「皆婚→難婚→結婚不要」社会に至る深刻なワケ 結婚しない若者の増加は中高年世代に責任も
何らかの国や地域の合計特殊出生率の数字の変動には、女性の平均就学年数の寄与分と、エネルギー供給の増減の寄与分がある。
女性の平均就学年数が長めの国でも合計特殊出生率は米国等、日本より高い国がある。エネルギー供給の増減も合計特殊出生率に影響している。しかしその二つの部分が合計特殊出生率の数字に寄与しているという、ごく当然のことが周知されていない。
以前もリンクしたが平均気温が高く、エネルギー効率の良い国である。フィリピン、エジプト、メキシコの合計特殊出生率は、COVID-19流行によってエネルギー供給が減少するとともに下がってしまった。
何度もしつこいほどに書いたように、日本は2005年頃から最終エネルギー消費が減少し続け、2024年時点に至っても回復の兆候がない。エネルギーにも課税されている消費税の影響で日本のエネルギー需要が減少してしまっている。エネルギーという季節変動の大きい商品に消費税を課すというのは需要を大幅に抑制させてしまうのである。
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2024年時点で首都圏在住の20代の人々は1970年や1980年時点で20代だった人々よりも首都圏内で結婚子育ての限界効用が得られるような住居を確保できる確率は下がっているはず。つまり首都圏内の宅地面積の空きが2024年現在、乏しくなっている。
首都圏内で結婚子育てが可能な住宅の供給は土地が有限である以上、限りがあるなどということは、誰もが知っているはず。しかし日本には事実を観察できない人々が案外いる。
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の人口は千葉県と埼玉県のみならわずかに減少に入りつつあるが、1都3県の世帯数は増加しつつある。
高齢者世帯のというものは夫の死後、妻が数年間、長く生きるのが普通であるし、結婚が難しい20代が増えているということは、20代と女性高齢者の単身世帯が増加しているということでもある。
つまり首都圏内の住環境はデフレが継続し一極集中が継続している限り、20代にとって狭隘な環境が変化しないということでもある。
だから日本全国の消費税減税、廃止や、公務員、医療従事者、介護職の増員や人件費を2倍にするといった施策を実行し首都圏一極集中をある程度解消しなければならない。
日本全国の空き家が800万戸以上あるのだから生産性が上がれば日本全国の空き家の部分の新築や増改築が進行し首都圏の住環境の狭隘さはいくらか緩和される。
2024年現在、首都圏内の住居の供給は1970年代や1980年代と比較するとスタグフレーションを起こしているようなものである。首都圏内で一人前の所得を得ている20代の人々であっても床面積が結婚、子育てに向いた住宅の供給そのものが1970年代や1980年代よりも乏しくなっている。しかし、おそらく60代以上の人々が以上のような観察をすることは稀だろう。
昔、1952年生まれの作家、中島らものエッセイを読んでいたら、東京に通勤するための時間が往復で2時間になり3時間になる、というようなことが書いてあった。住宅が有限という、ごく当たり前の感覚が中島らもにあったし、東京の住宅事情の劣悪さは90年代に頻繁に指摘されてはいた。しかし、いつの間にか見て見ぬ振りのようなことになったのだろうか。
もう一つ気づいたこと。航空会社のパイロットや乗務員の賃金についてはカットすればいいなどという意見はまず表面化しないし、意味がない。よほどの高給を長い間要求し会社が支払続けて、これ以上無理だからカットしたいなどということがない限り、パイロットや乗務員の賃金をカットするのは望ましくない。旅客機が確実に目的地までフライトすることが最重要事項なのであって、賃金はビジネスを成り立たせるための一つの要素でしかない。しかし、これがトラックやタクシーの運転手となると、賃金カットで何とかしようとする会社も出るのだろうから蔑視めいたものを感じる。