・記事「OUTPUT→INPUTの正統性~間違いの効果

・記事「OUTPUT>INPUT~試験対策の効果

・記事『「分散学習」のススメ

に続き、『脳が認める勉強法』(原題『How We Learn』Benedict Carey[著]・花塚恵[訳]:ダイヤモンド社)

の内容を、司法試験系をはじめとする試験対策に適用・応用していく記事の第4弾です。

今回は特に、可処分時間が少なく、細切れ時間を活用せざるを得ない受験生にとって朗報だと思います。

(以下、ページ番号引用は上記書籍から。)

 

結論としては、

環境の何かを変えること自体が学習の強化につながり、自分を取り巻く環境に頼らなくても知っていることを思いだしやすくなる。」(P95

具体的には、

音楽を聴きながら勉強をするほうが効果的」(P71

静寂という環境は、BGMが流れる環境に比べて復元の材料が乏しい」(P74

勉強の場所を変えたほうが思いだしやすくなる」(P90

等々、

静寂の中で机の前にじっと座り“集中して”勉強する

といった“真面目”な勉強方法より、上記のような“不真面目”な勉強の方が、記憶の想起に効果的であることが書かれている。

 

上記の結論を導いた実験として、様々なものが紹介されているが、ここでは、最も分かりやすいと思われ、かつ誰もが実行可能な「勉強の場所を変えたほうが思いだしやすくなる」(P90)という結論を導いた実験を紹介した部分を引用したい。

スティーヴン・スミスとロバート・ビョーク、そしてアーサー・グレンバーグは…学生を集めて4文字からなる40の単語(『ball』や『fork』など)を見せた。グループAの学生には10分の学習時間を数時間あけて2回与え、その半数は地下にある雑然とした小さな部屋で、残りの半数は窓から庭が見えるきれいな会議室で覚えさせた。グループBの学生にも同じ学習時間と同じ回数を与えたが、1回目は窓のない小さな地下の部屋、2回目は庭の見える窓がある部屋だった。」(P90

3時間後…学生たちに10分の制限時間を与え、覚えた単語をできるだけたくさん思いだして書く課題を与えた。このテストは、ごく普通の教室という中立の部屋で実施された。…この第3の部屋に入ったことのある被験者はひとりもおらず、彼らが勉強に使ったほかの2部屋とはまったく似ていない。」(P91

その結果、

テストの点数には著しい差が現れた。2回とも同じ部屋で勉強したグループは、40単語のうち平均16個思いだした。勉強する部屋が変わった学生は、平均24個思いだした。単純に勉強する場所を変えただけで、思いだす数が40パーセント以上増えた。論文の言葉を借りるなら、この実験によって、『被験者を取り巻く環境の変化に伴い思いだす力に大きな改善が見られることが明らかになった』のだ。」(P91

ただ、

その理由は誰にもわからない。一つの可能性としては、最初の部屋で勉強したときに単語に付随する情報と、それとは若干異なる別の部屋で覚えたときに付随する情報が、脳内で別々に記憶されていることが考えられる。この2種類の情報には重なる部分があるが、情報は多いほうがいい。あるいは、2種類の部屋で覚えることで、勉強した単語、勉強中に目に入った事実、勉強中に思ったことを思いだす手がかりの数が2倍になるのかもしれない。」(P91~92

 

以上からすると、

・移動時間等の隙間時間を使った勉強

・図書館、喫茶店、自習室というように日によって場所を変えての勉強

・BGMや騒音の中での勉強

等、「環境の何かを変える」(P95)勉強方法は、上記したような“真面目”な勉強方法よりも効果的なのだ。

 

私は“受験生時代、寝っころがって過去問集を解いて、眠くなったらその場で寝て、起きたら傍らに落ちてる過去問集を手に取って解いて、眠くなったらその場で寝て…というグ~タラ生活が基本でした”が、場所を変えていない点ではあまり効果的ではなかったのか…日によって起きる時間が微妙に違うので、日差し等の微妙な環境の変化はあったけど。

でも、音楽は結構かけていたなあ…ただ、ついつい音楽の世界に入り込んでしまうこともあって、これはさすがに逆効果だったと思う。上記書籍で紹介されていた実験で使われたのも、「ジャズ奏者ミルト・ジャクソンの『ピープル・メーク・ザ・ワールド・ゴー・ラウンド』」と、「モーツァルトのピアノ協奏曲第24番ハ短調」という「BGM」だし…(P72)。あまり好きすぎる音楽を流すのは、景気づけには良いと思うんだけど、「環境」の変化の域を超えてしまうんだろうね。