段変速くらいのギヤを持っていて、
競輪選手がレースで使用するような、
ハンドルがくにゃりと手前に湾曲した、あれである。
なだらかな下り坂などでスピードが乗れば時速40キロくらい出る。
コジローは、あれに追いつく。
仲間内でも、ドロップタイプを持っているヤツは何人かいた。
ある時、そいつに乗って、僕達は隣町までコジローをからかいに行くことにした。
<つづく>

千里のバカ達 その1

僕は、大阪は吹田市の千里というところで少年時代を過ごした。
その名もズバリ『千里ニュータウン』。
ストレートど真ん中のネーミングを持つ、
同じような四階建ての団地がこれでもかとひしめきあう『ど・ニュータウン』である。


ベビーブームとやらの最中に生まれたようで、
小学校のクラスメートはほとんど『団地組』である。
同じ棟に、四・五人の友達が住んでいることもザラだった。
親友のMが四階に住んでおり、
その真下の三階に大嫌いなTが住んでいる、という感じ。
とにかく、数10メートル間隔で誰がしか友達が住んでいた。
高級住宅地に住むごく少数派の『一戸建て組』は、
クラスで少し一目置かれる存在ですらあった。



僕達団地組の結束力は強い。
遊び場である空き地の奪い合いなどで、
隣の学区との小競り合いが勃発した時、
団地組は加速装置のスイッチをオンにしたサイボーグ009、
もしくは002もかくや、というスピードで集結する。
小競り合いの情報をどこからゲットするのかは不明だが、
とにかく集結までものの10分とかからない。
かくして、


「何やコラぁ!」
「誰じゃオラぁ!」
「何イチビっとんじゃコラぁ!」
「いつでもやったんどオラぁ!」


という口喧嘩がはじまる。
下町ではないが、決してガラがいいわけでもない。
それぞれ手には木製のバットやデッキブラシといった武器を持っている。
中には100円ライターと殺虫スプレーを組み合わせて作った手製火炎放射器や、
火炎ビンなどをかまえているツワモノもいる。
そして何を勘違いしたのか、
ホッチキスを大上段にかまえてカチャカチャ鳴らしながら菅原文太ふうの渋みをきかせているヤツや、
トマトケチャップをぴゅっ! ぴゅっ! と間欠的に放出して威嚇しているヤツもいる。
目に入ると痛いから、という理由である。何だかよくわからない。


まあそういう小競り合いが実戦に展開することは滅多になく、
大抵はにらみ合いに終わる。
下校時刻を告げる『コンドルは飛んでゆく』の哀切なメロディーが、
どこかの学校から流れてくるくらいのタイミングで、


「うぅ」
「らあぁ」


とか言って睨み合いながらじり、じり、とお互いの団地エリアに後退していく。

そしてカラスと一緒に家に帰り、
夕飯のカレーライスを三杯おかわりして宿題もせず、
『8時だョ! 全員集合』を見て腹筋が切れるほど笑い、
兄貴と共用の三畳間に置かれた二段ベッドで眠りにつくのである。
<つづく>


狂える人たちの本

『他人事』
/平山夢明著



短編集である。
僕は狂人が出てくるホラーの短編集が大好きだ。
この本もコンテンツを見れば、
「他人事」「倅解体」「仔猫と天然ガス」「定年忌」「虎の肉球は消音器」
といった感じで、狂気の匂いがぷんぷんする。
で、やっぱりどの話もとことんサディスティックで痛くて狂っていた。
なかでも表題作の「他人事」が僕は好きだ。



夫婦と娘が乗った車が事故を起こし、
あわや崖下に転落しそうなところを辛くも免れた。
しかし、乗車は口はきけるものの、ひしゃげた車内で大怪我をしている。
と、崖の上に男がいる。顔は見えない。
運転手の主人がこの男に何とかコンタクトを取り、
誰か助けを呼んでもらうよう頼む。
しかし、この男とはなぜか話が一向に噛みあわない。
絶妙に狂っているのだ。
そうこうしているうちに娘が瀕死状態に。
主人は焦る。
しかし男はまるで面白がっているかのように、
不毛なやり取りから先へ進ませない。
このやり取りがなかなか、神経に障るような恐怖なのだ。
魚の小骨がのどに刺さって取れないような。
ちょっと過大評価かもしれないけれど、
昔の筒井康隆を読んでいるようだった。






そういえば昔の筒井康隆は、本当にすごい。
もちろん今もあの人の天才っぷりはほとんど変態的なのだけれど、
三十年くらい前の中短編集がもう、
信じられないくらい面白いのだ。
特に好きなのは『宇宙衛生博覧会』という掌編だ。



「問題外科」
グロテスクなブラックジョークを交わしあいながら、
ナースを解体する医師二人。
全身麻酔がかけられているのに意識はあるので、
このナースは自分の体がむちゃくちゃにされていくのを理解しているのだ。
ラストシーンは胸が悪くなる。



「関節話法」
間接話法、ではない。関節、なのだ。
文字通りである。
指をぽきぽき鳴らし、その組み合わせパターンによって会話するという、
変な異星人と外交しているのだ。
地球人代表が仕方なくその話法を何とかマスターするものの、
貿易間でトラブルが起こり、その代表はつたない関節話法で異星人との折衝を試みる。
間接話法、という言葉から思いついた話に違いない。
とはいうものの、ラスト5ページくらいは笑いすぎて、
電車の中では読めなかった。



「最悪の接触(ワースト・コンタクト)」
これもSFである。
関節話法と同じように、
マグ・マグ人という異星人と地球とが外交をはじめる。
同じヒューマノイド型宇宙人だ。
見た目は地球人とそっくりである。
しかも日本語をしゃべってくれる。
それなのに、だ。徹底的に会話が噛みあわない。
もうどれくらい噛みあわないかなど、
僕なんかには表現することができない。
いやもう、すごい。すごすぎる。
全っっっ然、噛みあわないのだ。
ああ、もう、もどかしいなあ。読んでもらうしかないなあ。
本当に面白いんだよ。本当に狂ってる。で、本当に怖い。
この話を思い出してみたら、やっぱり平山夢明とは比べ物にならない。
筒井康隆は化け物だ。



あ、なんか筒井のレビューになっちゃった。


でもこの本、すごく面白いよ。
あまり評価されていないのが信じられない。
この頃の筒井が一番好きだ。
活字でこんなにも恐怖を伝えられること、
活字も笑いの「間」を表現することは可能だということ、
どんなバカなワンアイデアでも、ひねれば小説になるんだということ。
僕は全部筒井に教えてもらった。
例えば僕のブログに興味を持ってくれた読者の方々なら、
この頃の筒井は絶対にハマると思う。



六階

後輩のRさんが自宅マンションに帰ると、
必ずエレベーターが六階でとまっているという。




彼女の部屋は六階にある。




そしてRさん以外、六階に住人はいない。

ちなみに肩こりの話

十代の頃、思い出深い女性に頂いたペンダント。
シルバーでできていて、
その子と別れることになってもずっとぶら下げていた(未練でなくて)。
そのペンダントをつけなくなってからも、
自分で買ったり人に貰ったりして常にペンダントは身につけていた。
それがきっかけでシルバーを身につけることが癖になって、
お守りのようにペンダントと指輪はいつも身から離さなかった。



ほら、西洋では怪物を退ける聖なる金属でもあるしね。

とある文献によると、
モンスター達の開祖と呼べる存在はずばり“バンパイア”である、と。
イエス・キリストを裏切ったユダが発狂してしまい、怪物化したとか、何とか。
ユダが裏で手引きを行う時、代償として受け取ったのが、つまり銀貨。
ヨーロッパでは狼男もバンパイアが生んだものとされているから、
バンパイアが人間(つまりユダ)の時に抱いた、
「イエス・キリストを裏切ったという罪の意識」
から、あまねく怪物達は銀でできたものを恐れるのだ。



ま、もちろん信憑性もなんもない話ですわな。





いや、ちなみに肩こりの話なんですけど。

そんなわけで長年ずっしりと重いシルバーのペンダントをしてきたが、
もう本当に首と肩のコリがとてもひどくなっているのだ。
で、少しでも原因となりうるものを排除していこうということになり、
ついにシルバーのペンダントとサヨナラすることにした。
実に二十数年ぶりに、わが首はフリーとなった。


なんともスカスカ寂しい感じがする。



だから代わりに“ピップ・マグネループ”を巻くことにした。
あの、友近ねえさんがCMやってるやつね。
効果のほどは、人によって様々なようでまだよくわからない。
でもアラ不思議、巻くだけで何とも言えない安心感がフツフツと。


俺も歳をとったな……ピップ・マグネループだって。ふふ。


つまりもうなんだかちっともロックじゃないが、
とにかく今はにっくき肩こりの野郎を撲滅させたいのだ。

ヨガもやってみようっと。

あ、でもピップ・マグネループにね、
ペンダントトップだけはつけてるんっすよ。ホピ族の。



名残り? みたいな?


マストっしょ? 的な?



さぶっ。