フライドチキンと海のおと。 -25ページ目

釣りの話と下町の話 後編

そうそう。
会社の近くにある商店街。


会社はとんでもなく下町チックな、
というよりはもうほぼ完全なる下町にあるのだが、
目と鼻の先に迷路のような商店街がある。


メインストリートがあり、
路地があり、その路地にまた路地がある。
そしてそのまた路地がメインストリートにつながっている。
そんな商店街だ。


そのどこかで、古い魚屋を見た。
まったくもってやる気のなさそうな魚屋なのだが、
そこが少し変なのだ。
あまり魚は置いてないのだが、
なぜかナマコがすごく充実している。
いろんな種類のナマコが水槽を泳いでいるのだ。
店主は全然客に興味を持っていない。


なんだここ、と思い、興味を持ったのだが、
どの道にその魚屋があったのか忘れてしまった。
今のところ、その店は発見できていない。


まったく下町はアメージングスクウェアだ。

釣りの話と下町の話 前編

以前は海の近くに住んでいたので、
近所のスーパーや市場に行けば新鮮な魚が売っていた。
魚は絶対新鮮な方が美味しいので、
僕は嬉々としてそういう魚を買っていた。


そして釣りにも精出していた。
といっても簡単なサビキ釣りなのだが、
それでも釣れる時は十五センチ弱の小アジが五十匹くらい釣れた。


南蛮漬けにすると美味い。
もちろん焼いても絶品だ。
夕餉のおかずとして美味しく頂戴した。


引っ越してからは全然釣りに行けていないのでつまらない。
一度釣り船をチャーターして鰤などを釣ってみたい。
びちびち、などと暴れ狂っている青々とした三十センチくらいのサバなどがたくさん釣れているのを見ると、
もうただそれだけで胃袋がきゅううと鳴る。
塩サバ。刺身。煮付け。薄く切ってしゃぶしゃぶ。


たまらん。


ま、結局は食べたいだけなのだけれど。
シンプルに魚が好きなのであって、
スポーツフィッシングというのにはあまり興味がないんだなー。




そういえば……
会社の近くにある商店街の話をしようと思っていたのだけれど。
なんとなく続いてみよう。
<つづく>

烏(からす) その3

苦労して塀を乗り越えると、
敷地内には背の高い草がたくさん生えていた。
身長が150センチくらいしかないGさんは、
塀を降りてしまうともう先が見えない。


「……ちょっと! みんなどこ?」


Gは大声を出した。
返事がない。


「もう。冗談やめてよ! ねえ」


もう一度大声を出そうと思った時、返事が聞こえた。


「げえげえげえ。げげげげげえ」


ぞっとした。誰かが嗤っているのかと思った。
違った。


「烏の声だったんです」


それは人間の声にそっくりだった。


「ぎょっぎょっぎょっ」
「うげえげえ。げげ」
「げえへへへへ」


汚い鳴き声があちこちから聞こえた。
さっきまでは静かだったのに。


「もう怖くて泣きそうになりました。車に戻ろうかな、と思った時」


仲間の声が聞こえた。
さらに奥、建物のある方から。


「まーだそんなとこにいんのかよー」
「こっちこっち。早く来ーい」
「すっごいよ中。こっち見てみなよ」


Gさんはほっとし、草を掻き分けて先へ進んだ。
がしっ、という感じで後ろから肩を掴まれた。
心臓が止まりそうになった。
振り返るとメンバーのW君だった。


「さっきから呼んでんのに。そっち行っちゃダメだって」


W君は血相を変えていた。
後ろには他のメンバーが全員、心配そうな顔で見ている。


「え……? だってこっちから声が」


いつの間にか、Gさんは建物のすぐ前にいた。
なぜか気付かなかった。
そして、その足元は。


「床がありませんでした」


地下室と一階を隔てる床が没落していた。
地下は真っ暗で、何メートルあるかもわからない。
あと三、四歩先へ進んでいたら。
ふと周りを見渡した。




烏は一羽もいなかった。

烏(からす) その2

オカルトじみたことはそれほどキライではない。
美しい廃墟の写真にもGさんは興味があった。


「ドライバーがかっこいい男の子だったってのも大きいですね」


男二人、Gさんを入れて女二人。
ちょっとコンパのようなノリも嬉しくて、
Gさんは参加することにした。





廃墟は九州にある。
古いホテルだ。
建物は思ったより古びていない。
天気も良かった。気温もちょうどすごしやすいくらい。
それなのに。


「寒気が治まりませんでした。風邪ひいてるのかなってくらい」


もう一つ気になることがあった。


「烏が異様に多かったんです。食べ物なんか全然ないはずなのに」


廃墟の低い塀の上に、ずらっと烏がとまっている。
鳴き声はまったくたてない。
そこがまた不気味だった。



「そーれーでーはっ!」


ドライバーのイケメンW君が、
車から降りるなり、走って塀に飛びついた。
烏がばっ、と飛び立った。


「ねえ、ちょっと。行くのやめない?」


Gさんの注意にメンバーは変な顔をした。


「なに、G。ここまで来て」
「そうだよ。ノリだよノリ。陽気にしてたら怖いモンも出ないって」
「いや、でもさ……」


メンバーはGさんの言葉を無視し、塀をよじ登った。
ここに一人で残されるのは嫌だった。
しょうがなく、Gさんもついてゆくことにした。
<つづく>

烏(からす) その1

げあ、げあ、という烏(からす)の鳴き声を聞くと、
Gさんは思い出す。


「烏の鳴き方には気をつけろ、っていうのがおばあちゃんの口癖でした」


都会でも、夜の烏の声は恐ろしい。
ああいう鳴き方をする時は、
烏同士で何か連絡を取り合っているらしい。


「そういう話は最近聞いたんですけど、昔からおばあちゃんに怖い話を聞いてたから。
 いやな鳴き方をする烏がいると、道を変えたりしてました」






Gさんは僕のブログをよく読んでくれている。
怪異に魅了されているわけではないが、
わりと不思議なものを昔から見たり、
体験したりということがあるらしい。
僕のブログの記事の中にも、
自身の体験と符合するものがいくつかあるという。



そんなGさんの体験の一つ。
今から十年くらい前、彼女が大学生の頃。
名は伏せるが、彼女いわくそこはチャラい大学だった。
そしてさらにチャラいサークルに入っていた。
流されるように入ったサークルだったので、
周りを責めるようなことはしなかった。
でもチャラい周りのメンバーのことは好きになれなかった。



ある日のこと。
都市伝説が流行っていたことに後押しされたのか、
Gさんはメンバーに廃墟探訪に誘われた。
<つづく>