記事「OUTPUT→INPUTの正統性~間違いの効果」「OUTPUT>INPUT~試験対策の効果」に続き、『脳が認める勉強法』(原題『How We Learn』Benedict Carey[著]・花塚恵[訳]:ダイヤモンド社)
![]() |
脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!
1,944円
Amazon |
の内容を、司法試験系をはじめとする試験対策に適用・応用していく記事の第3弾です。
(以下、ページ番号と引用は上記書籍から。)
結論としては、
「一度に勉強するより」「勉強時間を分散する」方が記憶の維持に効果的(P96)
で、具体的には、
1.「試験までの期間」が1週間→「2回目の学習までの間隔」は1~2日
2.「試験までの期間」が2か月→「2回目の学習までの間隔」は1週間
3.「試験までの期間」が3か月→「2回目の学習までの間隔」は2週間
4.「試験までの期間」が6か月→「2回目の学習までの間隔」は3週間
5.「試験までの期間」が1年→「2回目の学習までの間隔」は1か月
がベストとされている(P116)。
これを導いた実験は、以下のようなものだった。
「被験者として幅広い年齢層から1354人を選んだ。…彼らは、32のあまり有名でない事実を勉強することになった。たとえば、『スパイスの効いたメキシコ料理がもっとも食べられているヨーロッパの国はどこか?(正解は)ノルウェー』…というものだ。」
「被験者にはこれらを学習する機会が2回与えられた。グループAの被験者は、2回の学習時間のあいだに10分の休憩しか許されなかった。グループBの被験者は、1日あけて2回目の学習に取り組んだ。グループCは1か月あけて2回目にのぞんだ。このように1回目と2回目の学習間隔をグループによって変え、最長間隔は6カ月となった。また、覚えたことの最終試験を受けるタイミングもグループによって変えた。こうして、パターンは全部で26種類となった。」
「研究チームは26種類すべての結果を比較し、試験の日程に応じた最適な間隔を算出した。『簡単に言うと、勉強時間を分散する最適な間隔は、いつまでそれを覚えていたいかで決まる』とワイズハートとパシュラーの研究チームはまとめた。」
(P115)
具体的には、上記1~5のとおりである。
なお、「学習時間をさらに1回増やしたいなら、試験の前日にするとよい。」(P116)
ただ、「学習時間の分散が学習に…大きく影響する理由は、いまだ議論の的となっている」(P110)ようで、「忘却によって情報を検索する機会が増え、記憶のより深い定着を促す」(P111)とか、「次に学習するまでの期間が長くなれば、忘れる単語は増えるが、自分の弱点に気づいて修正できる」(P112)とか、様々な説明が紹介されている。
さて、現在、司法H29論文式試験(5/17・18・20)まで3か月強ある。
そうすると、最も近いのは上記3なので、「2回目の学習までの間隔」は2週間がベストということになる。
これに従うと、例えば、
2/6~19:書く必要を感じる論文過去問の答案を毎日コツコツ書く
2/20~3/5:2週間前に書いた論文過去問の答案を再び書く
といった対策が、その論文過去問についての記憶(答案のフレーズだけでなく、問題を解くプロセス等も、少なくとも無意識的には“手続記憶”の対象となる)を維持するのにベストということになる。
しかし、上記1~5を一貫して使うのは、結構難しい。
まず、上記が終わった3/6の時点では、司法H29論文式試験(5/17・18・20)まで2か月強になっており、最も近いのは上記2なので、「2回目の学習までの間隔」は1週間がベストということになる。さらに時が過ぎ、「試験までの期間」が1週間になると、上記1のとおり、「2回目の学習までの間隔」は1~2日がベストということになる。
このように、加速度的にくり返しのスピードをアップしていかなければならないが、果たして多くの司法試験系の受験生にとって、これは現実的に可能だろうか?
少なくとも、事前に綿密な計画を立てて、それが実現できるかシミュレーションをしておかなければ、瓦解して逆効果になりかねないだろう。
また、論文式試験のように、過去問を「完璧」にまではしなくても合格できる試験ならば、この方法論が通用する可能性が高いとは思う。
しかし、短答式試験となると、過去問を「完璧」にすることが“大前提”だ。これを、上記のように2~3回のくり返しだけで実現するのは、事実上不可能である。
というわけで、「分散学習」法は、司法試験系においては、
「一度に勉強するより」「勉強時間を分散する」方が記憶の維持に効果的(P96)
という抽象論の限度で使うのが無難だろう。
要するに、深い勉強を1回するより、浅い勉強をくり返す方が、記憶の維持に効果的だということだ(いつも言ってることね)。
私なら、上記1~5の具体策は、自分で実験して効果を確認した上でないと使わないかなあ…というか、私は計画を立てても必ず破ってしまうので、元から無理だ(^▽^;)
ちなみに、『4A基礎講座』の4A論文解法パターン講義で、あるパターンを使って解く問題を間隔を空けて配置するとき、「自分が受験生だったら、どのくらいの期間を空けると効果的だろう…?」等、様々なことを考えに考えて配置したのだが、その期間が割と上記1~5に一致していたのがうれしかった。
まあ、あるパターンを様々な角度から集中的に使うのが、そのパターンの把握→習得→確立にベストだと考えたものもあるけど。
あと、上記書籍では、「分散学習」≒反復学習についての重要な方法論がもう1つ書かれているのだが、そこまで書くとさらに長くなるので、また後日~(^O^)/