ルポ 生活保護―貧困をなくす新たな取り組み (中公新書)/本田 良一
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『ルポ生活保護』 本田良一
生活保護や貧困の問題を扱っている本には特有の雰囲気がある。この本にもそういう雰囲気があって読み進めるのがつらい。どういう雰囲気か説明してほしいといわれても、困るのですが、読めばよくわかると思う。
この本は特に読む必要はないでしょうね。読まなくてもいい本です。
阿部彩の『子どもの貧困』を紹介している箇所もある。日本は社会負担の再分配後にかえって貧困率が上昇してしまう、貧困者に大きい負荷をかけてしまう社会である。
再分配後に貧困率が上昇するというのは誰が考えても不合理である。いつ解消されるだろうか。
母子家庭の置かれている問題も説明があるが、重要な指摘をしていない。
それは日本の結婚制度そのものの不備である。日本では結婚を解消した後の保障がないに等しい。だから母子家庭が貧困に陥るのである。元夫から母子家庭へ養育費の支払いを強制的にさせる仕組みを設けるだけで、母子家庭の貧困は、ある程度は解消されるだろう。しかしその仕組みが実質は機能しない。
社会学者の山田昌弘は離婚保険という商品があればいい。という意見をどこかで書いていたが、結婚制度そのものが保険の役割を果たすように、改変するほうが効率的だろう。
それから、未婚でも子どもを作ったら、子どもの権利だけは守る仕組みも必要だろう。
そういう実効的な制度があれば、それだけで日本の貧困な大部分は解消に向かうと思うが。どうだろうか。
給付付税額控除は突き詰めればベーシックインカムになる。というような意見も載っている。
昨今は貧困問題を男性の非正規従業員の問題というような捉え方をしている雰囲気がメディアなどでは強いが、女性の貧困を解消するのが専決だろう。
いままでは、個人単位ではなく世帯単位で貧困が捉えられてきた。世帯単位で捉えると貧困はない、というような間違った結論が出かねないので、貧困を計測するさいには個人単位の計測であるべきだ。
夫が高収入でも妻が無職であるならば、その妻は潜在的に貧困状態にいるという、観察は必要だろう。
何かのきっかけで離婚したり、夫と死別したら、元妻は貧困に陥る可能性が強いのである。そういった部分をごまかさない、貧困の計測であるべきである。
給付付税額控除が導入されると、時間給で勤めるの女性の実収入が上昇するだろう。
しかし、それを気に食わないという人々が多いのだろうな、妻が経済的に自立を果たしたら離婚されかねない。という恐れを持つ男性がいまだに大多数なのだと思う。
給付付税額控除は制度を実行するのに特に困難があるとは思わないが、旧来の男性優位的世界観を捨て去れない人間が日本の内部に多いので、実行にいたらないのだろう。
日本は過去から今に至るまで首尾一貫して女性の地位は男性と比較して低いままである。この重要な格差問題を無視して、昔は一億層中流時代があった、と考えるのは完全な間違いである。
女性差別があると社会の中で様々な問題が生じるのですが、誰も気に留めないのだろうか。
高齢で弱っている母親が息子、娘に殺されるという事件が起きたらと考えてみる。その母親自身に経済力がなく、高齢者向けの施設に入れない、としたらその理由は何かと考えなければいけない。なぜその高齢の母親に経済力がないのかというと、その母親の若い時代に強固な女性差別があり、正規の職に就くことも昇進も困難だったからである。と考えなければいけないだろう。
今の世代の女性を差別すると、その女性たちが高齢者になったときに悲惨な死を迎える可能性が出る。
その可能性がありながら、なぜ女性差別を放置するのか、私はどうやっても理解できない。
個人が社会に生きるためには、権利こそが重要なのであり、それがなければ自立できる職に就くのは難しいだろう。自立はまず経済的自立から。などというセリフは誰が言い出したのか知らないが、まったく無効だろう。
個人が社会、都市で生きるのに必要な権利のルールを整備しないで、貧困者にただ仕事をさせればいい、と考えても貧困問題が解消されることはないだろう。
どうすればいいのか考えることができないのはつらいが、社会の内部にある、さまざまな貧困問題から目を背けてはいけないし、個々人の行使できる権利がどういう形をしているのかについても、意識しなければいけないだろう。それをしないで貧困の解消はない。
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