今回は最近までよく知らなかった車の売り方についての話です。
業界のことをよく知らない一消費者の私が、公表されている情報のみに基づいて、勝手に推測しながら書いている感想文のようなものなので、内容については怪しい部分が多々あると思います。
ですので、話半分程度で読んでいただくようお願いいたします。
先月、私は車を買い替えたんですが、検討した車の中にトヨタのクラウンスポーツがありました。
クラウンスポーツについては、妻が全く興味を示さなかったので候補から外したんですが、仮に妻が「欲しい」と言ったとしても、ディーラーに行ったら不愉快な思いをして、最終的に買うことはなかったと思っています。
と言うのは、私のような「キャッシュ購入の新規顧客」は、彼らにとって最劣後の「最も売りたくない客」らしいからです。
クラウンスポーツがランクルほど人気があるのかは知りませんが、こうした記事を見ると、トヨタが人気車種をどのように売っているのか分かります。
以下、記事の一部を貼り付けておきます。
まとめると、
- 残価設定ローン等を販売条件とする販社が多い
- 販社が抽選を行う場合はローン縛り、リース縛りがセット
- 販社や営業マンと親密度が高いほど購入できる可能性が高まる
- そのような場合、ローン縛りなどは発生せずキャッシュで買えることが多い
というもので、私からすると「お前なんかに売らねぇ」と言わているようなもので、それに対しては「そうまでして買いたくねえよ」ということになってしまいます。
まぁ、互いにニーズが合致しているからいいんですけど(笑)。
「既顧客の囲い込み」を「新規顧客の開拓」より優先すること自体、他の業種を含めて良くあることですし,そのことについてどうこう言うつもりはないのですが、本来顧客が自分の意志で自由に決めるべき「買い方」についてまで、「ローン縛り」のような形で強制してくるのは、顧客にしてみれば「大きなお世話」以外の何物でもないですよね。
優良顧客に有利な条件を与えるのではなく、新規顧客に不利な条件を押し付けることによって差を設けるやり口が個人的に気に入らんのです。
そんなやり口を彼らは「転売対策の一環(社会課題への対応策)」としているようなんですが、私はそれを素直に信じることに抵抗があります。
というのは、本気で転売対策をするのであれば、供給を増やすべきなのに、彼らは日本だけ販売台数を減らしてるからです。
【トヨタの決算資料】
2024/3期の世界販売は8,882千台から9,443千台に増加(前期比107%)なのに、日本だけ販売台数が減少しています(前期比96.3%)。
ただ、この資料の連結販売台数(グループのダイハツや日野自動車を含むはず)が、トヨタ・レクサスの販売台数(24/3期は10,309千台)を下回る理由をブログ主は分かっておりません…。
ついでに言うと、今期(2025/3期)の世界販売は前期と概ね同水準(100.6%)であるのに対し、日本の販売はさらに減少する計画(前期比93.8%)となっているうえ、減少幅は一層大きくなっています。
実際、今年の1月から4月までのメーカー別の新車登録台数(出典:日本自動車販売連合会)を見ると、ホンダ、日産、スバル、スズキは前年同月比でプラスになっていますが、トヨタはマイナスになっています。
これってどういうことなんですかね。
トヨタって他社と比較して販売不振なんでしたっけ?
ここで素朴な疑問として、販売台数を減らしたら利益も減ってしまうじゃないか、と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはなく、2024/3期の日本の営業利益は1兆9,025億円から3兆4,862億円に爆増(1兆5,837億円増加)しています。
増益の理由について、トヨタの決算単信を見ると、主な要因は「営業面の努力」と「為替変動」とのことです。
こうなってくると気になるのが「営業面の努力って何?」っていうことですよね。
トヨタほどの企業になると、様々な営業努力をしていると思うのですが、車の売り方については、「ローン縛り(残価設定ローン等)の獲得」を推進し、グループのクレジット会社や販売会社の利益拡大を図るっていうのがあるんじゃないかと私は想像しています。
【トヨタのグループ会社(有価証券報告書より)】
で、ここから残価設定ローン(以下「残クレ」)の話なんですが、残クレについて皆さんははご存じですか?
トヨタのホームページの商品説明は以下のとおりです。
ここで私が欲しいと思ったクラウンスポーツを題材にして、現金購入、銀行ローン購入、ディーラーローン購入、残クレを比較し、どれだけ残クレが売る側にとって美味しい商売なのかを検証していきます。
前提は下記のように置きました。
【前提】
- 対象車種:クラウンスポーツ
- 必要額:603万円(車両価格590万円、諸費用13万円)
- ローン期間:3年
- 銀行ローン金利:2.4%(横浜銀行の店頭金利)
- ディーラー金利:4.3%(トヨタの金利が分からなかったため、ホンダの残価設定ローンの金利を採用)
- 残クレの残価:324.5万円(車両価格590万円の55%と想定)
それぞれの根拠は下記のとおり。
1.現金購入の場合
買主は車両代金を一括で支払い、トヨタは同額の売上を計上するだけです(ブログ主の推測)。
- トヨタの売上:603万円
- 買主の支払額:603万円
2.銀行ローン購入の場合
買主は銀行からお金を借りて、車両代金をトヨタへ、金利を銀行に支払います。
トヨタの売上は車両代金だけです(ブログ主の推測)。
買主の月々の支払額は17.4万円、総支払額は626万円、うち利息は23万円となります(ブログ主の試算)。
- トヨタの売上:603万円
- 買主の支払額:626万円(うち利息23万円)
3.ディーラーローンの場合
ディーラーローンは銀行ローンより金利は高いのですが、買主の手続きが楽で審査も通りやすいようです。
この場合、トヨタの売上は車両代金と利息になります(ブログ主の推測)。
買主の月々の支払額は17.8万円、総支払額は644万円、うち利息は41万円となります(ブログ主の試算)。
- トヨタの売上:641万円(うち利息41万円)
- 買主の支払額:641万円(うち利息41万円)
3.残クレの場合
これはあくまでも私の理解で正確ではないかもしれませんが、
- 残クレは販社のものを買主が一定期間使わせてもらい、その使用料を支払う取引で、
- 使用料は持ち主(販社)の契約期間中の保有コスト(減価償却と資金調達コスト)に基づき決まってくる
ので、契約形態はローンであっても実態はリースと一緒なんじゃないでしょうか。
そしてこのやり方の美味しいところは、
- 通常のローンより利息をたくさん取れる(通常ローンのように元本が減らないので)
- 契約期間終了時に必ず顧客と商談ができる(現金購入の場合は、顧客がいつ誰自分の車を売ろうと自由であり、販社はコントロールできない)
といったことだと思われます。
買主の月々の支払額は9.4万円と少ないものの、総支払額は339万円、うち利息は他の取引より多い61万円となります(ブログ主の試算)。
- トヨタの売上:契約期間中の使用料収入339万円(うち利息61万円)、車両の販売収入325万円+@(契約終了時に顧客から返却された車両を、残価に利益を上乗せした価格で第三者に売却)⇒合計664万円+@
- 買主の支払額:339万円(うち利息61万円)
なお、買主の支払額についてですが、現金一括とローンの場合は、車を売って資金回収できるのに対し、残クレは車両を返したら何も残らないので、結果的に残クレの実質負担が一番大きくなります。
また、残クレの利息は銀行ローンの3倍近くになります。
以上を踏まえ、残クレは使いたくない、というのが私の結論です(何を重視するかは人それぞれですので、自分の結論が「正しい」とは思っておりません)。
因みにですが、トヨタの残クレ車両販売時の売上(上記の325万円+@)についてですが、ここ数年で中古車の成約単価が急上昇しているため、大幅に増加しているものと思われます。
【中古車価格推移(出典:USS)】
そしてこの単価の急上昇は、コロナと半導体不足により自動車の生産が停滞し、中古車市場もタイトになったため、と言われているようです。
そこで、自動車販売連合会の新車販売台数の統計と重ねてみたのですが、中古車の成約単価と新車の販売台数は逆相関の関係にあると言ってよいと思います(ブログ主の試算では相関係数は▲0.6でした)。
そう考えると、今期トヨタが国内販売台数を絞る計画を立てている理由の一つはこれ(中古車価格の維持向上)かもしれないという気もするんですが、そんな単純な話でないような気もしますし、実際のところは全く分かりません。
本来、残クレのような顧客に対して将来の価格をコミットする取引って、将来のマーケット次第で損失を被る可能性があるリスクの高い行為のはずなんですが、今のマーケット環境が急に変わるような気はしないので、
- トヨタ車の代わりにトヨタ株を買おうかな
と思いつつある今日この頃です。
最後は当ブログのメインテーマであるワンコとのお出かけについて。
今日は代々木公園でボール遊びをしました。
ワンコたちは楽しんでくれたと思います。